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製造業の場合、中小企業の取引先が大企業の場合も多く、発注側と受注側、大企業と中小企業という立場の違いから、不利な条件で受注させられることもあります。国はこれを問題と考え、支援策を提供しています。これはどのようなもので、支援策をどう活用すればよいのでしょうか?

国の支援策とその活用方法を説明します。
 

国の支援策

 
国の支援策には以下のようなものがあります。

◆法律
下請代金支払遅延等防止法 (以降、下請法)

◆ガイドライン等
下請適正取引等の推進のためのガイドライン (以降、ガイドライン)
価格交渉ノウハウ・ハンドブック (以降、ハンドブック)

下請法は、発注先がやってはいけない禁止事項が決められ、違反した場合は、公正取引委員会からの勧告や罰金が定められています。

【報告があった場合】

中小企業庁に確認しましたが、もし理不尽な要求や問題のある行動の報告があっても、公正取引委員会は直ちにその企業に調査に入りません。彼らは日頃からこうした情報を収集していて、問題のある報告が多い企業に対し、時機を見て調査に入るそうです。(この調査件数は年間で5,000件を超えます。) 従ってどの仕入先からの報告で調査に入ったのか取引先はわかりません。

一方、ガイドラインには罰則はありませんが、国が考える望ましい取引の事例と、望ましくない取引の事例が具体的に書かれています。従ってガイドラインに抵触するような取引は、取引先に対して「そのような要求はガイドライン抵触しませんか」とやんわりとけん制することができます。

また原材料、エネルギー費用などの上昇を取引価格に転嫁している状況は、国が定期的に大手企業に対し調査を行っています。調査結果は公表され、価格転嫁に消極的な企業は実名が公表されます。その結果、大手企業にも価格転嫁を認める状況になってきています。
 

どのように活用するのか?

 
下請法の違反事例やガイドラインに反する行為は、取引している中小企業が報告しなければわかりません。またこういった問題行為は、取引先企業の方針だけでなく、担当者個人の問題もあります。

実際には理不尽な要求があったから公正取引委員会に報告しても、すぐに是正されるわけではありません。しかしこうした取引先の問題行動を各社が報告し、公正取引委員会が動くことで、理不尽な要求や優先的地位の濫用が減少し、公正な取引の実現に向かいます。

そのためには、取引にかかわる中小企業の関係者は、法律やガイドラインを読んで「どのような要求が下請法やガイドラインに抵触するのか」理解しておく必要があります。つまり下請法やガイドラインは、立場の弱い中小企業が「自らを守るための武器」なのです。

詳細は、国の資料を見ていただくとして、以下に概要とポイントを説明します。
 

下請法

 
親事業者<注記>が下請事業者に製造やサービスを委託した時に、親事業者の義務と禁止事項を定めた法律です。

違反すれば、罰金や公正取引委員会の勧告措置が定められています。勧告措置を受けた場合、違反した企業は、社名、違反内容がホームページで公開されます。

この下請法には図1に示すように4つの義務と11の禁止行為が定められています。

図1 下請法の概要



<注記> 親事業者とは
下請法の親事業者と下請事業者は事業者の資本金規模で以下のように定義されます。
注意が必要なのは、資本金が1,000万円を超える場合、中小企業であっても仕入先に対して親事業者になる場合があることです。その場合、自社が仕入先に対して下請法に抵触しないように注意しなければなりません。
図2 親事業者と下請事業者

図2 親事業者と下請事業者



 

下請法のポイント

 
詳細は下請法を読んでいただくとして、実務で問題となりやすい点を説明します。
 

発注書面の交付義務

 
「委託後、直ちに、給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法等の事項を記載した書面を交付する義務」のことです。従って発注は注文書など書面で必ず行い、注文書には発注単価が記入されていなければなりません。

これは良い面と悪い面があります。

◆良い面
単価の取り決めなしで注文を受けて、あとで安い金額とされることを防ぐことができる。受注する時点で単価が低すぎれば交渉できる。

◆悪い面
納期が短いため図面だけFAXで送ってもらって材料の手配をしたい。しかし注文書が発行できないと図面を送ってもらえない。

このように不便な面もありますが、仮単価でも金額が入ると、それが基準になってしまいます。そこでできるだけ金額を決めて受注するようにします。
 

受領拒否の禁止

 
「下請事業者に責任がないにもかかわらず受領を拒むこと」です。

納期を守るために、手配に時間がかかる部材を仕入先の判断で先行手配することがあります。本来は取引先から書面で内示をもらうべきですが、内示の手配数で不足する場合、仕入先が先行手配を上積みします。同様に仕入先が自主的に在庫を持つ場合もあります。

これは順調に受注があればよいのですが、景気が急減速し内示が取り消されると問題になります。

ガイドラインでは

「取引先から『参考情報』として提示された場合でも、それが実際の部材手配や製造着手につながる場合は、事実上の発注とみなされる

と書かれています。実際に大量の部材を抱えてしまった場合、引き取ってもらわないと経営に影響します。しかしこのガイドラインを示して引取りを求めるのはなかなか大変です。

そこで先行手配や在庫を持つ場合、予め先行手配の記録をします。具体的には取引先と打合せし「『参考情報』を元に先行手配をする」という旨の議事録をつくり、取引先のサインをもらいます。もしサインが拒否されれば、先行手配はしない方がいいです。その場合、「リードタイムはこれだけかかるのだから、それ以上の短納期は無理」ということを書面に残します。
 

下請代金の支払遅延の禁止

 
「支払代金を、支払期日までに支払わないこと」です。

最近は月末締の翌月払いの企業も増えて、検収が上がればスムーズに支払われるようになりました。

問題は検収がなかなか上がらない場合です。特に装置や金型は取引先が問題なく生産を立ち上げて検収になります。中には問題の解決に何か月もかかり、それまで検収が上がらないこともあります。

そこで、取引先と契約する際に進捗度に応じて何割かを支払ってもらう方法があります。

例えば、建設業は工事代金が大きく、自社も工事中に業者へ支払いしなければなりません。そのため、こういった方法が一般的です。ただし最後の支払いは、完成・引き渡しが条件です。

このような方法を取れば資金的に楽になりますし、取引先も検収を上げるまで支払いは残るので安心できます。
 

買いたたきの禁止

 
「通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること」です。

「通常支払われる対価」とは、「その下請事業者の属する取引地域において一般的に支払われる対価」を指します。

「著しく低い下請代金」は解釈によって変わりますが、ガイドライン、ハンドブックによれば、

  • 一方的な指値
  • 一律・一定率での発注価格の減額(コストダウン要請)
  • 材料費・加工費・人件費などのコスト増加を無視した価格据え置き

などが挙げられています。取引先からの定期的な原価低減要請でも、原価低減できるネタがないのに一方的に価格を引き下げれば買いたたきになります。
 

不当なやり直しの禁止

 
「下請事業者に責任がないにもかかわらず、給付の内容を変更させたり、給付をやり直させること」です。

例として合否判定が曖昧な傷や外観について、一方的に「傷があるものは不良だから受け取れない」とされる場合、取引先の事情で手直しを依頼されたが、その費用を支払われない、などです。
 

下請適正取引等の推進のためのガイドライン

 
親事業者と下請事業者の間の取引において「望ましい事例」と「望ましくない事例」を示すことで、公正な取引を促すことを目指したものです。

ガイドラインは以下の20の業種について、それぞれ作成されています。

(1)素形材
(2)自動車
(3)産業機械・航空機等
(4)繊維
(5)情報通信機器
(6)情報サービス・ソフトウェア
(7)広告
(8)建設業
(9)建材・住宅設備産業
(10)トラック運送業
(11)放送コンテンツ
(12)金属
(13)化学
(14)紙・加工品
(15)印刷
(16)アニメーション制作業
(17)食品製造業
(18)水産物・水産加工品
(19)養殖業
(20)造船業

自社の業種が20に当てはまらない場合も、近い業種のガイドラインを読んでおくことをお薦めします。

例えば、プレス、切削など金属加工の場合、
(2)自動車
(3)産業機械・航空機等
(5)情報通信機器

この3つを印刷して読んでおくことをお薦めします。
(情報通信機器は、受注や書面の交付、支払などがQ&A形式で具体的に書かれているので参考になります。)
 

参考例 自動車のガイドラインの場合

 
ガイドラインの内容の参考例として、「(2) 自動車」の一部を紹介します。

補給品の価格決め

 
自動車のような大量生産品の場合、現行モデルで使用する部品は毎月一定量が発注されます。しかしそのモデルが販売中止になると、その部品は補給品扱いになり、発注量が大幅に少なくなります。それでも依然と同じ価格で発注されれば単価が合いません。
これについてガイドラインでは

少量の補給品を以前と同じ価格で発注することは下請法の買いたたきに該当する恐れがあると明記しています。

問題は、自動車は部品の共通化が進み、今受注している部品が量産品なのか補給品なのかわかりづらいことです。例えばある車種はモデルチェンジでその部品は使用しなくなったが、ある車種はまだ使用しているため、発注量が1/3になっても発注が定期的に行われることもあります。

そのような場合は、補給品・量産品と区別せずに発注量に応じて価格を設定するように取引先と交渉します。

自動車メーカーによっては、量産終了時に一括買い上げなどの制度があるメーカーもあります。しかし二次以降の下請けに、そういった情報も入ってこないこともあります。その場合は取引先を通じてこういった情報を収集します。
 

型取引の適正化

 

金型の保管費用

金型費用を一括で支払わず、部品の価格に上乗せして支払う場合、金型は自社の資産です。自社の資産ですが、その部品の発注がなくなっても生産再開の可能性があるため、金型を保管しなければなりません。その場合、金型を無償で保管させることは、ガイドラインでは

下請法の不当な経済上の利益の提供要請に当たる恐れがあると明記されています。

一方、保管費用をもらっても金型が増える一方であれば、保管場所の確保や管理費用が増えていきます。本来、取引先が保管すれば、その後の使用可能性を考えて見切りをつけて廃棄するはずです。そのような金型でも保管費用を払っているからと保管を続けさせられます。

そのような場合、今後も保管する金型は増え続けると考え、保管スペースの費用、管理費用を計算し、保管すれば利益が出る金額を設定します。そして「今後も金型を保管し続ければこれだけかかりますがいいですか」と費用を請求します。支払いが拒否されれば「差し上げます (大抵償却は終わっている) ので取引先で保管してください」とお願いします。

金型図面の提出

金型を納入する際に「保守のために必要だから」と図面を要求される場合があります。図面を提出するかどうかは、取引先が設計費用を払ったかどうかが基準になります。

設計費用を払えば、設計の成果物である図面は取引先の所有物です。

設計費用を払わなければ、金型代は金型に対して支払われただけで、図面は自社の知的財産です。もし図面を要求されれば設計費用を請求します。

設計費用を払わないのに図面も要求する場合、

下請法のかいたたきに該当する恐れがあるとガイドラインに明記されています。

あるいは「メンテナンスのために金型図面が必要」と取引先が言えば、メンテナンス(再研など)に必要な個所だけ、寸法が入った図面を渡します。それ以外の箇所は寸法の入っていない外形図でもメンテナンスは十分できます。もしそれでは不十分だと取引先が言えば、明らかに次回以降の金型を他社でつくらせる意図があります。
 

配送費用の負担

 
部品の配送費用が仕入先の負担になっている場合、配送費用があいまいになっていることがあります。しかし定期的な配送便に間に合わず、営業担当者がライトバンで数個納品すれば、余分に配送費用がかかっています。その費用も仕入先の負担です。

あるいは仕入先が有償支給品(材料)を取引先から引取りする場合、納品の帰りの便に積めればよいのですが、積み切れずに別便で引き取りしなければならない場合、余分に費用が発生します。

その場合、自社の配送費用がどのくらい発生しているかを明確にし、その費用が取引先から適切にもらえているか調べます。できれば見積に管理費とは別に配送費用、梱包費用を入れます。そして運賃が上がった場合、値上げ交渉します。

本来は、取引先の都合で別便で納品した場合、追加の配送費用を請求すべきです。現実には難しいことも多く、別便で納品することが多ければ、その分見積の配送費を膨らませてカバーする必要があります。
 

原材料価格、エネルギーコスト、労務費等の価格転嫁

 
原材料価格の上昇が発注価格に反映されても、反映されるタイミングが遅ければ、その間利益は少ないままです。また原材料価格以外の費用、エネルギーコスト、副資材、労務費は価格に反映されていない場合もあります。

このような費用が上昇しているにもかかわらず、一方的に従来の価格を要求することは

下請法の買いたたきに相当する恐れがあるとガイドラインに明記されています。

一方ガイドラインによれば「妥当性のある要請であれば値上げを認める」と回答したメーカーもありました。原材料以外のエネルギーコスト、副資材、労務費の上昇による値上げも、要請すれば値上げできる可能性があります。

労務費の上昇(賃上げ)は、これまでは企業の自主的な判断とみなされてきました。しかし最低賃金は年々引き上げられています。さらに物価も上昇しており、一定の賃上げは必要なものと考えられます。これによる原価の上昇は不可抗力として交渉します。
 

取引条件の変更

 
品質改善のため工程の変更や検査が増えても当初の価格を求められることがあります。あるいは不良が出たため、工程や検査が追加になることもあります。

不良の場合は、仕入先に問題があることが多く、その費用が請求できません。これは以下のように取組みます。

自社の問題で検査や工程を追加した場合、「どうなれば検査や工程をなくせるのか」予め取引先と打合せしておきます。そして品質を高めてできるだけ早く追加した工程や検査をなくすように現場が努力します。

顧客の要望で検査や工程を追加した場合、その分原価が上昇したことを伝えて、値上げ交渉を行います。それでも価格を据え置くことは

不当に低い価格を強制することになり下請法に抵触します。
 

価格交渉ノウハウ・ハンドブック

 
下請法やガイドラインの内容を要約したものです。取引先と価格交渉を行う際の事前準備のための資料を意図して作成されました。

交渉は準備6割、本番4割とも言われ、本番前にどれだけ準備したかが成否を決めます。

交渉に関係する全員がハンドブックで学習し、どのような要求がガイドラインや下請法に違反するのか理解しておきます。さらにハンドブックが提示するポイントやテクニックを活用します。

以下、ハンドブックにある「こんな取引条件に要注意!」からいくつか紹介します。
 

合理的な説明のない価格低減要請

 
量産メーカーで行われる定期的なコストダウン要請、これについてハンドブックでは「発注者が、自社の予算単価・価格のみを基準として、通常支払われる対価に比べて著しく低い取引価格を不当に定めることは、下請法や独占禁止法に違反する恐れがあります。」と書かれています。

ハンドブックには事例として

「今年も5%の単価引き下げを頼むよ」という会話があります。

定期的な5%の単価引き下げも、コストダウンできる根拠がなければ、単なる値下げになってしまい下請法違反の可能性があります。

また「不況時や為替変動時に、協力依頼と称して大幅な価格低減が要求されていませんか」として、こういった価格協力要請も望ましくない取引として挙げられています。
 

大量発注を前提とし単価設定

 
価格交渉の中で

「では、ロットをまとめて発注するので安くしてください」

と言われることがあります。ところがこの約束が実行されず、見積よりも少ないロットで発注されてしまいます。

これについてもハンドブックでは

「大量発注を前提とした見積に基づいて取引単価を設定したにもかかわらず、見積時よりも少ない数量を見積時の予定価格で発注することは、下請法や独占禁止法に違反する恐れがあります。」と書かれています。

あるいは納期に間に合わず分納で入れることもあります。しかし分納が常態化すれば上記の事例に該当します。
 

合理的な理由のない指値発注

 
新たな製品の引合があった場合、取引先が指値をする場合があります。この指値についてハンドブックでは

「合理的な説明をせずに、通常支払われる対価に比べて著しく低い取引価格不当に定めることは下請法や独占禁止法に違反する恐れがあります」と書かれています。

実際は相見積なので指値より高ければ失注するかもしれません。

一方、品質・供給量の不十分な仕入先の見積を引合いに出して「A社はいくらで見積が出ている」と指値を迫られる場合もあります。

自社が高ければ本当にA社に発注するのか、見極めた上で、自社の適正価格を提示し、価格の根拠を示して交渉する方法もあります。

できればその際、指値でつくるためには

「どこをどう変えればいいのか」

コストダウンを提案します。そうすれば取引先は

  1. 品質・供給量に問題のあるA社に指値で発注
  2. 品質・供給量は問題ない自社に指値より高く発注
  3. コストダウン提案を受入自社に指値で発注

この3つから選択することになります。

またハンドブックには書面に残すべき内容を提示しています。
 

取引条件に関するルールを書面化した例

 
国は価格転嫁に非協力的な企業を公表するなど様々な取組を行っています。そのため取引先の担当者も仕入先の負担になるようなことは言いにくくなっています。

そこで取引先の要求は必ず書面化し、相手のサインをもらうようにします。

口頭では記録が残りませんが、文書にすれば理不尽な要求の記録が残ります。文書化することで理不尽な要求をけん制する効果があります。

以下はハンドブックに挙げられている例です。

  • 原材料費が上昇した時の価格への反映
  • 一次的な価格引下げに際し、元の価格に戻す際のルール・基準
  • 見積の前提の発注数量を明確にし、発注数量が変動した時は、価格を見直す
  • 取引先の都合で設計・仕様・納期の変更があった場合、取引先が追加費用を負担する
  • 運送費は、発着地・納入頻度(回数)などを明確にし、どちらがどれだけ負担するのか明記

これらの記録は契約の一部です。できる限り打合せ当日に記録し、相手のサインをもらっておきます。
(サインするなら、なかったことにしてくれというかもしれません。)
 

社内での勉強会

 
国から提示されている内容は多岐にわたります。学習を個人に任せても進みません。そこで主に取引先と交渉する社員が、講師になって社内で勉強会を開きます。今まで挙げた事例には自社に関係がないものもあるかもしれません。そこで内容を厳選して

「自社が顧客と交渉する際に最低限知っておくべき内容」

をまとめてテキストをつくります。これを使って社内で勉強会を開けば、関係する社員全員の交渉力がアップします。もし違反事例があった場合、社内で共有し、中小企業庁に報告できます。

取引は本来は売り手と買い手が、対等の立場で取引条件を話し合い合意して行うものです。現実には限られた顧客と取引している仕入先は、「受注しなければ経営が成り立たたない」という弱い立場にあります。

そこで国は法律の制定やガイドラインの作成を通じて、不利な立場になりやすい下請企業を支援しています。

こういった国の施策を活用して、公平な取引の実現を願っています。
 

経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

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製造業の原価計算と見積について、「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」から、抜粋しました。以下の3つのパートがあります。
 

【原価計算と見積の基礎】
原価計算の基本的な計算方法を説明しました

【原価計算と見えない赤字】
検査追加、ロットの変更など、現場て起きる問題を金額で示しました。

【原価計算と見積の疑問】
間接製造費用の分配、イニシャル費の回収などの考え方を示しました。

 

原価計算と見積の基礎

 

個々の製品の原価の計算方法、人と設備のアワーレートの計算方法、間接費や販管費の計算方法など基本的な計算をわかりやすく書きました。


【原価計算と見積の基礎】1. なぜ原価が必要なのか?

様々な費用が上昇する今日、原価が分からないと値上交渉ができません。他にも原価が分からないことで起きる問題は…


【原価計算と見積の基礎】2. 製造原価の計算方法(1)

製造原価を計算する費用は決算書の値を元にします。決算書には工場で発生する様々な費用が計上されています。例えば…


【原価計算と見積の基礎】3. 製造原価の計算方法(2)

個々の製品の見積に間接製造費用と販管費も入れる必要があります。間接製造費用は間接部門の労務費や工場の経費など…


【原価計算と見積の基礎】4. 人のアワーレートの計算方法

人のアワーレートは人の年間費用を実際に付加価値を生んでいる時間で割って計算します。一方各現場には賃金の異なる人がいるため…


【原価計算と見積の基礎】5. 設備のアワーレートの計算方法(1)

設備のアワーレートは設備の年間費用を実際に付加価値を生んでいる時間で割って計算します。この年間費用のうち設備の購入費用は…


【原価計算と見積の基礎】6. 設備のアワーレートの計算方法(2)

設備のアワーレートの具体的な計算を説明します。設備が年間で半分しか稼働しなければ…
 

以降、個々の製品の原価、工程別の原価については「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】にあります。
 

原価計算と見えない赤字

 


【原価計算と見えない赤字】1. 高い設備は原価が高いのか

設備の大きさ(価格)による原価の違い、設備によって現場を分けるかどうか、ラインの場合の設備の考え方などを説明しました。同じ設備でも大きさによって償却費やランニングコストが異なる場合は…


【原価計算と見えない赤字】2. 自動化とロボットの活用

無人加工と有人加工の違い、ロボットを導入した場合の原価を説明しました。有人加工は加工中、人と設備の費用が同時に発生しますが、無人加工の場合は…


【原価計算と見えない赤字】3. ロットの減少によるコストアップ

段取がある場合、製品1個の段取費用はロットが小さくなると大きくなります。具体的にどのくらい違うのか、機械加工A社樹脂成型加工B社の事例で…


【原価計算と見えない赤字】4. 段取時間の短縮

ロットが少なくなれば原価に占める段取費用が大きくなります。この段取時間を短縮すれば段取費用はどのくらい小さくなり原価はどうなるでしょうか?実は段取は2種類あり…


【原価計算と見えない赤字】5. 検査追加によるコストアップ

検査費用が最初から見積に入っていれば問題ありませんが、検査費用が見積に入っていない場合、検査を追加すれば原価は上がります。この検査には全数検査と抜取検査があり…
 

以降、材料歩留のスクラップ費用の影響、不良損失によるコストアップ、電気代、運賃上昇による原価の増加については「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【実践編】にあります。
 

原価計算と見積の疑問


【原価と見積の疑問】1. 間接費用の分配とは?

本コラムで説明する間接製造費用の分配は2種類あります。ひとつは直接製造費用に比例して間接製造費用を各現場に分配する方法です。もうひとつは…


【原価と見積の疑問】2. 直接原価計算の方が良いと言われたが?

「全部原価計算より直接原価計算の方が良い」「変動原価と固定原価を計算し、限界利益の総額を管理する」原価計算の本に書かれていますが、これはあまりお勧めしません。その理由は…


【原価と見積の疑問】3. イニシャル費の回収はどうすればいいのか?

イニシャル費は金型のように生産開始に先立って発生する費用です。顧客によってはイニシャル費として一括で支払わず、製品の価格に上乗せして支払う場合があります。これがイニシャル費の回収です。一方中には製品と金型の利益率が大きく違う場合があり…
 

他にも、赤字でも受注すべきか、内製・外製をどう判断するのか、設備投資や開発費の回収計算料については「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【実践編】にあります。
 

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【製造業の値上げ交渉】7. この製品、いくらが正しいのだろうか? https://ilink-corp.co.jp/10532.html https://ilink-corp.co.jp/10532.html#respond Mon, 29 Jan 2024 01:11:20 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=10532   いろいろな費用が上がった場合の値上げの明細について【製造業の値上げ交渉】6. 値上金額は見積書にどのように入れればいいのだろうか?で説明しました。 この見積を元に顧客に値上げをお願いすると「高すぎる」と言わ […]

投稿 【製造業の値上げ交渉】7. この製品、いくらが正しいのだろうか?原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク に最初に表示されました。

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いろいろな費用が上がった場合の値上げの明細について【製造業の値上げ交渉】6. 値上金額は見積書にどのように入れればいいのだろうか?で説明しました。

この見積を元に顧客に値上げをお願いすると「高すぎる」と言われることがあります。顧客から「高すぎる」と言われると、いくらが「適正価格」なのだろうかと思います。

ある製品(部品)の適正価格は、あるのでしょうか。
 

自社の適正価格

 
結論から言えば、ある製品(部品)の絶対的な適正価格はありません。ただし、自社がつくった場合の適正な価格はあります。
 

自社の適正な価格とは?

 
自社の適正価格とは、製造原価、販管費をカバーし、必要な利益がある価格です。

この価格であれば、必要な経費をまかなって利益が出ます。残った利益を借入金の返済や老朽化した設備の更新に充てることができます。

利益まっくすで計算した原価は、その工場で発生した費用にもとづくもので、これは「真実」です。従って時間(段取時間、加工時間)が適正であれば、これが自社の適正価格です。
 

会社が違えば、適正価格は違う

 
しかし会社が異なれば直接製造費用と間接製造費用の比率、販管費レートが違います。つまり適正価格も違います。
 

規模の異なる会社の原価の比較

 
そこで規模の異なる架空の機械加工の会社A社とB社の原価を比較します。

2社とも、マシニングセンタ、NC旋盤などによる部品加工と組立を行っています。ただし2社は規模が違います。

A社 売上7億円、社員43人、うち間接は14人
B社 売上30億円、社員193人、うち間接は87人

A社に比べて、B社は外注品も多く、購買や生産管理など間接部門に多くの人がいます。技術や品質管理の人も多く、品質管理や工程管理の体制は充実しています。
 

構成と売上、製造原価、販管費、利益

 
A社の構成を図1に、B社の構成を図2に示します。

図1  A社の構成


図2  B社の構成

A社の売上、製造原価、販管費、利益を図3に示します。

図3  A社の売上、製造原価、販管費、利益

図3  A社の売上、製造原価、販管費、利益

B社の売上、製造原価、販管費、利益を図4に示します。

図4 B社の売上、製造原価、販管費、利益


 

アワーレート、販管費レートの比較

 
NC旋盤の現場の間接製造費用を含んだ人と設備のアワーレートの合計 アワーレート間(人+設備)を比較します。

NC旋盤のアワーレート間(人+設備)

A社 アワーレート間(人+設備) : 4,620円/時間
B社 アワーレート間(人+設備) : 7,670円/時間

(アワーレート間(人+設備)の計算については【製造業の値上げ交渉】2. 我が社の人と設備のアワーレートはいくらなのだろうか?を参照してください。)

人件費と設備の費用(償却費とランニングコスト)は同じです。それでもアワーレートがこれだけ違うのは、間接部門の人件費と工場の経費の違いによるものです。

決算書の製造原価と販管費から計算した販管費レートを以下に示します。

A社 販管費レート : 0.25
B社 販管費レート : 0.057

B社はA社より工場の規模は大きいのですが、販管費はそれほど大きくありませんでした。その結果、B社の販管費レートはA社より小さくなりました。
 

見積金額の比較

 
NC旋盤で加工するA1製品の見積金額を比較します。

(見積金額の計算については【製造業の値上げ交渉】3. 間接費用や販管費も原価に含まれるのだろうか?を参照してください。)

製造時間 : 0.075時間

製造費用
製造費用=アワーレート間(人+設備)×製造時間

A社製造費用=4,620×0.075=346円
B社製造費用=7,670×0.075=575円

製造原価
A1製品 材料費330円 外注費50円
製造原価=材料費+外注費+製造費用

A社製造原価=330+50+346=726円
B社製造原価=330+50+575=955円

販管費
販管費=製造原価×販管費レート

A社販管費=726×0.25=182円
B社販管費=955×0.057=54円

販管費込み原価
販管費込み原価=製造原価+販管費

A社販管費込み原価=726+182=908円
B社販管費込み原価=955+54=1,009円

目標利益率 : 0.087 (A社、B社共)

目標利益
目標利益=販管費込み原価×目標利益率

A社目標利益=908×0.087=80円
B社目標利益=1,009×0.087=88円

見積金額
見積金額=販管費込み原価+目標利益

A社見積金額=908+80=988円
B社見積金額=1,009+88=1,097円

A社とB社では、会社の規模、直接製造費用と間接製造費用の比率、販管費レートが違います。その結果、同じ賃金、同じ費用の設備でも間接製造費用を含んだアワーレートは大きく違いました。

そして見積金額、つまり適正価格も
A社 988円
B社 1,097円

と異なりました。950円の受注金額では利益は、

A社 : 利益=950-908=42円
B社 : 利益=950-1,009=▲59円

A社は42円の利益がありましたが、、B社は赤字でした。

以上の結果を図5に示します。

図5 A1製品の見積金額


 

管理がしっかりしている会社は原価が高くなる傾向

 
A社に比べてB社は、以下の特徴があります。

  • 工程管理に専任者がいて、手順書や治具の整備、製造条件の記録や管理がしっかりできている。品質は安定し、製品の製造履歴(トレーサビリティ)も記録・保管している。
  • 品質管理の人員、及び検査・測定機器が充実し、必要な個所はすべて社内で測定・評価できる。
  • 製造技術の専任者がいて技術的に難易度の高い製品も製造条件を工夫して実現できる。
  • 対してA社は価格は低いのですが以下の弱い点があります。

  • 特殊な治具が必要な場合、治具を自社で設計できないため社外に頼まなければならない。
  • 検査・測定機器が十分になく、社内で測定・評価できない項目がある。
  • 製造履歴(トレーサビリティ)を記録・保管する体制がない。

 

製品によって適した仕入先が変わる

 
従って製品の要求精度、要求品質、技術的な難易度によって、適切な仕入先は変わります。
 

A社でも問題なく製造できる製品

 
難易度が低く、高度な工程管理、製造履歴管理、品質管理が必要でない製品の場合、最適な仕入先はA社です。こういった製品をB社に発注すれば製品は高くなります。
 

高くてもB社に発注すべき製品

 
技術的な難易度が高く、不良品が発生すれば重大な問題が起きる製品は、A社ではリスクが高いです。

安いからとA社に発注すれば、手順書が整備されていなかったり、重要な工程の工程管理が不十分だったりして思わぬミスや不良が起きるかもしれません。しかもトレーサビリティがとられていないため、問題が起きた場合、影響範囲を絞り込むことができません。

このような製品は、価格が高くてもB社に発注します。

つまりA社とB社の得意な製品は異なります。これを図6に示します。

図6  A社とB社の得意分野

図6 A社とB社の得意分野


 

市場価格

 
適正価格のもうひとつの考え方は市場価格です。この市場価格は需要と供給で決まります。例えば卵は市場価格が日々変わります。需要が増加し供給不足になれば価格は上昇します。製造業でも多くの工場でつくれるものは市場の影響を受けます。

製造業、中でも下請け企業の場合、景気が減速して受注不足に陥れば、少しでも固定費を回収するため、多くの企業は赤字でも受注します。その結果、市場価格は低下します。

しかし実際は発注先と長期的に取引していれば、景気が良くなった時に値上げが困難になるため極端な値下げはしません。

逆に景気が良くなり中小企業の多くが受注が一杯になれば、赤字でも受注する企業はなくなります。その結果、市場価格は上昇します。
 

短時間に見積を出すサービス

 
最近は三次元データがあれば見積金額を計算するシステムもあります。ミスミのAIプラットフォーム メビー(meviy)は、三次元データを送れば、板金、溶接、切削加工の部品の見積を1分で出してくれます。

多くの取引先がこういったサービスを利用すれば、将来はこれらがひとつの市場価格を形成するかもしれません。
 

自社のポジションは?

 
自社はA社でしょうか?

B社でしょうか?

自社に合った製品はどのようなものでしょうか?

そこで自社に原価の仕組みを構築し、製品毎の適正価格(適正な見積金額)を算出します。この価格が現在の自社の実力値です。この価格で受注しなければ必要な利益が確保できません。
 

失注が多い場合

 
「適正価格」で見積を出して失注が多ければ、競合がいくらで受注したのか調べます。競合と比べて自社の見積が明らかに高ければ、以下のいずれかが考えられます。
 

製造コストが高い

 
製造コストが高い原因は

  • 製造工程が多い
  • 製造時間が長い
  • 設備や人の費用が高い

などが考えられます。製造工程の見直し、製造時間の短縮、ランニングコストの削減に取り組みます。
 

自社の間接製造費用、販管費の見直し

 
どの製品も競合よりも自社の適正価格が高い場合、間接部門や工場の経費、販管費が大きい可能性があります。自社の間接部門や事務の人員、工場の経費が適正か、削減できないか検討します。

例えば、売上が大きく減少すると、売上に対して間接部門の費用や販管費が高くなります。もし一時的な売上低下でなく、今後もこの売上が続くようであれば、それに合わせて間接部門や事務の体制を変えなければなりません。

これは決して簡単ではありませんが、かつて同じような売上だった時代があれば、その時の組織・体制を参考にし、削れるところはないか検討します。
 

自社に適した製品を受注できていない

 
A社でもできる製品の見積金額はB社は高くなります。B社に向いている製品はもっと難易度が高くA社に向いていない製品です。A社でできるような製品をA社と競合して価格を下げれば、B社の経営は苦しくなります。
 

ブラックボックス化

 
こういった競合との価格競争を避ける方法は「ブラックボックス化」です。

自社しかできない工程、取引先もわからない工程は取引先にとってブラックボックス化します。相見積が取れないため、その価格が適正かどうかも取引先はわかりません。

あるいは取引先が困っていたことを解決すれば、そのノウハウはブラックボックスにできます。そのためには取引先の困りごとをヒアリングし、それを自社で工夫して解決します。現場で創意工夫したことは自社の強みになります。その場合、カギとなるところは隠しておきます。
 

この適正価格に対し、工程や検査が追加されれば原価は上がります。ではいくら上がるのでしょうか?

これについては【製造業の値上げ交渉】8. 取引先から検査追加の要望があった。いくら高くなるのだろうか?を参照願います。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

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【製造業の値上げ交渉】11. なぜ社員に任せたら値上げ交渉が進まないのだろうか? https://ilink-corp.co.jp/10527.html https://ilink-corp.co.jp/10527.html#respond Mon, 29 Jan 2024 00:37:41 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=10527   値上げ交渉の基本的な手順について【製造業の値上げ交渉】10. 値上げ交渉は初めて、どう進めていけばよいのだろうか?で説明しました。 これを理解して、社員に値上げ交渉を指示したところ、中々進みません。なぜでし […]

投稿 【製造業の値上げ交渉】11. なぜ社員に任せたら値上げ交渉が進まないのだろうか?原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク に最初に表示されました。

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値上げ交渉の基本的な手順について【製造業の値上げ交渉】10. 値上げ交渉は初めて、どう進めていけばよいのだろうか?で説明しました。

これを理解して、社員に値上げ交渉を指示したところ、中々進みません。なぜでしょうか?
 

誰が交渉を行うのか?

 
理由として、本音はやりたくないという場合があります。

営業の仕事は「注文を取ってくる」ことです。しかし値上げをすれば、注文を取るどころか失注するかもしれません。値上げ交渉は、これまでの営業の仕事とは真逆の仕事なのです。
 

時代の変化に対応できないマインド

 
時代が変わり営業活動も変わっています。
 

かつての営業活動

 
製造業はかつて右肩上がりが長く続きました。この時に重要なのは「受注を増やすこと」です。受注が増えれば、売上が増えて固定費の比率が下がります。利益も増えます。受注増加に伴い設備投資が必要な場合も設備投資の回収は容易です。

その時、一番の問題は失注です。価格が低く利益が少なくても、失注しなければ売上は増えます。しかも営業は売上で評価されるので、利益が少なくても売上が大きければ高く評価されます。

これまでこういった環境で仕事をしてきた人にとって、今は正反対です。
 

今の営業活動

 
今は売上の大幅な増加は望めません。しかも費用は年々上がっています。利益は減少し、このままでは設備の更新も困難になります。このような環境では優先すべきは売上よりも利益です。例え売上が大きくても利益がなければ会社が成り立ちません。

その一方、受注が全くなければ固定費が回収できず赤字になってしまいます。その場合は価格が低く赤字の製品でも受注しなければなりません。

つまり受注残高に応じてアクセルとブレーキを踏み分けなければなりません。

しかも様々な費用が上がっているため、以前の感覚で「これぐらいなら利益が出るだろう」という価格では赤字になってしまいます。

ある会社でベテランの営業Aさんは、製造原価の10%を「販管費+利益」として見積もりしていました。しかしこの会社の販管費は製造原価の30%もありました。つまり見積の段階ですでに赤字でした。
 

値上げ交渉は経営者の仕事

 
社員の意識がこのような場合、値上げ交渉は難しくなります。値上げ交渉は「失注するかどうか」ギリギリの駆け引きが必要だからです。

「失注するかもしれないが、思い切って値上げしなければ会社が立ち行かなくなってしまう」

この判断は経営者でなければできません。値上げ交渉の資料作成や準備は社員に任せても、取引先との交渉は最初は経営者が行います。利益が年々減少していれば値上げは最優先事項です。

まず経営者が覚悟を持って粘り強く取引先と交渉します。そして結果が出れば社員に引き継ぐことも可能です。
 

値下げ交渉はナンバー2以下

 
逆に取引先からの値下げ要求などは、経営者でなく営業部長などナンバー2以下が行います。そうすれば取引先から不利な条件を要求されて困った時、
「私の一存では決められないので、社に戻って社長と相談します」
と回答を保留し、時間を稼ぐことができます。

しかし経営者は最終決定権者なので、回答を保留できません。最終決定権者とナンバー2では、この違いがあります。

私の経験でも、価格交渉や不良品の損失補填などお金が絡む交渉では、必ず経営者に来てもらいました。経営者が来ればその場で結論が出るからです。特に中小企業は、経営者に来てもらわないと決まらないことが多かったです。

こうして値上げ資料を持って交渉に行くと、値上げの根拠を聞かれることがあります。これはどのようすればよいでしょうか?

これについては【製造業の値上げ交渉】12. 取引先から値上の根拠を求められた。どうすればいいのだろうか?を参照願います。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

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経営コラム ものづくりの未来と経営

人工知能、フィンテック、5G、技術の進歩は加速しています。また先進国の少子高齢化、格差の拡大と資源争奪など、私たちを取り巻く社会も変化しています。そのような中

ものづくりはどのように変わっていくのでしょうか?

未来の組織や経営は何が求められるのでしょうか?

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【製造業の値上げ交渉】8. 取引先から検査追加の要望があった。いくら高くなるのだろうか? https://ilink-corp.co.jp/9862.html https://ilink-corp.co.jp/9862.html#respond Sat, 20 Jan 2024 03:00:34 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9862   値上げが必要になった原因として、当初より原価が高くなっていることがあります。例えば「検査が追加された」、「当初の見積にない工程が追加された」などです。   検査が追加された場合   例え […]

投稿 【製造業の値上げ交渉】8. 取引先から検査追加の要望があった。いくら高くなるのだろうか?原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク に最初に表示されました。

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値上げが必要になった原因として、当初より原価が高くなっていることがあります。例えば「検査が追加された」、「当初の見積にない工程が追加された」などです。
 

検査が追加された場合

 
例えば、見積した時点では検査費用は入っていませんでした。しかし生産が始まると取引先から「傷があるものは入れないでほしい」と言われました。そのため全数目視検査を追加しました。

この場合、検査費用の分、原価は上がっています。
 

検査費用の計算

 
この検査費用は、抜取検査と全数検査で金額が大きく違います。

そこで架空のA社 A1製品に抜取検査と全数検査を追加した場合の原価を計算します。

(A社の詳細は【製造業の値上げ交渉】1. 個々の製品の原価はいくらなのだろうか?を参照願います。)

A1製品

  • 製造工程 : NC旋盤
  • 製造時間 : 0.075時間
  • 製造費用346円
  • ロット : 100個
  • 材料費 : 330円
  • 外注費 : 50円
  • 販管費レート : 0.25

検査なしの場合
製造原価=材料費+外注費+製造費用
    =330+50+346=726円

販管費=製造原価×販管費レート
   =726×0.25=182円

販管費込み原価=製造原価+販管費
   =726+182=908円

受注金額が988円の場合、利益は
利益=受注金額-販管費込み原価
  =988-908=80円

図1 全数検査追加

図1 全数検査追加


取引先の要求で全数検査を追加し、検査時間は3分(0.05時間)でした。

検査は人が行い設備は使用しないため、アワーレートはアワーレート間(人)のみです。
(アワーレート間(人)は間接製造費用を含んだ人のアワーレートという意味です。詳細は【製造業の値上交渉】2. 我が社の人と設備のアワーレートはいくらなのだろうか?を参照願います。)

検査の現場はパート社員も多く、アワーレート間(人)は他の現場より低く、2,350円/時間でした。
 

全数検査を追加した場合の原価

 
全数検査を追加した場合、原価はいくら高くなるのでしょうか。

A1製品の検査費用は
検査費用=アワーレート間(人)×検査時間
    =2,350×0.05=118円

製造原価=材料費+外注費+製造費用+検査費用
    =330+50+346+118=844円

製造原価が増加したため、販管費も比例して増加します。

販管費=製造原価×販管費レート
   =844×0.25=211円

販管費込み原価=製造原価+販管費
       =844+211=1,055円

利益=受注金額-製造原価
  =988-1,055=▲67円

全数検査を追加したため販管費込み原価は908円から1,055円と147円増えました。

その結果、80円の利益が67円の赤字になりました。そこで増加した147円の値上げを交渉します。

ただしこの147円のうち118円は検査費用ですが、29円は販管費の増加です。この販管費の増加分の値上げは顧客に認めてもらうのは難しいかもしれません。その場合は、検査費用の増加分118円の値上げは認めてもらうようにします。
 

抜取検査の場合

 
抜取検査は費用の増加は少なくなります。

A1製品の検査を抜取検査に変更しました。

抜取検査の条件 100個から5個抜取り
(本来はJISの抜取検査に従って抜取り数は決めます。ただし現場では上記のように適当に抜取り数を決める場合も多くあります。)

製品1個当たりの検査費用は6円でした。

製造原価=材料費+外注費+製造費用+検査費用
    =330+50+346+6=732円

製造原価が増加したため、販管費も比例して増加します。

販管費=製造原価×販管費レート
   =732×0.25=183円

販管費込み原価=製造原価+販管費
       =732+183=915円

抜取検査を追加したため販管費込み原価は908円から915円と7円増えました。

その結果、80円の利益は73円に減少しました。

図2 抜取検査追加

図2 抜取検査追加


 

検査を減らすように交渉

 
全数権を追加した原因は、自社の製造工程で発生した傷のためでした。そのため価格を118円も上げてもらうのは容易ではありません。

そこで、検査で傷のある製品を除外するのでなく、製造工程を改良してできる限り傷を減らして全数検査から抜取検査に変えてもらいます。抜取検査であれば値上げしなくても利益は73円あります。

抜取検査は万全ではありません。しかしその傷は118円のコストをかけて完全に除外しなければならない傷でしょうか?それだけコストがかかっていることを取引先に伝えて、抜取検査への移行に理解を求めます。

それでも取引先は全数検査を要求することがあります。
 

検査にコストはかからないと思っている

 
理由は検査にコストはかからないと思っているからです。

顧客自身も自社の工場では検査費用を原価に入れていないことがあります。そうなると議論はかみ合いません。

本コラムで計算する原価は、決算書の数字を元に計算した「真実」です。

3分検査すれば実際に118円の費用が発生します。

その一方で、品質を高め良いものをつくるために「やったほうが良いこと」は、検査の他にもあります。時には取引先はそれを要求します。そしてその費用はつくる側(仕入先)が一方的に負担させられます。

そこで顧客が要求することを行えば原価がいくら上がるのかを具体的に金額を示して、「これだけコストが上がりますがそれでもやりますか」と交渉します。やったほうがよいが、コストをかけるまでもないことも案外多いのです。しかし金額を明示しなければ、いつの間にか「やること」になってしまいます。

具体的な金額を示したのに「値段を上げずにやってほしい」という要求は、これは国のガイドラインに抵触します。このガイドラインについては【製造業の値上げ交渉】19. 下請法や国のガイドラインを値上げ交渉に活かす方法を参照願います。
 

少なくとも検査費用を社内見積には入れる

 
一方、社内も検査にコストはかからないと思っていることがあります。それでは取引先から全数検査を要求されても問題だと思いません。

しかし検査を行えば費用は発生します。そこで、まず社内の原価計算に検査費用を入れます。見積にも検査費用を入れます。そうすれば「検査も原価」という意識が生まれます。原価がかかっていれば、現場は短時間に検査をするように努力します。

検査は慌てるとミスが起きるため、カイゼン活動の対象外になっている工場もあります。しかし検査も原価なのです。しかも検査は人が行うため、設備よりもアワーレート(人)が高いことが多く、原価の中で大きな割合を占めることもあります。
 

取引先と建設的な議論を

 
見積に検査費用を明記すれば、取引先もつくる側も検査費用を意識します。その上で「どうすれば検査費用を少なくできるか」お互い建設的な議論ができることが望ましいです。

検査以外にも運賃や梱包費用の上昇でどれだけ金額は変わるのでしょうか?

これについては【製造業の値上げ交渉9. 運賃が上昇すれば、いくら高くなるのだろうか?を参照願います。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

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人件費、電気代など工場の経費の上昇で原価がどれだけ上がるのかについて、

【製造業の値上げ交渉】4. 人件費が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?

【製造業の値上げ交渉】5. 電気代が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?

【製造業の値上げ交渉】8. 取引先から検査追加の要望があった。いくら高くなるのだろうか?

他にも運賃や梱包資材も高くなっています。これについてはどのように交渉すればよいのでしょうか?
 

出荷に伴う費用

 
製品を出荷する際、梱包資材の費用や運賃がかかることがあります。一般的には、これは販管費と考えられます。

では梱包費用はどのように計算するのでしょうか?
 

梱包費用

 
梱包費用は、梱包資材の費用と梱包にかかる人件費です。

図1 梱包費用


 

梱包資材の費用

 
梱包資材の費用を原価とするかどうかは、梱包資材の費用によって変わります。

製品価格に比べ梱包資材の費用が低ければ、原価には入れず間接製造費用とします。

製品価格が低く、製品のかさが大きければ、梱包資材の費用の比率が高くなります。

例えば、1個100円の製品を段ボールに6個入れて出荷する場合、段ボールの価格が120円の場合、製品1個当たりの段ボール費用は20円です。これは製品価格100円の20%にもなります。

図2 梱包資材の費用

あるいは1個1万円の製品でも、2メートル以上の大きな製品の場合、段ボールや保護シートの費用は高くなります。

今まで梱包資材の費用を計算していなければ、一度梱包資材の費用を計算して、原価に含めるのかどうか判断することをお薦めします。

梱包資材の費用を原価に含めた場合、梱包資材が値上げすれば、原価も上昇します。時には値上げ交渉をしなければなりません。

一方、梱包資材が段ボールのような使い捨てでなく、繰り返し使用できる通い箱の場合、生産開始時に必要な数の通い箱を購入します。その費用は金型や治具と同様にイニシャル費と考えます。
 

梱包作業の費用

 
人が梱包作業を行う場合、梱包費用が発生します。この費用は、作業時間が短かければ間接製造費用と考えます。

一方梱包作業に時間がかかる製品、例えば、大型の製品を傷がつかないように保護シートで保護して箱に入れる場合、梱包作業の時間がかかります。そこで作業時間とその現場のアワーレート(人)から梱包費用を計算して見積に加えます。

あるいは梱包作業の費用を見積に入れなければ、その分製造原価を多くします。そうしないと利益が少なくなってしまいます。

加工や組立のような作業は、少しでも作業時間を短くするようにカイゼンします。しかし梱包のような間接的な作業は、カイゼンが進んでいないことがあります。しかし梱包作業も費用は発生しています。梱包費用がかかる製品は、梱包資材の使用量や梱包時間を「見える化」して、カイゼンに取り組みます。
 

運賃

 
主に製品を顧客に運ぶ費用です。自社が運賃を負担する場合、

  • 製品の価格に比べて運賃が低ければ、運賃は販管費の中に含めます。
  • 製品の価格に比べて運賃が多ければ、製品毎に運賃を計算し見積に加えます。

梱包費用と同様に、製品価格が低くかさが大きい製品は、価格が高くても運賃も高くなります。そのような場合、運賃を一度計算し見積に入れるかどうか判断することをお薦めします。
 

運賃の計上

 
本コラムの原価計算は、先期の決算書の値からアワーレート、アワーレート間、販管費レートを計算します。

その際、運賃や梱包費用の計上は、経理や会計事務所の処理によって変わります。
 

運賃

 
製品を顧客に送る費用は、会計上は販管費です。一方原材料を工場に運ぶ費用や、工場間での物流費用は製造原価です。

図3 2種類の運賃

実際は同じ運送業者が顧客への輸送も工場間の物流も行っている場合、どちらも販管費(あるいは製造原価)に計上されていることもあります。(請求書が一緒になっているため)
 

梱包費用

 
厳密に言えば、梱包費用は、いつ梱包したかによって、製造原価か販管費かが変わります。

  1. 製品が完成しても梱包しないで社内の通い箱に保管し、出荷が決まった後、梱包して出荷する場合、梱包資材や梱包作業の費用は販管費です。
  2. 製品が完成した時点で梱包・箱詰めし、倉庫に保管する場合、梱包作業は製造作業です。梱包資材や梱包作業の費用は製造原価です。

図4 2種類の梱包費用

見積に梱包費用として入れる場合、1.の場合は注意が必要です。

1.で梱包資材の費用が工場の消耗品になっている場合、実際は販管費です。そこで販管費レートを計算する際は、梱包資材の費用は製造原価から販管費に移します。
 

具体的な計算例

 
架空のA社 A1製品の梱包費用と運賃を計算します。
(A社の詳細は【製造業の値上げ交渉】1. 個々の製品の原価はいくらなのだろうか?を参照願います。)
 

梱包費用

 
A1製品

  • 6個1箱
  • 段ボール : 120円
  • クッションシート : 12円(テープ等の他の資材は消耗品)
  • 梱包時間 : 10秒 (0.00278時間)
  • 梱包のアワーレート間(人) : 1,920円/時間

図5 梱包費用の例



梱包費用=梱包のアワーレート間(人)×梱包時間
    =1,920×0.00278=5円

梱包費用合計=22+5=27円
 

運賃

 
製品1個の運賃はトラック1台の費用と1台に積める量から計算します。

A社 A1製品

  • 1パレット : 250個
  • トラック1台 : 10パレット
  • トラック1台の費用 : 50,000円

図6  A1製品の運賃計算



1個の運賃は20円でした。
 

輸送条件が異なる場合

 
同じ製品でも輸送条件が異なる場合があります。
例えば

  • 条件1 量が多ければ1台チャーターできるが、少ない場合は混載便になる
  • 条件2 顧客の工場が2か所あり距離が異なる。H工場20km、K工場200km

毎回、運賃を計算して請求できれば問題ありません。それが難しい場合、それぞれの比率から平均運賃を計算します。

過去の実績から比率を調べます。
【納品場所】

  • H工場まで50km 60%
  • K工場まで300km 40%

【チャーター、混載比率】

  • チャーター便 80%
  • 混載便    20%

この比率から全体の比率を計算したものを表1に示します。

表1 工場と輸送方法の組合せ

  輸送方法 比率 全体比率
H工場 60% チャーター便 80% 48%
混載便 20% 12%
K工場 40% チャーター便 80% 32%
混載便 20% 8%
    合計 100%

チャーター便のH工場とK工場の運賃を図7に示します。

図7 チャーター便でのH工場とK工場の運賃



チャーター便の運賃は、H工場20円、K工場40円でした。

混載便でのA工場とB工場の運賃を図8に示します。

図8 混載便でのH工場とK工場の運賃


図8 混載便でのH工場とK工場の運賃

混載便の運賃は、H工場50円、K工場100円でした。

集計結果を表2に示します。

表2 工場と輸送方法の組合せ

  運賃 全体比率 運賃×比率
H工場 チャーター便 48% 20 48% 9.6
混載便 12% 50 12% 6
K工場 チャーター便 32% 40 32% 12.8
混載便 8% 100 8% 8
  合計(平均運賃) 36.4

その結果、平均運賃は36.4円でした。
 

販管費レートの変更

 
運賃、梱包費用を販管費とは別に見積に記載する場合、販管費から運賃、梱包費用を除外します。

例 A社
販管費 : 7,700万円
部品の輸送費の年間合計 : 2,000万円
運賃を除外した販管費 : 5,700万円

図9 販管費から運賃の場外


図9では、運賃2,000万円を販管費から除外し、販管費は5,700万円、販管費レートは25%→18%になりました。
 

A1製品の見積金額

 
運賃、梱包費用を別にした場合の、A1製品の見積金額を計算します。A1製品の製造原価は726円でした。これについては【製造業の値上げ交渉】3. 間接費用や販管費も原価に含まれるのだろうか?を参照願います。

  • 製造原価 : 726円
  • 販管費レート : 0.18

販管費=726×0.18=131円

  • 梱包費用 : 27円
  • 平均運賃 : 36円

見積金額=製造原価+販管費+梱包費用+運賃
    =726+131+27+36=920円
 

見積の記載例

 
梱包費用、運賃を見積に記載した例を図10に示します。

図10見積書の記載例

図10見積書の記載例

この見積書の金額は自社の正しい販管費、目標利益です。顧客によってはこの金額を認めない場合もあります。その場合は、数字の修正が必要なので注意してください。
(これについては【製造業の値上げ交渉】6. 値上金額は見積書にどのように入れればいいのだろうか?を参照願います。)
 

値上げ計算

 
このように見積書に運賃、梱包費用を別に記載すれば、運賃、梱包費用が値上げした場合の値上げ交渉が容易になります。

計算例

  • 運賃 : 30%上昇
  • 梱包資材 : 10%上昇

運賃=36×(1+0.3)=47円
梱包費用=22×(1+0.1)+5=29円
値上げ金額=47―36+29-27=13円

13円値上げすれば、運賃の上昇と梱包資材の上昇をカバーできます。

図10の見積書の記載例に値上げ金額も記載しました。

では、運賃や梱包費用が上昇した場合、値上げ交渉はどのようにすればいいのでしょうか?

これについては【製造業の値上げ交渉】10. 値上げ交渉は初めて、どう進めていけばよいのだろうか?を参照願います。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

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投稿 【製造業の値上げ交渉】10. 値上げ交渉は初めて、どう進めていけばよいのだろうか?原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク に最初に表示されました。

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いろいろな費用が高くなっています。

これによりどのくらい原価が上昇するのか?

人件費、電気代などの上昇で原価がどれだけ上がるのか・

これについて、

【製造業の値上げ交渉】4. 人件費が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?

【製造業の値上げ交渉】5. 電気代が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?

【製造業の値上げ交渉】8. 取引先から検査追加の要望があった。いくら高くなるのだろうか?

【製造業の値上げ交渉】9. 運賃が上昇すれば、いくら高くなるのだろうか?

で説明しました。

必要な値上げ金額が分かれば値上げ交渉しなければなりません。しかし「これまでコストダウンの話ばかりで、値上げの話はしたことがない」といった方もいます。デフレが続いた日本は、製品の価格を上げられないため、「いかにしてコストを下げるか」一辺倒でした。値上げは考えられないという時代が長く続きました。

では、値上げ交渉はどのようにすればいいのでしょうか。
 

値上げ交渉の手順

 
一般的な値上げ交渉の進め方を以下に示します。

  1. 事前準備① 国が発行する資料の理解
  2. 事前準備② 現状把握
  3. 方針決定 交渉する製品、値上げ金額、妥協点を決定
  4. 事前連絡 取引先に値上げが必要なことを伝える
  5. 値上げ資料作成 製品毎の値上げ金額、その明細、根拠の詳しい資料の作成
  6. 交渉準備 説明の練習、取引先からの要求に対する反論の準備
  7. 交渉
  8. 交渉後のフォロー

図1 値上げ交渉の進め方

図1 値上げ交渉の進め方


これは一般的な進め方の例です。取引先との関係によって進め方は変わるので注意してください。
 

1.事前準備①

 
まず値上げ交渉に必要な知識をインプットします。国が提供する以下の資料を読んで、交渉の基本や発注先が守るべき内容を理解します。

  1. 価格交渉ハンドブック
  2. 下請適正取引等推進のためのガイドライン (19のガイドラインのうち、自社に関係するもの)
  3. 下請代金支払遅延防止法(下請法)

この国の支援策の詳細は【製造業の値上げ交渉】19. 下請法や国のガイドラインを値上げ交渉に活かす方法を参照願います。

国は中小企業の価格転嫁(値上げ)に対し様々な支援をしています。中小企業庁は発注先企業の価格転嫁の状況を調べ、価格転嫁に消極的な企業は実名を公表しています。もし下請法に抵触すれば、公正取引委員会がその会社に調査に入ることもあります。

値上げ交渉の中でガイドラインや下請法に抵触するようなことがあれば、中小企業庁や公正取引委員会に報告することをお薦めします。こうした行動の積み重ねが、発注先企業の姿勢を変え、公正かつ適正な取引が広まることにつながります。
 

2.事前準備②

 
値上げ交渉の前に、どの製品をどれくらい値上げしなければならないか調べます。そのためには製品の適正価格を知る必要があります。これは製造原価、販管費をカバーし、必要な利益が得られる金額です。この金額で受注できれば、毎期の利益が確保できます。

図2に架空の企業A社 A1製品の製造原価と販管費、目標利益を示します。

図2 A1製品の製造原価と販管費、目標利益

主要な製品だけで良いので、受注価格と利益(赤字額)を調べます。それぞれの製品の年間受注量から、製品毎の年間売上と年間利益を計算します。調べると思っていたより違っていることがあります。例えば「大きな売上を占めていた大手企業からの受注は赤字だった。意外と売上の低い中小企業の受注は利益が大きかった」。

図3にA社 A1製品とA2製品の製造原価、販管費と受注金額、年間受注量を示します。

図3 製造原価、販管費と受注金額、年間受注量


A1製品は受注金額820円で88円の赤字です。年間生産量は2万個あるため、年間での赤字額の合計は176万円あります。

対してA2製品は受注金額1,800円で170円の赤字です。年間生産量は1,000個のため、年間での赤字額の合計は17万円です。

この場合、会社全体の利益を改善するにはA1製品の値上げの方が効果が高いです。
 

3.方針決定

 
どの製品をどれくらい値上げするのか、値上げの方針を立てます。例えば、

  1. 初めて値上げ交渉する場合、失敗しても経営に影響の少ない売上の低い製品から行う。
  2. 赤字が累積し早急な改善が必要な場合、年間での赤字合計の大きな製品から取り組む。

次に値上げ金額を決めます。値上げの目標は必要な利益が出る金額です。

しかし必要な利益の出る金額が現在の受注金額から大きく乖離している場合、無理にその金額を要求すれば失注する可能性があります。

その場合は値上金額は失注しない程度の金額に抑えます。ただし必要な利益が出る金額を適正価格として顧客に示し、「そこまでの値上げはお願いできないので、今回はここまで上げさせてください」とします。

できれば値上げ交渉を行う製品をリストアップして、値上げがうまくいけば年間の利益がどれだけ改善されるかシミュレーションします。そうすれば「どれだけ頑張れば、会社の業績がどのように変わるのか」が見えてきます。
 

4.事前連絡

 
ある日突然、値上げした見積を持って来て「値上げをお願いします」と言われれば取引先もびっくりします。そこで事前に取引先に

  • ○○が上がって、どうにも採算が合わない
  • 現状の価格を維持するためにいろいろと努力したがどうにもならない
  • こうなれば値上げをお願いせざるを得ない
  • 対象製品と値上げ金額を精査しているので、〇日頃には資料を持参する

と伝えます。

取引先もこの話を受けて、上司に報告したり、課内で値上げ情報を共有します。仕入先が値上げすれば取引先の原価も上がります。それに応じて取引先も値上げや自社の取引先との値上げ交渉を考えなければなりません。
 

5.値上げ資料作成

 
取引先に提出する値上げ資料を作成します。どのくらい詳細な資料が必要かは取引先によります。最近は「何が原因で、何パーセント原価が上昇したのか」詳細な資料を求められることもあります。取引先(担当者)はその資料を精査し、値上げ金額が適正かどうかを上司や関係部署に説明しなければならないためです。

重要なのは「値上げ資料は適切な原価が計算され、値上げの根拠も明確になっている」ことです。そして取引先に「この金額が適正だ」と思ってもらうことです。そのために値上げ資料はできるだけ分かりやすく具体的な数値で説明します。

この値上げ資料の作成は【製造業の値上げ交渉】6. 値上金額は見積書にどのように入れればいいのだろうか?を参照願います。

図4 値上げ資料の例


おそらくこういった状況では他の仕入先も値上げを要請しているかもしれません。

その結果、取引先は多くの値上げ案件を精査しなければなりません。そのため値上げ資料は取引先の担当者が容易に理解ができて、そのまま上司や他部署に回すことができるものにします。

上司や他部署(例えば原価管理部門)は不明な点があれば、担当者に聞きます。担当者が分からなければ、仕入先に聞かなければなりません。こういったやり取りが複数の仕入先で発生すれば、担当者はこれに忙殺されます。そしてこういった案件は後回しになってしまいます。
 

6.交渉準備

 
交渉本番の前に「値上げ資料をどのように取引先に説明し、値上げを納得してもらうのか」プランを立てます。さらに取引先から「どのような反論や要求が出るか」を想定し、それに対する回答を考えておきます。

できれば社内で誰かに取引先役になってもらい、実際の交渉のロールプレイ(リハーサル)を行います。取引先の担当者は日々多くの仕入先と交渉を行っています。交渉の専門家から研修を受けている場合もあります。そういった相手と交渉するのですから、こちらが交渉に不慣れな場合、最初から交渉力に差があります。それを少しでも埋めるためにロールプレイは有効です。

中には取引先の事情により価格が上げられない製品もあります。その場合、代案としてコストダウン方法があれば用意します。

他にも取引先が本当に転注するかどうか、事前の情報収集も重要です。

例えばもっと規模の小さい〇社が低い価格で受注することもあります。値上げをお願いすると「値上げするなら〇社に転注する」と言われます。実際は規模の小さな〇社は、品質管理、納期対応や安定供給に問題があるかもしれません。しかしそのようなことは取引先は言いません。そこで交渉を有利にするためには、競合も含めた情報を事前に収集しておきます。今では企業の住所は簡単にわかります。競合の〇社を外から見るだけでもいろいろなことが分かります。

また交渉結果を予測し妥結点を考えておくことも重要です。具体的には
(1) 100%認められた
・適正価格で値上げを要求 → 大成功
・適正価格より低い金額で値上げ → 次回値上げの予告

(2) 認められたが100%でない 
・妥結する
・交渉を継続する
・断る

(3) 全く認められなかった
・妥結する
・交渉を継続する
・断る
     
取引先の対応により、どうするのか方針を予め決めておけば、交渉をスムーズに行うことができます。これは製品によって変わることもあります。


図5 A1製品の値上げ交渉の妥結点


 

7.交渉

 
以上の準備を行い交渉本番に臨みます。

交渉では、相手の立場を尊重した上で「適正価格」を主張して、値上げに理解を求めます。最後に「○○までに回答をいただけないでしょうか」と期限を切ります。

期限を切っておけば期限を過ぎて回答がなければ催促できます。もしそれでも回答を引き延ばすようであれば、これは国が定めたガイドラインに抵触しています。
 

8.交渉後のフォロー

 
値上げを認めてもらえた場合も再度訪問してお礼を言います。

値上げが認められず受注を断る場合も、再度訪問し、

  • 取引先の希望価格とどれだけ乖離があったのか、
  • どこに会社に転注したのか、
  • そこは価格や品質に問題はないのか、

といった情報を収集します。

その上で「今後は取引先の希望価格に沿えるようにコストダウンに努力すること」を伝え、関係が悪化しないようにします。
 

適正価格で受注できる顧客かどうか

 
取引先の目的は目標価格での部品・資材の調達です。

現実には様々なものの値段が上がっているので、目標価格の調達は難しくなっているかもしれません。本来は、目標コストを実現するためには図面や仕様から見直して、より低コストでつくれるようにしなければなりません。

しかし取引先が図面や仕様を変えずに目標価格の調達に固執すれば、その価格は自社の適正価格から乖離します。その価格を受け入れれば経営が立ち行かなくなります。

一方間接費や販管費が上昇し、自社が高コストになっている場合もあります。これについては【製造業の値上げ交渉】7. この製品、いくらが正しいのだろうか?を参照願います。

値上げ交渉の結果、適正価格での受注が困難な場合、

  • 間接費、販管費の削減など自社の費用構造を変えて顧客の希望価格で受注できるようにする
  • 今の顧客との取引を減らして、自社の適正価格で受注できる他の顧客を開拓する

これらの取組が必要です。
 

交渉の注意点

利益が出ないため困っているため値上げ交渉を行うわけです。ですから経営者が取引先と交渉に行くときは、会社のライトバンがお勧めです。取引先は意外なところを見ていることがあるからです。
 

このように値上げ交渉の手順を理解して、社員(幹部)に値上げ交渉を指示しました。ところがなかなか進みません。なぜでしょうか?

これについては【製造業の値上げ交渉】】11. なぜ社員に任せたら値上げ交渉が進まないのだろうか?を参照願います。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

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投稿 【製造業の値上げ交渉】13. なぜ取引先はアワーレートが高いというのだろうか?原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク に最初に表示されました。

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値上げ交渉では値上げの根拠を求められることがあります。

これについて【製造業の値上げ交渉】12. 取引先から値上の根拠を求められた。どうすればいいのだろうか?を参照願います。
 

そこで値上げの根拠の資料を持って行くと、資料を見て「アワーレートが高い」と言われることがあります。

このアワーレートは先期の費用に基づいて適切に計算したアワーレートです。

(自社のアワーレートの計算方法は【製造業の値上げ交渉】2. 我が社の人と設備のアワーレートはいくらなのだろうか?を参照願います。)
 

なぜ取引先はアワーレートが高いと言うのでしょうか?

このアワーレートについて取引先が誤解している可能性があります。

それは

  1. アワーレートは間接費を含まない
  2. 稼動率は100%
  3. 減価償却が終われば設備の費用はゼロ

これについて説明します。
 

1.アワーレートは間接費を含まないと思っている

 
これはアワーレートが「人や設備で直接発生した年間費用を人や設備の年間時間で割ったもの」と取引先が思っている場合です。

本コラムではアワーレートは「各現場の人や設備の直接製造費用に、分配した間接製造費用を加えたものを人や設備の年間時間で割ったアワーレート間」です。

このアワーレート間には、間接製造費用も含まれています。

 

具体的な計算例 アワーレート(人)

 
架空のモデル企業A社の例で説明します。

(A社の詳細は【製造業の値上げ交渉】1. 個々の製品の原価はいくらなのだろうか?を参照願います。)

A社 NC旋盤の現場
(アワーレートの計算方法は【製造業の値上げ交渉】2. 我が社の人と設備のアワーレートはいくらなのだろうか?で説明しました。)
 

アワーレート(人)の計算

 
直接製造費用
4人の労務費合計 1,672万円

 

間接製造費用を含んだアワーレート間(人)の計算

 
NC旋盤の現場の人の間接製造費用の分配は、544万円でした。従ってアワーレート間(人)は、 

3,150円/時間で、間接製造費用を含めたアワーレート間(人)は、775円/時間増加しました。

注記)
本コラムでは、数字をわかりやすくするためにアワーレートは一桁目を四捨五入しています。実際に計算する際は正確な値を使用してください。

図2 NC旋盤の現場の人の直接製造費用と間接製造費用


 

具体的な計算例 アワーレート(設備)

 
NC旋盤の現場の設備の費用は

  • 設備償却費 : 100万円/台
  • 電気代 : 23.2万円/台
  • 設備(NC旋盤) : 計4台


 

間接製造費用を含んだアワーレート間(設備)の計算

 
NC旋盤の現場の設備の間接製造費用の分配は、544万円でした。従ってアワーレート間(設備)は、  

1,470円/時間で、間接製造費用を含めたアワーレート間(設備)は、770円/時間増加しました。

図2 NC旋盤の現場の設備の直接製造費用と間接製造費用


 

人と設備が同時に作業する場合

 
NC旋盤の現場は人と設備が同時に作業するためアワーレートは、アワーレート(人)とアワーレート(設備)の合計になります。

直接製造費用のみアワーレート(人+設備)は

アワーレート(人+設備)=アワーレート(人)+アワーレート(設備)
           =2,375+700=3,075円/時間

間接製造費用を含むアワーレート間(人+設備)は、

アワーレート間(人+設備)=アワーレート間(人)+アワーレート間(設備)
            =3,150+1,470=4,620円/時間 (+1,545円/時間)

間接製造費用を含むことで、アワーレート間(人+設備)は1,545円/時間 増加しました。
 

取引先は何を現場のアワーレートとしているか

 
取引先に原価の知識があり、自社の工場のアワーレートが直接製造費用のみのアワーレートの場合、アワーレートを計算する基準が違います。そのため見積書に書かれたアワーレートが高すぎると言います。これは直接製造費用のみで原価を考えている可能性があります。

この時、どちらのアワーレートの計算方法が正しいのか、議論をしても水掛け論になってしまいます。
 

取引先が直接製造費用のみでアワーレートを計算している場合

 
その場合、直接製造費用のみのアワーレートで製造費用を計算に、別に間接製造費用を加えて原価とします。
 

直接製造費用と間接製造費用の比率を計算

 
そこで各現場の直接製造費用のみのアワーレートと、間接製造費用を含んだアワーレートの比率から、直接製造費用と間接製造費用の比率を計算します。

例えばA社 NC旋盤の現場の例を以下に示します。

  • 直接製造費用のみのアワーレート(人+設備) : 3,075円/時間
  • 間接製造費用を含んだアワーレート間(人+設備) : 4,620円/時間

比率は1.50でした。
 

直接製造費用を計算

 
A社 NC旋盤の現場のアワーレート(人+設備)は3,075円/時間

A1製品の製造時間 : 0.075時間

直接製造費用=直接製造費用のみのアワーレート(人+設備)×製造時間
      =3,075×0.075=230.6円

直接製造費用のみで計算したA1製品の製造費用は230.6円でした。
 

間接製造費用を含んだ製造費用

 
間接製造費用を含んだ製造費用は、直接製造費用にこの比率をかけて計算します。

間接製造費用を含んだ製造費用=直接製造費用×比率
              =230.6×1.5=345.9≒346円

直接製造費用のみのアワーレートは3,075円/時間です。A1製品の製造費用は230.6円でした。しかしこれには間接製造費用が入っていません。

間接製造費用は、先の計算から直接製造費用の50%なので115.4円でした。その結果、製造費用は直接製造費用と間接製造費用を加えた346円でした。このように説明して製造費用が正しいことを理解してもらいます。

図3 直接製造費用のみのアワーレートで計算した場合


 

2.稼働率が入っていない

 
もうひとつの可能性は、顧客がアワーレートを計算する際に稼働率を入れていないことです。実際の現場の1日は図5のようになっています。

図5 ある作業者の1日

1日現場にいる作業者でもその中で朝礼、会議といった付加価値を生んでいない時間があります。この時間も人件費は発生しています。この費用もアワーレートに入れなければ、アワーレートが低すぎてしまいます。

そこで本コラムではアワーレートを計算する際に稼働率を分母にかけます。

この稼働率は、年間就業時間に対し付加価値を生んでいる時間(稼働時間)の比率です。

A社の例では、稼働率を0.8としました。もし顧客が稼働率100%でアワーレートを計算していれば、その分アワーレートは低くなります。

A社 NC旋盤の現場では

直接作業者の稼働時間合計=2,200×4×0.8(稼働率)=7,040時間

稼動率100%では

直接作業者の年間時間合計=2,200×4×1.0=8,800時間

設備の年間時間も同じでした。


アワーレート(人+設備)=アワーレート間(人)+アワーレート間(設備)
           =2,520+1,180=3,700円/時間 (▲920円/時間)

稼動率80%では4,620円/時間だったので、稼動率100%にすることで920円/時間低くなりました。

図5 稼働率を入れた場合と入れない場合の人のアワーレート


図56 稼働率を入れた場合と入れない場合の設備のアワーレート


 

稼働率100%はありえない

 
稼動率は工場によりさまざまです。大量生産の工場は常に人や設備が稼働するようにして稼働率100%を目指します。それでも材料の供給が間に合わなかったり後工程が遅れたりして稼働率は100%にはなりません。多品種少量生産では、製品の切替えが頻繁に発生し、稼働率は大量生産の工場より低下します。

一方取引先が自社の工場のアワーレートを稼働率100%で計算することがあります。しかし生産していない時間も費用は発生しています。その分も見積に含めなければ赤字になってしまいます。

自社の工場の稼働率が現実に80%ならば、稼働率80%で計算した原価が「適正価格」です。
 

3.減価償却が終わっている

 
法定耐用年数を過ぎた設備の減価償却費はゼロです。そうなると設備の費用はランニングコストのみになってしまいます。

しかし本コラムではアワーレート(設備)に使用する設備の償却費は、将来の更新を考えて「実際の償却費 (購入金額を本当の耐用年数で割った金額)」を使用します。

図7 設備を更新すれば新たな減価償却が発生

A社 NC旋盤の現場の場合、購入金額1,500万円、本当の耐用年数15年のため、実際の償却費は100万円でした。

NC旋盤の現場の4台の設備が、すべて減価償却が終わっている場合、設備の費用はランニングコスト23.2万円のみです。その場合、アワーレート間(設備)は以下のようになります。

実際の償却費から計算したアワーレート間(設備)は1,470円/時間でした。決算書の減価償却費でアワーレート間(設備)を計算すれば、570円/時間も低くなりました。

これについては発注側、受注側どちらも誤解していることがが多いです。

しかし高額の設備を使用する工場では、設備の更新に多額の資金が必要です。更新の時点で「必要な資金が会社に内部留保されている」、「新たに借入できるだけの十分な自己資本とキャッシュフロー」のいずれかが必要です。減価償却が終わった設備でも更新まで考えれば、費用は決してゼロではないのです。
 

アワーレートは考え方によって違う

 
このようにアワーレートは計算する条件によって値が大きく違います。アワーレートは、どの条件で計算するのかで大きく変わります。

本コラムで述べた「稼働率を入れる」、「実際の償却費を使って計算する」は正しいのですが、これを納得してもらうには「なぜそうなのか」理由を理解してもらう必要があります。これはなかなか大変です。

取引先が納得しなければ、取引先が考える条件に合わせてアワーレートを変えます。

例えば、稼働率100%で稼働率80%と同じアワーレートになるように年間費用や時間を調整します。そして見積金額は変えないようにします。
 

原価は真実

 
本コラムで述べた原価は、決算書の数字を元にした真実です。
(ただし算出条件が変われば値も変わるため、唯一無二ではありません。)

A社 A1製品の製造原価は726円、販管費182円、販管費込み原価は908円です。これだけの費用が発生していることを前提に、必要な利益が得られるように交渉します。

ただし受注が少なければ、固定費の回収を優先して赤字でも受注することもあります。それでもA1製品は販管費も含めて908円の費用が発生していることは変わりません。

他にもアワーレート以外に販管費や利益が高いと言われることがあります。

販管費や利益が高いと言われる原因について【製造業の値上げ交渉】14. なぜ取引先は販管費が高い、利益が多いと言うのだろうか?を参照願います。
 
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

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投稿 【製造業の値上げ交渉】14. なぜ取引先は販管費が高い、利益が多いと言うのだろうか?原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク に最初に表示されました。

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取引先から見積書のアワーレートが高いと言われる原因について【【製造業の値上げ交渉13. なぜ取引先はアワーレートが高いというのだろうか?で述べました。

同様に取引先から見積書の「販管費(管理費)が高い」と言われることがあります。「管理費は5%」と取引先は言います。しかし販管費が5%では赤字になってしまいます。

どうすればいいのでしょうか?
 

販管費は管理費でない

 
このようなことはよく起きます。この販管費については誤解があります。

それは販管費は管理費ではないということです。これはどういうことでしょうか?
 

販管費とは?

 
販管費は、販売費及び一般管理費の略です。販管費は会社で発生する費用の中で、製造に直接関係しない費用です。これは販売費と一般管理に分けられます。

販売費 : 商品や製品を販売するための費用

一般管理費 : 会社全般の業務の管理活動にかかる費用

具体的には、

販売費は、営業の人件費や社用車の費用、顧客への発送運賃や広告宣伝費などです。

一般管理費は事務、経理などの人件費、役員報酬や旅費交通費などです。
 

工場には不可欠な費用

 
販管費は製造に直接関係しない費用ですが、販管費がなくて工場は運営できるでしょうか?

事務や経理の仕事の大半は工場で発生する費用の処理です。製造に直接関係しないといっても彼らがいなくては工場は成り立ちません。販管費と製造原価は、会計上の扱いが異なるため財務会計では分けて計上します。しかしどちらも製造には不可欠な費用です。

近年は事務や経理などが増えて、中小企業の販管費も増加しています。平成21年度発行「中小企業実態調査に基づく経営・原価指標」によれば中小企業 製造業の販管費の平均は18.1%です。

表1 中小企業の販管費と利益率    単位 : %

  製造業平均 卸売業平均 小売業平均
販管費 18.1 14.2 29.7
利益率 3.3 1.4 0.4

出典 平成21年度発行「中小企業実態調査に基づく経営・原価指標」


販管費か製造原価かは、会計事務所の裁量によって変わる

 
発生した費用を「製造原価に計上するのか」、「販管費に計上するのか」は、経理や会計事務所の判断でも変わります。販管費と思われるものが製造原価に計上されたり、製造原価と思われるものが販管費に計上されるのは珍しくありません。

図1 製造原価と販管費


 

管理費とは?

 
一方見積書では、販管費でなく「管理費」になっていることがあります。

管理費は、建設関係では工事管理費と呼ばれ、工事の進捗管理や資材、業者の手配などの費用です。一般的には商品やサービスの発注、納期管理、納品に関する費用です。商品やサービスの価格の一定割合を管理費として、商品やサービスの価格に上乗せします。

製造業も外注に依頼したものを顧客にそのまま販売する場合、仕入金額の〇%を管理費として見積に記載します。これは外注への発注、納期管理、検品などの費用です。これは商社でいえば口銭に相当します。
 

製造業の販管費は原価の一部

 
商社の場合、年間の口銭合計が販管費を上回れば、利益が出ます。口銭の比率が少ない儲からない商品でもたくさん売って売上合計が大きければ、口銭の合計も大きくなり利益が出ます。つまり薄利多売でも売上が大きければ利益が出るのです。

一方製造業の場合、生産量は設備や人員で決まってしまいます。生産量を急には増やせないため、受注が急に増えても対応できません。商社のように薄利多売でも売上を増やして利益を出すことはできません。そのため個々の受注で「販管費も含めて利益が出る」ようにしなければなりません。

そう考えると工場の販管費は商社の口銭とは違い、原価の一部です。この管理費と販管費の捉え方の違いが、取引先が低い管理費を求める原因のひとつです。

もうひとつ取引先が管理費を低く考える原因があります。
 

取引先は本当の原価をわかっていない可能性

 
それは取引先が本当の原価をわかっていない可能性があることです。

例えば取引先が自社の工場で製造した部品の原価を計算する際は、原価は工場の製造原価とその工場の販管費の合計です。
 

社内売買の価格と社外販売の価格

 
図2は、A事業部のA1工場で製造した部品を、B事業部のB1工場が使用した場合です。B事業部はこの部品をA事業部から購入します。その価格は、A1工場の製造原価とA1工場の販管費(又は管理費)の合計です。

図2 工場原価と本社費

しかしこの価格は社内売買の価格です。この部品を社外に販売する場合は、A1工場の原価に本社部門の費用を加えなければなりません。なぜなら本社はお金を稼いでいないため、本社の費用は各事業部が分担しなければならないからです。

この部品を社外に販売したことがなければ、A1工場の人は社外に販売する価格を知りません。そのため社内売買の価格を部品の価格だと思ってしまいます。しかし、この部品を外注に発注すれば、その見積には外注の販管費や利益が含まれます。これは自社でいえば本社負担費用も含んだ価格です。

他にも「利益が高い」と言われることもあります。
 

利益は儲けでない

 
利益率8%で見積をつくったところ、取引先に「利益が高すぎる!」と言われました。しかしこの会社は8%の利益が必要なのです。なぜ高すぎると言うのでしょうか?

実は利益は「儲け」でないのです。
 

利益の本当の姿

 
決算書の売上から製造原価と販管費を引いたものが営業利益です。
(正確には在庫の増減で変わりますが、説明を簡単にするためにこれは省略します。)

営業利益から、利息などの営業外費用を除き、法人税を支払った残りが税引き後の利益です。

一方、製造原価や販管費の中の減価償却費は、実際には現金の支出のない費用です。従ってその分お金が残ります。そこで税引き後の利益に減価償却費を加えた金額が会社に残るお金です。

これを図3に示します。

図3 営業利益と実際のお金の動き

この会社は

売上高2億円、営業利益は1,600万円、

売上高に対する利益率は8%、

利益は多く見えます。

営業利益から、借入金の利息100万円、法人税600万円を引いた税引後の利益は、900万円でした。

さらに減価償却費が500万円あるので、残るお金は1,400万円です。

この会社は借入金があり年間の返済額は1,000万円です。

その結果、毎期400万円のお金が残り、これが設備の更新の原資になります。

この400万円を毎年内部留保して、設備の更新時期が来ればこのお金を使います。あるいは借入して設備を更新する場合、この400万円が新たな借入金の返済原資になります。このように見ていくと、この会社の営業利益1,600万円は決して多くないことが分かります。

もし赤字受注が続き利益がなければ、設備の更新時期が来ても更新できません。近年、製造業の廃業の原因に、経営者の高齢化の他に、利益、内部留保が少なく設備の更新を断念することがあります。特に高額の設備を使用する場合、内部留保が少なく利益もなければ新たな借入もできません。このような理由から、利益が少ない、あるいは赤字であれば、利益が出る金額に値上げしなければなりません。

ところが値上げ交渉で「値上げ金額が高すぎる!」と言われることがあります。これはどうしたらよいでしょうか?

これについては【製造業の値上げ交渉】15. いくら値上げするのが適切だろうか?を参照願います。
 
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

中小企業でもできる簡単な原価計算のやり方

 
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書籍「中小製造業の『製造原価と見積価格への疑問』にすべて答えます!」日刊工業新聞社

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セミナー

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経営コラム ものづくりの未来と経営

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投稿 【製造業の値上げ交渉】14. なぜ取引先は販管費が高い、利益が多いと言うのだろうか?原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク に最初に表示されました。

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投稿 【製造業の値上げ交渉】15. いくら値上げするのが適切だろうか?原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク に最初に表示されました。

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原価を見直したら大幅な赤字だったため、値上げ交渉を行いました。

取引先から「値上げは検討するが、この金額は高すぎる」と言われました。どうすればいいでしょうか?
 

これまで値上げできなかったことが原因

 
こうなった原因は、これまで様々な費用が少しずつ上がっていたのに、それが価格に反映できなかったためです。

その結果、「自社の現在の見積金額」と受注金額との乖離が大きくなってしまいました。しかもこれまで「コストダウンはあっても値上げはあり得ない」という状況だったため値上げができませんでした。その結果、値上げ金額が大きくなってしまいました。

例えば、架空の企業A社 A1製品は

受注金額が860円、販管費込み原価が908円のため、48円の赤字でした。

(A社の詳細は【製造業の値上げ交渉】1. 個々の製品の原価はいくらなのだろうか?を参照願います。)

目標利益を得るには、価格を988円に

つまり128円の値上げが必要でした。これを図1に示します。

図1 A社 A1製品の値上げ金額

図1 A社 A1製品の値上げ金額

実はA1製品は、〇年前の見積は860円でした。

販管費込み原価は800円、60円の利益でした。

しかしその後、材料費、外注費、人件費、工場の経費が上昇し、

現在の販管費込み原価は908円、860円の受注金額では48円の赤字になってしまいました。
 

適切な値上げ金額とは?

 
一方、値上げは取引先の立場も考えなければなりません。取引先は仕入部品の価格が上昇すれば、それを製品の価格に転嫁しなければならないからです。

取引先が自社製品を販売するメーカーの場合、値上げすれば競合との競争に負けて市場シェアを失うかもしれません。

取引先も製品をメーカーに納める下請けだった場合、仕入部品が値上げした分、今度は取引先が値上げ交渉しなければなりません。これはとても大変なことです。

経済産業省の「自動車産業適正取引ガイドライン」には、ティア1など下請け部品メーカー(といっても大企業)が取引先の自動車メーカーに対し、

「仕入価格の上昇を価格転嫁ができない」、

「値上げすると次のサプライヤー選定に影響すると言われた」という事例が載っています。

こういった背景があるため、取引先が大幅な値上げを受け入れるのは難しいのです。

《私の経験》
(機械メーカーで、設計、品質保証に24年間従事しました。)
 私の経験でも仕入部品の値上げはある程度は許容しましたが、大幅に上がれば他の仕入先を探しました。大幅な値上げは製品の原価を大きく上げるからです。
 その場合、まず今の仕入先に対し「以前と同じ価格でつくるためにはどうしたらよいか」を協議しました。それがうまくいかなければ他の仕入先を探しました。それでも値段が高くなるような場合は、以前の価格でできないか設計変更を検討しました。
 しかし設計変更は品質リスクを伴います。仕入先を変えて同じ価格でできるのであれば、そうしました。

失注のリスク

 
つまり大幅に値上げすれば、失注するリスクがあります。また大幅な値上げは取引先との関係が悪化し、その後の取引にも影響します。

どうしたらよいでしょうか?
 

適正価格を示して交渉

 
このような場合、値上げは取引先が受け入れられる(と思われる)金額にとどめておく必要があります。

ただし、本当に必要な金額は取引先に提示します。そして「原価はこれだけかかっているため、本当はここまで値上げしたい。しかし大幅な値上げは難しいことは理解しているので、これだけは上げてほしい」と交渉します。

例えばA社では、

A1製品をいきなり128円値上げするのが困難であれば、取引先に

「当社の適正価格は988円ですが、いきなりその価格にするのは難しいでしょうから、せめて80円値上げして940円にしてもらえませんか?」

と交渉します。

940円であれば、赤字は解消し32円の利益になります。目標利益ではありませんが、赤字で受注するよりはましです。
(実際の金額は自社と取引先との関係で変わります。この数字はあくまで参考値です。)
 

コストダウン提案も入れる

 
できれば

「できる限り値上げ金額を低くするようにコストダウンのアイデアを考えるから図面や仕様の見直しに協力してほしい」、

論点をコストダウン協議に変えます。

それには日頃から図面指示や形状に注意して、コストダウンできる箇所を探します。

例えばA1製品では、コストダウンを検討した結果、「公差を緩和し、検査基準を変える」ことで、製造時間を短くできることが分かりました。その結果
人件費 : マイナス20円
製造経費 : マイナス3円
が見込まれました。

これにより値上げを60円、値上げ後の金額920円に抑えても、40円の利益が出ます。これを図2に示します。

図2 コストダウン提案も入れた場合


 

他社がやらない製品

 
一方、何らかの理由があって他社がやらない製品であれば、取引先も値上げを受け入れざるを得なくなります。その場合は、取引先が受け入れる値上げ金額はもう少し高くなります。ただし値上げ金額があまり高いと、取引先は他にできるところを探し始めますので、さじ加減は必要です。ただし他社がやらないものなのかどうかは、日頃から情報を集めていないとわかりません。

「なぜこれは当社に発注するのですか?」

「この図面の○○はとても難しいのですが、他にやるところはないのですか?」

取引先の担当者と日々の会話の中で「他に競合はあるのか」、「競合があれば価格や品質面ではどうか」などさりげなく質問して情報を収集します。
 

失注しても影響の少ない製品

 
あるいは受注が潤沢にあり、例えこの製品を失注しても業績への影響が小さければ、値上げ幅を大きくすることもできます。値上げ交渉は失注のリスクがゼロではありません。受注が少なく、ひとつ失注しても業績に大きく影響すれば、値上げ交渉は消極的になります。つまり営業活動がどれだけ成果を上げていて、受注がどれだけあるかが、値上げ交渉に影響します。

一方ずっと前に受注して、同じ価格でつくり続けている製品もあります。例えば15年前に受注して、受注価格は15年間変わっていない製品です。

これはどうすればよいでしょうか?

これについては【製造業の値上げ交渉】16. 15年前の製品、赤字がひどくやめたいを参照願います。
 
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

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経営コラム ものづくりの未来と経営

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