三菱自動車で起きた燃費不正問題について第三者委員会の調査報告書を読み解くと、不正以外に手段がない状況に追い込まれた担当者の姿が見えてきます。なぜリコール隠し事件の結果、コンプライアンス強化に取り組んだ同社で不正問題が起きたのか、そこには組織とリーダーの課題が見えてきます。これは同社以外でも起こりうる問題です。
排気ガス、燃費などの不正が2000年以降相次ぎました。
そこでコンプライアンスと内部統制について、「企業不祥事と組織の問題 その1 ~コンプライアンスと内部統制~」で取り上げました。
また技術者は、技術の専門家として高い倫理観が求められます。この工学倫理について「企業不祥事と組織の問題 その2~工学倫理と問題を起こす組織~」で取り上げました。
これまでに起きた不祥事の原因は、コンプライアンスや倫理観の欠如だけではないのです。そこで日野自動車で起きた排気ガス、燃費不正問題について、一般的な報道では語られなかった原因を「企業不祥事と組織の問題 その3 ~日野自動車の排気ガス、燃費不正~」で取り上げました。
今回は三菱自動車で起きた燃費不正について、第三者委員会の調査報告書から掘り下げて考えます。
燃費不正の発覚
三菱自動車は、2013年6月から生産する「eKワゴン」「eKスペース」と日産にOEM供給する「デイズ」「デイズルークス」の4車種の国土交通省に提出した燃費試験データに虚偽があったことを2016年4月発表しました。
対象台数は三菱自動車が販売した15.7万台、日産が販売した46.8万台、合計62.5万台に上りました。
きっかけは2015年秋に提携先の日産が燃費を測定したことでした。
そこで、燃費の実測値が国土交通省の届出値と大きく乖離したことで不正が判明しました。
これに対し三菱自動車は顧客に補償金10万円を支払うこととし、650億円の特別損失を計上しました。消費者庁は三菱自動車と日産に対し、景品表示法の優良誤認違反として4億8,507万円の課徴金納付命令を発出しました。
この問題を理解するためには、国交省の型式指定における燃費測定について理解する必要があります。
燃費測定の技術的背景
開発した車が国交省の型式指定を受けるには、形式指定審査に必要な燃費や排ガスなどのデータが必要です。その際に燃費や排出ガスが国の基準を下回れば、減税や補助金を受けることができます。
従って試験データの改ざんは重大な法令違反になります。
この燃費試験データは、大型車の場合は実車での測定が困難なため、エンジン単体での試験でした。
乗用車は実際の走行データ
一方乗用車の場合は試験室のシャシーダイナモメーター上で試験自動車を実際に走行させます。
その際、実際の走行条件と同じになるようにシャシーダイナモメーターに一定の負荷を与えます。この負荷の大きさは国が定めた方法で実車を走行させて測定します。燃費試験データを国に提出する際は、この走行試験データも国に提出します。
<h4>走行抵抗の測定方法</h4>
この走行抵抗は、ころがり抵抗と空気抵抗の2種類があります。これは以下の式で計算します。

この走行抵抗の測定方法には、惰行法と高速惰行法がありました。
惰行法
指定速度+5km/hで変速機をニュートラルにして、指定速度-5km/hに達するまでの時間を測定します。
指定速度は20, 30, 40, 50, 60, 70, 80, 90km/hの8段階あります。
測定は往路・復路各3回ずつ行い、その平均値を求めます。測定値の最大と最小の比が1.1を超えた場合は、再度測定しなければいけません。
高速惰行法
速度を150km/hまで上げて5秒間保持した後、変速機をニュートラルにして、1秒ごとの速度、又は速度が10km/h低下した時の時間を記録します。
測定は速度が10km/h以下になるまで行い、往路、復路各3回ずつ行います。
従って高速惰行法の方が測定は短時間にできます。
国の指定は惰行法
1990年当時の運輸省は「型式指定審査の負荷の測定方法は惰行法によること」と決定しました。
一方、アメリカは高速惰行法の1種コーストダウン法です。
惰行法は速度が8種類もあるため測定には時間がかかります。実走試験はその日の気温や風の影響も受けます。
測定した結果、測定値の最大と最小の比が1.1を超えれば、測定はやり直しです。
他社も違反していた
今回、三菱自動車の燃費不正問題を受けて、国交省は各メーカーに調査を指示しました。
その結果、スズキも惰行法でなく、実験室の風洞で空気抵抗を測定し、走行抵抗を算出していたと報告しました。原因は、スズキの相良テストコースは横風が強く、安定した測定が困難だったためでした。
逆算プログラム
三菱自動車は1990年に形式指定審査に惰行法が採用されたとき、惰行法で測定することも検討しました。
しかし測定に時間がかかるため、測定は高速惰行法で行い、高速惰行法の測定結果から惰行法での走行抵抗を計算する逆算プログラムを作成しました。そしてその結果を惰行法で測定した結果として国に提出していました。
2000年代 三菱自動車の苦境
三菱自動車は1990年代には「パジェロ」などRVがヒットし、1995年には国内3位のシェア(11%)を獲得しました。
その後も拡大路線を進みましたが、競合他社との競争が激化したことと、RVブームの終焉により国内シェアは低下しました。
2000年にはシェアは6.9%に低下し、行き過ぎた設備投資による巨額の負債が経営を圧迫しました。その結果、2000年にダイムラー・クライスラーと提携しました。
しかしその後も業績は低迷し、2003年に2,154億円、2004年には4,747億円の損失を計上しました。
さらに子会社の三菱ふそうで2000年と2004年にリコール隠し事件が起きました。これをきっかけに2004年にはダイムラー・クライスラーとの提携が解消されました。
危機に瀕した同社は三菱グループから約6,000億円の支援を受け、さらにコスト削減を徹底した結果、2006年には黒字化を実現しました。
開発人員の減少と日産との提携
この徹底したコスト削減は、同社の開発力に影響しました。
開発本部の人員は2004年に2,753人だったものが、2006年には2,383人と370人も減少しました。不正問題が起きた性能実験部は2004年から2年間で30人が退職しました。
研究開発費は2004年の687億円から2009年には224億円まで減少しました。
こうしたコスト削減が低燃費技術の遅れにつながったという第三者委員会は指摘しています。
日産は、これまで販売する軽自動車をスズキや三菱自動車からOEMで供給を受けていました。
しかし日産独自の商品を充実するために三菱自動車と提携し、日産と三菱自動車の合弁会社 株式会社NMKVを設立し、2014年型eKワゴンから共同で開発することとしました。
2014年型eKワゴンでは、実際の開発は三菱自動車が行い、NMKVは商品企画及びプロジェクトマネジメントを行いました。
不正行為
不正行為に至った背景に、度重なる目標変更がありました。
2014年型eKワゴンの度重なる目標変更
日産との初めて共同開発した2014年型eKワゴンには、燃費訴求車、ノンターボ(2WD、4WD)、ターボ(2WD、4WD)の5車型がありました。
この開発時期と燃費目標、実験結果の経緯は以下のようになっています。
開発時期と燃費目標、実験結果の経緯
- 2011年2月 燃費目標26.4km/l
F(商品構想)ゲート通過
(ゲート : 開発の各段階でゲートを設け品質達成状況を審査することで品質問題をなくす仕組み。2000年のリコール問題以降設置。そのプロセスはMMDS(Mitsubishis Motor Development System)に規定 - 2011年5月 27km/lに引き上げ
E(目標固定)ゲート通過 - 2011年10月 28.0km/lに引き上げ
- 2012年2月 商品開発会議の資料には28.2km/lとあり
- 2012年5月 開発会議 C(生産着工ゲート)通過 実測値 27.2km/
性能実験部は更なる改善で達成見込みと楽観的な報告
開発費削減のため、評価用の試作車を水島製作所に変更、完成が4か月遅れる
実走試験が冬になり測定が不利になるため、実走試験をタイで行うことに - 2012年7月 競合の次期ワゴンRが28.8km/lの情報を入手
同等の燃費を指示され、更なる改善で達成見込みと報告 - 2012年12月 競合のダイハツ ムーブが29.0km/lとの報告、開発責任者は29.2km/lを指示
- 2013年1月 開発期限。開発会議で性能実験部は29.2km/lは厳しいと報告
開発責任者から依頼した29.2km/lはできないのかと問われる。 - 性能実験部は「まだ検討は続ける。タイで走行抵抗が下がれば可能性がある」と回答、タイでの試験結果を確認することを前提に開発完了が承認
- 2012年1月タイで実走 試験を行った結果、転がり抵抗は0.0059。そこでデータの中で良いものだけを恣意的に選別し計算することで0.0052を算出し29.2km/lを達成
4WD車は性能実験部が要求したのにも関わらずコスト削減のため2WD車しか用意されなかったため、実走試験は行わず、過去の経験から4WD車の走行抵抗は、2WD車の+0.0020と考え、4WD車の走行抵抗を0.0072として算出
このように時系列で追っていくと、すでに設計の終わった製品に対し、燃費目標を再三引き上げたことがわかります。
では、燃費はどのようにすれば改善できるのでしょうか。
燃費改善の方法
燃費が達成できない場合、燃費を改善する手法として以下の方法が調査報告書に書かれています。
エンジンの改良
- 次世代MIVEC
- エンジンフリクション低減
- アイドルストップ
- アイドル低速化
- オイル低粘度化
- EGR増加
補器ロス低減
- 電動P/S(EPS)化
- 多段発電制御
- 高効率オルタネータ
- 電磁クラッチウォーターポンプ
駆動系の改良
- ギヤ比適正化
- ロックアップ領域拡大
- ロックアップ開始低油温化
- シフトパターン最適化
- アイドルニュートラル制御
- オイルポンプロス低減
- オイル低粘度化
- SST化
車両の軽量化 → 慣性重量低減、ギヤ比低減、走行抵抗低減
- 各部品の軽量化
- 軽量材料の採用拡大
- ボデー構造の合理化
- ボデーの小型化
転がり抵抗の低減 → 走行抵抗低減
- 低転動抵抗タイヤ
- ブレーキ引きずり低減
空気抵抗低減 → 走行抵抗低減
- 形状最適化
- 内部流低減
- 床下整流
- 車高ダウン
- ボデーの小型化
これらの要素を見ると、設計段階で決まってしまう要素も多く、試作車が完成した段階では改善できる要素は限られています。
完成した試作車の燃費は性能実験部の「適合」にゆだねられました。
適合について
性能実験部は、試作車のエンジン及びトランスミッションの制御プログラムを調整して、燃費、動力性能など相反する要素を最適な条件に調整します。これが「適合」です。
特にエンジン制御は、速度、アクセル開度などの条件に対し、その時の気温、水温、エンジン回転数、流入空気量やノックセンサー、排気ガスセンサーなどのセンサーからの信号と合わせて、最適な燃料噴射量やタイミングを調整します。
これにより自動車の動力性能や燃費性能が変わります。
ただし適合はあくまで調整であり、基本性能を大きく超える性能を引き出すことができるわけではありません。
燃費重視で性能が悪化
ところが発売後、2014年型eKワゴンはあまりに燃費を重視したため、動力性能が阻害され、しかもエンストなどの不具合が多発しました。そしてこれらの不具合を対策したのちは、燃費は大きく低下しました。
理由のひとつは、2014年型eKワゴンに搭載された3B2型エンジンは、2006年に発売されたi(アイ)に合わせて開発されたボア×ストローク65.4×65.4のスクエアストロークのエンジンだったためです。このエンジンは競合他社のロングストロークのエンジンに比べ、燃費や中低速のパワーの点で不利でした。
2014年型eKスペース
2014年型eKスペースはeKワゴンよりも車高が高く居住性を高めたモデルです。これはダイハツ タントと競合するモデルとして開発されました。eKスペースは車高が高く車重も重いため、燃費性能はeKワゴンより低くなると予想され、燃費目標はeKワゴンより低く設定されました。eKスペースの燃費目標は2012年10月の技術検証会で承認されました。
定ミスから誤って目標をクリヤ
eKワゴン、eKスペースとも、机上検証では燃費目標は達成可能と見込まれていました。
実際に2013年5月に試作車で試験を行った結果、当初の燃費目標はクリアしました。
ところが、その後の実走試験では燃費が目標を大きく下回ったことが判明しました。
調査したところ、試作車の試験の際、排ガスが漏れていて実際よりも良いデータになっていたことが判明しました。
そこで再度測定した結果、目標を達成していないことがわかりました。
このままでは国が定めた平成27年度燃費基準をクリアできないため、走行抵抗を算出するグラフの曲線を意図的に改ざんし、実際より低い転がり抵抗を算出しました。
2015年型eKワゴン (2014年型eKワゴンの年式変更車)
2015年型eKワゴンは、2014年型eKワゴンに改良を加えて燃費目標を30.0km/lとしたものです。
しかし開発期間は2014年型 eKワゴンを開発した後のわずかな期間しかありませんでした。燃費を改善する有効な手立てはなかったため、転がり抵抗の測定値の曲線を意図的に下げて転がり抵抗を0.00494に改ざんしました。
データの改ざんはその後2015年型eKスペース、2016年型eKワゴンでも行われました。
不正のまとめ
三菱自動車の燃費に関する不正は、主に以下の3点にまとめられます。
- 走行抵抗は惰行法で測定することが法規で定められているのにも関わらず、高速惰行法で測定した。そのため高速惰行法で測定したデータを、惰行法で測定したように見せる逆算プログラムで対処した。
- その高速惰行法でも測定せずに、走行抵抗を机上で計算し提出した。
- 測定データが目標燃費を達成できないため、測定値の中から意図的に低い数値を選択してデータを改ざんした。
経営陣や管理者は知らなかった
この燃費改ざんを三菱自動車の経営陣や管理者は知りませんでした。
この事件が発覚後、三菱自動車の相川社長、中尾副社長は責任を取って辞任しました。そして2016年10月に日産が2,370億円を出資し、三菱自動車はルノー・日産の傘下に入りました。
さらに2019年以降の次期軽自動車の開発は日産が行い、三菱自動車は生産のみを請け負うこととなりました。
不正により三菱自動車が失ったものはあまりにも大きいものでした。
原因
調査報告書に書かれた原因は以下の4点です。
- 無理な目標設定
- 開発体制の不足と硬直的な開発日程
- 研究開発費の不足による技術の劣後
- 不正の悪循環
無理な目標設定
2014年型eKワゴンでは燃費目標が5回も引き上げられました。本来であれば設計結果を承認するゲートを通過した後は、目標を変えるのは三菱の技術規定(MMDS)では許されていません。ところが経営陣自らルールをこの逸脱して目標を変更しました。
また燃費目標の達成については、経営陣は現場に対して「がんばれ」とはっぱをかけるだけでした。目標の実現可能性について技術的な検討はされていませんでした。
こうした背景には、今回初めて日産と提携したため、日産と合意したトップクラスの燃費目標に経営陣がこだわったこともありました。
しかも開発本部の幹部や経営陣は、性能実験部が行う「適合」の中身を十分に理解していませんでした。そして燃費向上は性能実験部に任せたままでした。
開発本部の内部では、商品企画・設計など上流工程に対し、性能実験部は下流工程と見なされていました。
社内の序列も同様で、他部署は性能実験部に対し高圧的な態度でした。
しかも開発本部内では上司から指示されたことに対し「できない」と言えない風土がありました。 性能実験部では「『できないことを証明する』よりも『とりあえずできる』といった方が楽」と考え、できないということを憚る風土でした。
開発体制の不足と硬直的な開発日程
三菱自動車の1車種当たりの開発人数は約270名で、これは同規模の自動車メーカーの60~80%程度に相当します。
この少ないリソースは日程の遅れにつながり、しかも上流工程が遅れてゲートの通過が遅れても、開発の完了予定はそのままでした。
そしてしわ寄せは常に下流工程の性能実験部に来ました。
研究開発費の不足による技術の劣後
リコール隠しの影響で三菱自動車の研究開発費は2009年には224億円に減少しました。2015年度は450億円にまで回復しましたが、それでも競合のスズキの2015年の研究開発費は1,310億円でした。
研究開発費が少ないため、リソースは目先の車種の開発や改良に優先され、燃費向上技術のような将来の開発は後回しになっていました。
不正の悪循環
2014年度eKワゴンで、不正を行って燃費目標を達成したため、その後の車種でも不正を続けざるを得なくなり、これがさらなる不正を生むという悪循環になりました。
ついに2016年型eKワゴンは、実走試験も行わず最初から走行抵抗のデータを捏造しました。もう不正を続けたため、実測しても目標達成できる見込みがなかったからです。
調査報告書では指摘されない問題
他にも調査報告書に書かれていない以下の問題がありました。
競合と対等でないエンジン
eKワゴンのエンジンは、燃費に不利なスクエアストロークでした。理由はこのエンジンは前のモデルi(アイ)の狭いスペースに入れるためでした。
しかし当時競合は燃費に有利なロングストロークのエンジンに切り替えていました。エンジンの基本性能が違うのに「適合」で競合と同等の燃費が実現できるのでしょうか。この目標達成の技術的な可能性を経営陣はどこまで理解していたのでしょうか。
無理な燃費目標が他の性能を犠牲に
実際には燃費と動力性能は相反します。
2014年型eKワゴンは、無理に燃費を追求したため、発売後エンジンストップなどの不具合が発生し、その改修に追われました。
燃費を優先するあまり、動力性能や信頼性など重要な性能が犠牲になっていました。
コンプライアンス体制では不正を防げない
三菱自動車は2000年、2004年のリコール隠し問題以降、社内コンプライアンス組織を立上げ、定期的なヒアリングや監査を実施していました。
しかし今回の問題は、経営陣、幹部社員の無理な要求により、性能実験部が不正以外に手段がない状態に追い詰められたため起きました。(性能実験部が楽観的な報告を繰り返したことも一因ですが)
コンプライアンス体制を整備しても、組織をこういった状態にしてしまった経営陣、幹部社員の考え方を変えない限り、不祥事は再発します。
結果論になってしまいますが、不正を起こさないようにするには(過去に遡って考えて)どうすればよかったのでしょうか。
身の丈に合った開発
コスト削減により人員を大幅に削減した体制では以前と同じ規模の開発はできません。現在の体制でできるような適切な車型数を開発すべきでした。(例えばターボの発売は1年延ばすなど) そしてこれを決めるのは経営者しかいません。
技術的な知見、見通しを持ったリーダーの重要性
開発責任者は根拠ないまま燃費目標を引き上げ、その達成を性能実験部に強要しました。
そのため動力性能が犠牲になり、エンジンストップなどの不具合が発生しました。開発責任者は、開発の最高責任者として、目標達成の技術的な見通しを立てる必要があるのではないでしょうか。
自動車はリスクの大きな事業です。新車の開発には多額の費用(200億円)がかかり、それだけの費用と時間をかけて開発しても、人気が出なければ売れません。
その一方でマツダのファミリアやホンダのオデッセイなど、たった1つのモデルが大ヒットして、傾きかけたメーカーを救いました。
こうしたリスクの高い事業だからこそ、製品の品質、性能を開発責任者や経営者が高い関心を持つ必要があるのではないでしょうか。
(トヨタ自動車の豊田章男社長がすべてのトヨタ車のハンドルを実際に握って販売のGOサインを出しているそうです。)
そしてエンジンの基本性能が競合より不利であれば、燃費については現実的な目標を定めて燃費以外で顧客に訴求する販売を考えるべきだったのではないでしょうか。
競合よりも燃費が0.*km/l劣っていたからといって、どれだけの顧客がそれを気にするでしょうか。
多くの顧客は使っていてカタログ燃費が出ることはなく、参考値にすぎないことはわかっています。
製品を仕上げる部門と、製品を評価する部門が同じ
燃費などの性能を性能実験部がチューニング「適合」し、その結果を性能実験部自らが評価すれば、評価はどうしても甘くなります。
工場で製造と検査を分けているように、性能実験部とは別に製品を評価し合格を出す部門が必要ではないでしょうか。
合格を出す部門は、自社の基準だけでなく、法規制の適合らついても確認しなければなりません。これが適切に機能すれば、高速惰行法など過去の問題も発見されていたかもしれません。
この問題を詳細に見ていくと、決してこの会社だけの問題ではないと思えます。
同様に状況になれば、他の会社でも不正は起きるのではないでしょうか。
参考文献
三菱自動車「燃費不正問題に関する調査報告書」 2016年8月1日特別調査委員会
この記事を書いた人
経営コラム ものづくりの未来と経営
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