実務者のための原価計算と見積 | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 数人の会社から使える原価計算システム「利益まっくす」 Tue, 30 Sep 2025 07:18:45 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.7.4 https://ilink-corp.co.jp/wpst/wp-content/uploads/2021/04/riekimax_logo.png 実務者のための原価計算と見積 | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 32 32 経営コラム 製造業の原価計算と見積 https://ilink-corp.co.jp/10604.html https://ilink-corp.co.jp/10604.html#respond Mon, 29 Jan 2024 08:34:44 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=10604 工場の管理者、原価管理、経理など実務に携わる方たちが感じる原価計算・見積の疑問について、実務者の視点でわかりやすく説明しました。

原価の基本的な考え方、アワーレート計算などをわかりやすく説明した【原価計算と見積の基礎】と、実際に発生する費用の集計や原価への組み込みを詳細に解説した【実務における原価の疑問】があります。

原価計算と見積の基礎

 

個々の製品の原価の計算方法、人と設備のアワーレートの計算方法、間接費や販管費の計算方法など基本的な計算をわかりやすく書きました。


【原価計算と見積の基礎】1. なぜ原価が必要なのか?

様々な費用が上昇する今日、原価が分からないと値上交渉ができません。他にも原価が分からないことで起きる問題は…


【原価計算と見積の基礎】2. 製造原価の計算方法(1)

製造原価を計算する費用は決算書の値を元にします。決算書には工場で発生する様々な費用が計上されています。例えば…


【原価計算と見積の基礎】3. 製造原価の計算方法(2)

個々の製品の見積に間接製造費用と販管費も入れる必要があります。間接製造費用は間接部門の労務費や工場の経費など…


【原価計算と見積の基礎】4. 人のアワーレートの計算方法

人のアワーレートは人の年間費用を実際に付加価値を生んでいる時間で割って計算します。一方各現場には賃金の異なる人がいるため…


【原価計算と見積の基礎】5. 設備のアワーレートの計算方法(1)

設備のアワーレートは設備の年間費用を実際に付加価値を生んでいる時間で割って計算します。この年間費用のうち設備の購入費用は…


【原価計算と見積の基礎】6. 設備のアワーレートの計算方法(2)

設備のアワーレートの具体的な計算を説明します。設備が年間で半分しか稼働しなければ…


【原価計算と見積の基礎】7. 間接費用の分配

人と設備以外の費用、間接製造費用と販管費の計算について説明します。工場には直接製品を製造する直接部門と…
 

以降、個々の製品の原価、工程別の原価については「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】にあります。
 

原価計算と見えない赤字

 


【原価計算と見積の基礎】8. 高い設備は原価が高いのか

設備の大きさ(価格)による原価の違い、設備によって現場を分けるかどうか、ラインの場合の設備の考え方などを説明しました。同じ設備でも大きさによって償却費やランニングコストが異なる場合は…


【原価計算と見積の基礎】9. 自動化とロボットの活用

無人加工と有人加工の違い、ロボットを導入した場合の原価を説明しました。有人加工は加工中、人と設備の費用が同時に発生しますが、無人加工の場合は…


【原価計算と見積の基礎】10. ロットの減少によるコストアップ

段取がある場合、製品1個の段取費用はロットが小さくなると大きくなります。具体的にどのくらい違うのか、機械加工A社樹脂成型加工B社の事例で…


【原価計算と見積の基礎】11. 段取時間の短縮

ロットが少なくなれば原価に占める段取費用が大きくなります。この段取時間を短縮すれば段取費用はどのくらい小さくなり原価はどうなるでしょうか?実は段取は2種類あり…


【原価計算と見積の基礎】12. 検査追加によるコストアップ

検査費用が最初から見積に入っていれば問題ありませんが、検査費用が見積に入っていない場合、検査を追加すれば原価は上がります。この検査には全数検査と抜取検査があり…
 

このコラムの続きは、書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」にあります。
 

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【原価と見積の疑問】3.イニシャル費の回収はどうすればいいのか? https://ilink-corp.co.jp/9604.html https://ilink-corp.co.jp/9604.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:40:22 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9604  
変動費と固定費、全部原価計算と直接原価計算について【原価と見積の疑問】2.直接原価計算の方が良いと言われたが?で述べました。

製品を新たに立ち上げる際、金型や治具が必要なことがあります。

金型や治具の費用は生産開始に先立って発生するため「イニシャル費」と呼びます。生産開始前に設計やプログラムを行う場合、これもイニシャル費です。

このイニシャル費について

  1. 生産立ち上げまでの手順
  2. イニシャル費の回収方法
  3. 時には金型は別の事業部にする

この3点を述べます。
 

1.生産立ち上げまでの手順

 
部品の立ち上げに金型が必要な場合の生産開始までの流れを図4-7-1に示します。
① 生産開始前に、顧客は部品メーカーに金型を発注
② 金型完成後、顧客は金型費用を部品メーカーに支払う
  金型は納品せず部品メーカーに置いておく
③ 部品メーカーは顧客から金型を「預かって」部品を生産する
④ 金型は顧客の資産

図1 量産開始までのプロセス

金型の費用は②で最初に支払います。金型は発注先の資産です。

ところが金型の費用を金型費として払わず、発注する部品の価格に金型費用分を上乗せして支払うことがあります。金型は部品メーカーの資産になります。

この場合は、金型代を部品代から確実に回収する必要があります。これがイニシャル費の回収です。
 

2.イニシャル費の回収方法

 
金型費用を部品価格に上乗せして回収する場合、上乗せする金額は回収期間とその間の生産数から決めます。

図2に樹脂成形B社がある製品の生産を開始する場合の金型費と部品代を示します。

図2 金型代を部品価格に上乗せして支払う場合

この製品の受注は2年間で240万個の見込みです。1個当たり1円上乗せすれば2年間で金型費240万円が回収できます。

金型の法定耐用年数は2年なので、2年の間に減価償却も完了します。

しかし生産開始1年でこの製品は生産中止になりました。1年間で回収できた金型費は120万円、残り120万円は回収できていません。

この場合120万円は顧客に別途「金型補償代」として請求します。

図3 途中で生産中止になった場合

このイニシャル費の回収不足を発見するためには、生産開始からの累計生産量を記録して、いつ240万個に達したのか監視しなければなりません。

一見簡単なようですが、部品メーカーは多くの種類の部品を生産しています。受注量も毎月変動します。これを常にチェックするのは大変です。

一方、顧客も累計発注量を監視し、予定よりも短い期間で予定数量に達した場合は、その分価格を引き下げなければなりません。

このようにイニシャル費を部品価格に上乗せして回収する方法は、受注側、発注側双方に負担のかかる方法です。

つまり

  • イニシャル費を分割して回収する場合は一定期間内の累計生産量と、期間内に累計生産量に達しなかった場合の金型補償代の支払いを取り決め
  • 生産開始後は累計生産量を管理

 

3.時には金型は別の事業部にする

 
自社で金型の調達(あるいは製造)と製品(部品)の製造を行う場合、金型と製品で利益率が違うことがあります。例えば図4では

【B1製品】金型は赤字、製品は黒字
  金型費の赤字を製品の利益でカバー
  長く製造するほど利益が増える

【B2,B3製品】金型は黒字、製品が赤字
  製品の赤字を金型の利益でカバー
  長く製造するほど利益が減少

図4 製品種別の利益管理

この会社が赤字の場合、従来の財務会計(月次の利益管理、部門別の利益管理など)では、どこに問題があるかわかりません。

またB2,B3製品は、顧客が金型を自社調達に変えれば赤字になってしまいます。

こういった場合、事業毎、製品毎の利益がわかるようにします。方法は2つあります。

① 製品ごとに金型と製品の利益を管理する
② 金型と製品の事業部を分ける
 

製品ごとに金型と製品の利益を管理

 
図4に示すように、製品毎に金型と製品の利益がわかる仕組みをつくります。

ある製品は、製品は赤字でも金型が大きな利益を生んでいるかもしれません。あるいは無理な金型の使い方をしているため、金型の寿命が短くなって、利益が出ないかもしれません。

これを的確に判断するには、図4のように金型と製品を合わせた利益を管理します。 図4では、

B1製品 : 金型利益▲50万円 製品利益70万円/年
B2製品 : 金型利益 30万円 製品利益▲10万円/年
B3製品 : 金型利益 800万円 製品利益▲30万円/年

こうすれば製品毎の収益がわかります。B1製品は短期間に生産中止になれば赤字です。逆にB2、B3製品は、受注が継続すれば損失が増えていきます。
 

金型と製品の事業部を分ける

 
金型と製品を別の事業部にして、事業部毎の利益を計算します。

金型の減価償却は2年です。金型の売上はその期の売上ですが、費用は2年に分けて計上されます。

一方、製品を生産する費用は毎期計上されます。

このように金型と製品は費用と収益のタイミングが異なるため、事業部を分けた方が収益を適切に判断できます。

金型を別事業部にする場合は、以下の手順で行います。

① 金型事業と製品事業の販管費を分ける(金型事業は主に調達のみなので、販管費の比率を製品事業よりも低くします)
② 金型の調達に関わる費用を計算し、金型事業部の販管費に入れる
③ 減価償却費は金型事業と製品事業を分ける

図5に樹脂成形B社を金型事業と製品事業に分けた例を示します。

図5 金型事業と製品事業に分けた場合

図5で、決算書の営業利益は2,000万円です。成形事業と金型事業を分けた結果、成形事業は7,404万円の赤字、金型事業は9,404万円の黒字でした。

金型の調達に関わる人件費は440万円でした。この440万円、金型の減価償却費4,500万円、販管費分配656万円を金型事業の販管費としました。その結果を図5の右に示します。

この結果から、B社は成型事業で発生する大きな赤字を金型の利益でカバーしていることがわかります。

金型販売だけにすれば高収益企業になりますが、成形を行うから金型の注文が入るので、金型販売だけにはできません。

このように2つの事業に分ければ、事業毎の収益性が明確になります。

一方、金型の調達と成形事業の業務は、同じ社員が行うため、金型事業の費用を仕訳の段階で分けるのは困難です。そのため財務会計とは別に計算します。

このように場合によっては金型を別事業にすれば、事業毎の収益性を明らかにできます。
 

では収益性が低く、赤字の場合、赤字なら受注しない方が良いのでしょうか。

実は見積では赤字でも受注した方が会社全体では利益が増える場合があります。

これについては書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書【基礎編】」で詳しくご説明しています。

経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

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https://ilink-corp.co.jp/9604.html/feed 0
【原価と見積の疑問】2.直接原価計算の方が良いと言われたが? https://ilink-corp.co.jp/9601.html https://ilink-corp.co.jp/9601.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:39:43 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9601  
【原価と見積の疑問】1.間接費用の分配とは?では間接製造費用の分配について述べました。

一方売上が不足する場合、在庫を増やせば利益を増やせます。なぜ在庫を増やせば利益が増えるのでしょうか。
 

全部原価計算での利益

 
財務会計の原価計算が全部原価計算だからです。全部原価計算では在庫を製造した費用は、その期の原価になりません。

全部原価計算では利益は以下の式で計算します。

売上原価=期首在庫+製造原価-期末在庫

営業利益=売上-売上原価-販管費

従って期末在庫が増えれば売上原価は少なくなります。売上原価が少なくなれば利益が増えます。

具体的な数字で見てみます。表1は、ある企業の1か月の売上と利益です。
          
        表1 全部原価計算の利益 単位 : 万円                   

売上 5,000
期首在庫 0
当期製造原価 4,000
期末在庫 0
当期売上原価 4,000
売上総利益 1,000
販管費 600
利益 400

その月の売上5,000万円、製造原価4,000万円、販管費600万円、利益は400万円でした。翌月、売上が半分の2,500万円になりました。

表2に示すように材料費、外注費など変動費は減少しました。しかし固定費は変わらないため、製造原価は3,000万円でした。その結果1,100万円の赤字でした。

そこで工場の稼働は維持して前月と同量を生産しました。売れなかった半分は在庫とします。これを表3に示します。

           表2 売上が半分になった場合 単位 : 万円

売上 2,500
期首在庫 0
当期製造原価 3,000
期末在庫 0
当期売上原価 3,000
売上総利益 ▲500
販管費 600
利益 ▲1,100

 

           表3 在庫を増やした場合 単位 : 万円

売上 2,500
期首在庫 0
当期製造原価 4,000
期末在庫 2,000
当期売上原価 2,000
売上総利益 500
販管費 600
利益 ▲100

製造原価は4,000万円ですが、在庫の生産分2,000万円はその月の売上原価になりません。そのため売上原価は2,000万円になり、赤字は100万円に減少しました。

全部原価計算で利益を管理するとこうしたことが起きます。利益を出すように現場に圧力をかけると現場は在庫を増やしてしまいます。

だから全部原価計算でなく直接原価計算の方がよいといわれています。これはどういうことでしょうか。
 

直接原価計算での利益

 

変動費のみで原価を計算するのが直接原価計算です。直接原価計算では利益は以下の式で計算します。

変動売上原価=期首在庫+変動原価(変動費のみ)-期末在庫

営業利益=売上-変動売上原価-固定原価(固定費)

ここで一般的な変動費と固定費を図1に示します。

図1 製造原価と販管費の変動費と固定費

製造原価の変動費は主に材料費と外注加工費です。他にも、製造経費の一部に変動費がありますが金額はそれほど大きくありません。

販管費の変動費は製品を運ぶ運賃や消耗品などです。本コラムは簡単にするために、変動費は材料費と外注費、固定費は労務費、製造経費、販管費とします。

表2の売上が半分になった例を、直接原価計算と全部原価計算で比較したものを表4に示します。

       表4a 売上が半分になった場合(全部原価計算) 単位 : 万円

売上 2,500
期首在庫 0
当期製造原価 3,000
期末在庫 0
当期売上原価 3,000
売上総利益 ▲500
販管費 600
利益 ▲1,100

       表4b 売上が半分になった場合(直接原価計算) 単位 : 万円

売上 2,500
期首在庫 0
変動原価 1,100
期末在庫 0
当期変動売上原価 1,100
限界利益 1,400
固定原価 2,500
利益 ▲1,100

この場合、在庫が増えていないため、全部原価計算と直接原価計算の赤字1,100万円は変わりません。在庫を増やした場合を表5に示します。

       表5a 在庫を増やした場合(全部原価計算) 単位 : 万円

売上 2,500
期首在庫 0
当期製造原価 4,000
期末在庫 2,000
当期売上原価 2,000
売上総利益 500
販管費 600
利益 ▲100

       表5b 在庫を増やした場合(直接原価計算) 単位 : 万円

売上 2,500
期首在庫 0
変動原価 2,200
期末在庫 1,100
当期変動売上原価 1,100
限界利益 1,400
固定原価 2,500
利益 ▲1,100

全部原価計算では在庫が増えたため100万円の赤字になりました。

直接原価計算では在庫を増やしても原価(変動売上原価)は変わらず、1,100万円の赤字も変わりません。

このように、全部原価計算では在庫を増やせば利益は増えます。実際に決算を良くするために期末に在庫を増やすことがあります。しかし、売上が下がっているのに在庫を増やせば、売れない在庫が増えてしまいます。売れない在庫は資金繰りを悪化させます。だから直接原価計算がよいと言われます。

ただし、証券市場、金融機関、税務署など外部に出す財務諸表は全部原価計算で計算しなければなりません。直接原価計算が使えるのは内部管理(管理会計)のみです。

では工場管理のための原価計算は直接原価計算にすべきでしょうか。これは在庫を利益と結びつけることで起きる問題です。

在庫量は利益と関係なく、「需要に応じ、欠品を出さず短納期を実現するための最小限」にすべきです。在庫が多ければ

  1. 資金繰りが悪化
  2. 在庫管理にコストがかかる
  3. 在庫が陳腐化して売れなくなる
  4. 設計変更があると修正しなければならない

こうした見えないコストや廃棄ロスが発生します。

一方、原価の視点では「在庫も生産すれば工場の稼働率は上がり原価は下がる」、つまり在庫も生産すれば原価は下がります。そこで管理者は

  • 最大在庫量を守り、現場がヒマでもそれ以上は生産させない
  • 最大在庫量を守った上で、工場の稼働が最大になるようにする
  • 受注不足の場合は、受注を増やすように努力する
  • 工場の成果は、利益(売上原価)でなく生産高(製造原価)で評価

このようにします。「売れない在庫をつくらない」のは大原則です。その上で、管理者は受注を増やして工場の稼働が最大になるように努めます。

他にも直接原価計算はメリットがあります。それは全部原価計算には固定費の分配の問題があるからです。
 

固定費を分配しない直接原価計算

 

全部原価計算は変動費と固定費を合わせて原価を計算します。この固定費には間接部門の人件費や工場の経費があります。これらを各現場に分配してアワーレートを計算します。

しかし、固定費の中で間接部門の費用や製造経費はどの現場にどのくらいかかったのか正確にはわかりません。

また固定費の分配ルールは「これが正しい」というものがありません。しかも固定費の分配の仕方によって原価は変わります。

一方、変動費のみで原価を計算する直接原価計算は固定費の分配はありません。従って固定費を分配しない直接原価計算の方がよいといわれています。

図2に全部原価計算と直接原価計算の原価の構成を示します。

図2 全部原価計算と直接原価計算

この直接原価計算は以下の場合には使いやすい方法です。

  • 原価に占める変動費の割合が高い
  • 売価が市場価格で決まるため、緻密な原価計算を必要としない

例えば、自動車メーカーは製造原価の約80%が外部からの購入部品(変動費)です。こういった製品であれば、変動費のみの直接原価計算でも問題ありません(実際の自動車メーカーは製造費用も原価に入れていますが。)

一方、直接原価計算を価格決定に使用すると、適正な価格がわかりにくいという問題があります。
 

価格決定の問題 見込み生産と受注生産の違い

 

見込み生産と受注生産で価格決定の考え方は異なります。
 

見込み生産と受注生産の違い

 

【見込み生産】
図3に示すように、自社商品を市場に販売する場合、どの商品をどのくらい生産するかは自分達で決めます。一方価格は市場の需要と市場への供給で決まります。原価が高いからと高い価格をつけても、競合が安ければ売れません。

その反面、価格を下げれば、利益は減りますが販売量は増えます。その結果、利益の合計は増えることもあります。

【受注生産】
顧客や取引先からの受注に応じて生産します。受注量は顧客の計画で決まります。価格を下げたからといって受注量は大きく増えません。

図3 見込み生産と受注生産の違い

見込み生産の場合、個々の製品の利益の多寡よりも「受注量×利益」が最大化するように価格を決めます。

受注生産の場合、原価を適切に計算し、高く受注するように顧客と交渉します。

ただし、受注がとても少なく固定費の回収が不足する場合は、価格を下げてでも受注を増やします。ではいくらまで下げてもよいでしょうか。
 

粗利と営業利益

 

いくらまで下げれば利益があるのか、これは製造業と小売業で異なります。

小売業の場合、販売価格から(仕入)原価を引いたものが売上総利益(粗利益)です。

製品1個の粗利益は

粗利益=販売価格-仕入原価

ここで

変動費 : 仕入原価
固定費 : 販管費

とすると

限界利益=売上-変動費 

限界利益=粗利益 (図4)。

図4 小売業の変動費と固定費の例

図4では

売価 : 1,000円
仕入原価 : 760円
粗利 : 240円
販管費 : 190円
利益 : 50円

毎月の粗利益の合計が販管費を上回れば利益はプラス、下回れば赤字です。粗利益率が高い商品でも販売量が少なければ粗利益の合計は多くありません。

逆に、粗利益率は低くても販売量が多ければ粗利益の合計は多くなります。利益を増やすには、毎月の粗利益の合計を大きくします。

製造業では仕入原価でなく製造原価です。製造原価には、変動費と固定費があります。

製造原価=変動費(材料費・外注費)+固定費(製造費用)

粗利益=受注金額-製造原価

限界利益=受注金額-変動費

従って限界利益≠粗利益です。これを図5に示します。

図5 製造業の変動費と固定費の例

製造業は製造原価の中にも固定費があります。そのため、粗利益でなく限界利益の合計を管理します。限界利益の合計が固定費を上回れば利益はプラス、下回れば赤字です。

一方、生産量は工場の設備と人員で決まります。受注が多くても急には生産量を増やせません。小売業のように価格を下げて大量に販売するのは困難です。1つ1つの受注で確実に利益を確保しなければなりません。
 

直接原価計算で売価を決めるリスク

 

直接原価計算の問題は、受注価格と利益の関係が見えにくいことです。先の製品の見積を全部原価計算と直接原価計算で比較したものを図6に示します。

図6 直接原価計算と全部原価計算の見積

a. 全部原価計算では

製造原価 : 760円
販管費 : 190円
目標利益 : 50円
見積金額 : 1,000円

です。50円値引きすれば利益はゼロです。

b. 直接原価計算では
変動費 : 380円
目標限界利益 : 620円
見積金額 : 1,000円

です。実際は販管費の一部にも変動費がありますが、計算を簡単にするためすべて固定費とします。

例えば、920円で受注した場合、限界利益は540円です。利益はまだあるように思えますが実際は、920円は販管費込み原価950円に対し30円マイナスの赤字です。しかし直接原価計算ではわかりません。

受注生産では1件1件の受注で確実に利益が出るようにしなければ利益が確保できません。そこで全部原価計算で製造原価と販管費を明確にします。
 

一方、生産開始に先立って金型や治具などが必要なことがあります。これらは生産に先立って発生するためイニシャル費と呼ばれます。

金型や治具の費用をイニシャル費として一括で支払わず、製造する製品価格に上乗せして払う場合があります。これがイニシャル費の回収です。

このイニシャル費の回収については【原価と見積の疑問】3.イニシャル費の回収はどうすればいいのか?を参照願います。

経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

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【現場で役立つ原価のはなし】9. 間接費の分配とは?その1 https://ilink-corp.co.jp/9598.html https://ilink-corp.co.jp/9598.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:38:03 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9598
【コラムの概要】

製造原価の大部分を占める間接費とは、製造に直接関わらない工場の経費や間接部門の人件費です。品質管理や製造環境の高度化により、その割合は増加傾向にあります。
間接費は多くの固定費を含み、生産量の増減で製品ごとの原価が変動します。正確な原価計算には、この間接費を適切に製品へ分配する必要がありますが、その分配方法には手間がかかり、根拠が不明瞭になる問題も抱えています。
しかし、間接費を計算しないと、適正な売価を設定できず、生産した製品が利益があるかもわかりません。そのため中小企業も間接費の分売は不可欠です。

アワーレート(人)の計算については

またアワーレート(設備)については


実際のアワーレートの中で、人や設備の費用など直接費のほかに、間接費も大きな金額を占めています。
この間接費とはどのような費用でしょうか?

1. 間接費とは?

製造原価の内訳

工場で発生する経費の1年間の合計は、決算書の製造原価報告書に示されます。その内訳は以下の通りです。

材料費
  • 主要原材料
  • 購入品
  • 補助材料:直接/間接
  • 工場消耗品:間接
  • 消耗工具:直接/間接
労務費
  • 直接労務費
  • 間接労務費
外注費
工場経費
  • 電力費:直接/間接
  • 減価償却費:直接/間接
  • 賃借料
  • 地代家賃
  • 通信費
  • 会議費
  • 保険料
  • 修繕費:直接/間接
  • 旅費交通費
  • 荷造包装費
  • 工場消耗品費
  • 租税公課
  • 消耗器具備品
  • 教育訓練費
  • 諸会費
  • 雑費

間接費

ここで「間接」と記載されているものが間接費用です。労務費の間接費は、現場の間接作業者、管理者、および間接部門の労務費です。

図 間接費

この間接費をどのように原価に入れるのかが課題です。なぜなら、原価に占める間接費が増加しているからです。

2. なぜ間接費の分配が必要なのか

原価に占める間接費は増えています。工場によっては加工費の50%が間接費ということもあります。その結果、間接費をどのように原価に組み込むかで原価が大きく変わります。

間接費が増えた理由

顧客・市場の要求が厳しくなっている

品質に対する要求は年々厳しくなり、かつてはリコールにならなかった不良品がリコールや自主回収になっています。そのため、不良品を作らない・出さないために、より高度な品質管理・工程管理や、万が一不良品が流出した場合の迅速な対応のためのトレーサビリティ(製造履歴管理)が求められています。そのため、品質管理・工程管理など管理部門の人員が増加しました。

検査設備・評価設備の増加

より高度な品質管理のためには、検査設備や評価設備の充実が求められることもあります。こうした設備の増加も間接費の増加につながります。

製造環境の改善

わずかな異物混入やより高い精度のため、温度・湿度、空調や異物対策が必要なこともあります。よりレベルの高い空調や温度管理、入室時の異物混入対策なども間接費を増加させます。

他にも様々な要因で間接費が増加します。これを適切に各現場に分配することが必要です。

※注)
本コラムでは、間接費を割り振ることを「分配」と呼びます。
財務会計では割り振ることを「配賦」と呼び、「配賦」も「割り当てる」という意味です。
財務会計には「配賦」のほかに「賦課」という言葉もあり、以下のように使い分けています:

  • 配賦:製造原価を計算する際に、間接費を何らかの基準(配賦基準)を用いて振り分けること
  • 賦課:製造原価を計算する際に、「何に」「どれだけ」使ったのかがわかる直接費を振り分けること

「直接費は賦課して、間接費は配賦する」という表現をします。
しかし、本書では難しい会計用語を用いず、一般的な「分配」を使用します。

工場で発生する費用はすべて原価

先に挙げた工場の経費の中には、一見原価に思えない費用もあります。しかし、実際に支出された費用です。

それに対して、工場でお金を稼いでいるのは直接部門の作業者と設備だけです。先に挙げた経費はすべて、直接部門の作業者と設備が稼いだ売上で賄っています。つまり、間接作業者や間接部門の人の費用、工場の経費は、直接部門の作業者と設備が支えているのです。

図 間接部門の費用は直接作業者と設備が支えている

だから原価を計算する際は、間接部門の費用も工場の経費も、適切な金額を原価に入れなければなりません。工場で使ったお金はすべて原価です。だからボールペン1本余分に買っても原価は上がるのです。これはいくら原価が上がるのかも計算できます。

実態は固定費

一方、間接費の多くが固定費です。固定費なので生産量が増えても変わりません。したがって、生産が増えれば製品1個あたりの間接費は減少します。つまり、生産量が変動すると製品1個の原価も変動します。

生産量によって製品1個あたりの間接費が変わるなら、間接費を細かく計算しても意味がないという意見もあります。実際、管理会計では固定費を振り分けず、直接費のみで計算する「直接原価計算」という方法もあります。

問題は、間接費も原価に入れなければ「いくらで売れば利益が出るのか」「適切な売価」が分からないことです。これは部品加工など受注型生産の工場では問題になります。

そこで、受注型生産の工場では条件を決めて間接費も含めた原価を計算します。一方、自社製品を見込み生産する工場では、価格は市場価格で決まる場合も多く、売価を決めるために原価は必要ありません。その場合は、生産量に応じてトータルでの原価と利益を管理します。

では、間接費の分配はどうすればいいのでしょうか?

3. 財務会計の原価計算

大企業は間接費も含めて原価を計算しています。この大企業が行う財務会計に則った正しい原価計算とは、以下の手順で行います。

(1) 経費を部門別に計算

毎月発生した経費を仕訳する際、「どの部門で使った費用か」が明らかな費用は、その部門の費用にします。この部門は以下のように分けられます。

直接部門

直接製品を製造する部門(例:加工、組立、塗装、検査など)
検査は、検査費用が見積に含まれている場合、検査部門もお金を稼いでいるので直接部門。検査費用が見積に含まれていなければ間接部門です。
同様に設計も、設計費用が見積に含まれていれば直接部門、含まれていなければ間接部門です。

間接部門

直接製品を製造しない部門(例:生産管理、品質管理、資材管理、生産技術など)

この時、消耗品費でも、機械加工部門の刃物代など使用部門が明確にわかる費用は、その部門の費用とします。しかし、消耗品費の中でもウェス、ガムテープなど使用部門が不明確な費用は「共通費」です。他にも共通費には保険料、家賃など様々な費用があります。

図 財務会計の間接費の分配

(2) 共通費を各部門に分配

この共通費は、何らかの分配基準(配賦基準)を用いて各部門に分配します。分配基準には以下のようなものがあります。

  • 社員数:人件費や福利厚生費など、人員に比例すると考えられる費用
  • 占有面積基準:家賃や保険料、固定資産税など、建物や敷地の使用に比例する費用
  • 機械帳簿価格基準:減価償却費や保守料など、機械設備の価値に比例する費用
  • 動力使用量基準:電気代や燃料費など、エネルギー使用量に比例する費用

一見論理的に見えますが、実務でやろうとすると頭を抱えます。雑費や租税公課はどうやって分配すればいいでしょうか?水道代や電気代は各部門の消費金額が分かるでしょうか?

また、社員数の場合、短時間勤務のパート社員と正社員を同じ1人と考えてよいでしょうか?他にも嘱託や派遣社員、請負はどうすればよいでしょうか?

実際の現場は教科書よりも複雑です。

(3) 間接部門費用を直接部門に分配

こうして計算した各部門の費用のうち、間接部門は直接お金を稼いでいないため、その費用は直接部門に分配しなければなりません(間接部門配賦)。
ここでまた分配基準が必要です。この分配基準には以下のような例があります。

  • 資材管理部門:在庫出庫額
  • 資材発注部門:発注伝票数
  • 生産管理部門:生産計画数
  • 品質管理部門:検査数

これも実務では悩むことが多いのです。

例えば、生産管理部門の費用を生産計画数で分配した場合、図のように加工部門と組立部門のその月の生産計画数が同じ50件であれば、50%ずつ分配されます。しかし加工部門は原材料のみで計画の変更はほとんどないのに対し、組立部門は外注加工が多く、納期遅れのため計画の変更が多発していました。実際は組立部門に多くの生産管理の費用がかかっていました。

図 生産管理費用の分配

このように、間接部門費用を直接部門に分配する基準には悩ましいものがあります。しかも間接部門の費用は大きく、この分配の仕方によって原価が大きく変わってしまいます。

(4) 分配(配賦)方法の種類

しかも分配の方法自体も4種類あります。

  1. 直接配賦法
    間接部門費を直接、各直接部門に配賦する方法。計算は単純だが、間接部門同士のサービス提供は考慮しない。
  2. 階梯式配賦法
    サービス提供量の多い間接部門から順に配賦する方法。間接部門間の一方通行的なやり取りを考慮できる。
  3. 相互配賦法
    間接部門同士の相互サービスも反映する方法。精度は高いが計算はやや複雑。
  4. 連続配賦法・連立方程式法
    最も精密な方法で、間接部門間の相互提供を完全に考慮する。大企業やERPシステムで多用。

中小企業の場合、直接配賦法で十分です。なぜなら、そもそも分配基準が前述のように便宜的なもので、現実とは乖離しているからです。

(5) 間接費を製品に分配

こうして直接部門に配賦された間接費を、それぞれの製品の原価を計算する際に分配します。この分配基準には以下のようなものがあります。

  • 直接材料費基準:材料費が多い製品ほど間接費を多く配分
  • 直接労務費基準:手作業中心の工程では有効
  • 製造直接費基準:直接材料費と直接労務費の合計に比例して配分
  • 直接作業時間基準:作業時間を基準に配分。小ロット多品種に向く
  • 機械稼働時間基準:機械時間が多い製品に多く配分。自動化工場に向く
  • 生産量基準:同一製品や類似品の大量生産に有効
  • 売上高基準:販売価格や収益性と比例して配分。ただし製造原価の正確性はやや落ちる

実際は直接作業時間基準及び機械稼働時間基準で十分です。こうして計算した間接部門費用の合計と直接費の合計を、その製品の生産数で割れば、1個の製造費用が計算できます。

ただし、これらの計算はその月の結果がわかっているからできる計算です。つまり、財務会計の原価計算は、実際に発生した費用を割り振って個々の製品の原価に落とし込む方法です。従ってその月の費用が確定しないと原価が分かりません。

工場の利益と製品別損益管理を実現

このように計算することで、その月に生産した製品の製造原価が計算されます。これにより、それぞれの製品の利益がいくらだったのか、製品別損益管理ができます。

間接部門の費用も含めた直接部門の費用も計算できます。そこから部門別損益管理も可能です(ただし、それには1つの製品の売上を各直接部門に振り分けなければなりません)。
また、部門別損益管理を間接部門にまで展開したものが、京セラが行っているアメーバ経営です。

4. 財務会計の原価計算の問題

例えば、今まで原価計算の仕組みがない中小企業がこの方法を導入しようとすると、以下のような問題があります。

経費(共通費)の分配

工場の経費(共通費)を各部門に分配する際、分配基準と実際の消費量との関連が弱いものも多く、「これで正しいのか?」という疑問がわきます。

例えば、地代家賃が従業員用の駐車場の賃料の場合、これは各部門の人数で分配すべきでしょうか。しかし、各部門の中で車通勤の比率は一定ではありません。では、車通勤の人数を調べて分配すべきでしょうか?

この分配によって各部門の費用が変わります。例えば、工場の共通費を各部門の占有面積で分配した場合、面積が広い部門は共通費の負担が多くなります。自部門の占有面積を減らせば共通費が減って原価を下げることができます。かといって現場の通路まで狭くすれば原価は下がりますが、作業効率が犠牲になってしまいます。

間接部門費用の分配

より影響が大きいのが間接部門費用の分配です。これらの部門の人件費は高く、分配の仕方によって原価は大きく変動します。

資材管理の費用を在庫出庫額とした場合、組立部門は購入品・外注加工品が多く出庫額も多く成ます。一方加工品は材料だけなので、同じ点数でも出庫額は少なくなります。その結果、同じ労力をかけていても組立部門に資材管理の費用が多く分配されます。

集計に手間がかかる

そもそも月次決算すらできていない中小企業は少なくありません。月次決算を行うには、年払い・半年払いの費用を月割り計算する必要があります。さらに、毎月発生する費用を集計し、そこから間接費の配賦計算を行う必要があります。

大企業ではERPなどの統合システムが自動的に集計しますが、中小企業では高額なERPを導入していないことが多く、経理担当者がExcelで3日がかりで配賦計算をしているケースもあります。

しかも、それだけの労力をかけても「原価が分かる」だけです。しかもその原価は現場から疑問視されることも多い原価です。

部門別損益管理の課題

配賦計算が発展すると部門別損益管理を行う中小企業もあります。しかし、共通費の配賦によって部門の利益額が大きく変わります。

そのため、各部門の長は数字の変動に神経をとがらせます。その結果、社内で利益争奪戦が生まれます。

部門別損益管理とは「利益は社内のコスト削減によって生み出される」という内部管理志向によって生まれたものです。しかし、現実には企業に売上と利益をもたらすのは顧客です。

経営コンサルタントの故・一倉定氏は「企業活動はすべて顧客志向でなければならない」と言いました。社内で数字を操作しても、利益は1円も増えないのです。

5. 原価計算に間接費の分配が必要な理由

固定費を入れない直接原価計算の課題

間接費の多くが固定費です。そのため、売上が増えれば原価に占める間接費は下がり、利益が増えます。売上が減れば間接費は上昇し、利益は減少します。さらに利益は在庫の増減によっても変動します。

財務会計の原価計算は、こういった要因で変動し利益も変わります。そこで、固定費を配賦しない直接原価計算(変動費のみを原価に含める管理会計手法)が生まれました。中には、損益計算書を変動費・固定費に分けて5期分比較したものを出す会計事務所もあります。

ただし、直接原価計算には問題があります。

いくらで売ればいいのかわからない

そもそも、なぜ原価計算が必要なのでしょうか?
原価計算の最大の目的は、適正な受注価格を設定し、利益を確保することです。

受注時には「この案件はいくらで作れるか」を予測し、利益が出る価格で受注する必要があります。生産後は「実際はいくらかかったのか」を把握し、もし想定より高くついたなら、その原因を分析し、改善策を講じます。

この予測と改善のPDCAサイクルを回すことこそ、原価計算の本質です。

図 現場管理ための原価計算の目的

もし変動費だけの直接原価計算しか行わなければ、固定費の負担を考慮しないため、受注価格が低すぎて赤字になるリスクが高まります。

儲かったかどうかわからない

固定費も含めた製造原価を算出しなければ、その製品が本当に黒字なのか赤字なのかを正しく判断できません。

例えば、受注量が少なく固定費負担が大きい場合、変動費ベースでは黒字でも、固定費を含めれば赤字ということがあります。現場が「予定通りのコストで作れた」と思っていても、実は会社全体の利益を圧迫しているケースもあるのです。

したがって、間接費の配賦は面倒で不正確な部分があっても、経営判断のために避けて通れない作業と言えます。

まとめ

  • 間接費は工場経費や管理部門など、生産に直接関係しない費用
  • 品質管理や製造環境の高度化により、間接費の割合が増加
  • 間接費の多くは固定費。そのため、生産量によって原価は変動
  • 財務会計の原価計算は間接費の分配計算が複雑、しかも根拠が希薄
  • 「いくらで作れるか」を予測し、「いくらかかったのか」を把握するため、中小企業も原価の仕組みが必要

このように、原価計算における間接費の分配は「正解のない作業」である反面、それを行わないと価格決定や採算判断ができなくなるというジレンマがあります。

では、どうすればいいのでしょうか?

これについては別のコラムで解説します。

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【原価計算と見積の基礎】19.失敗によるコストアップ https://ilink-corp.co.jp/9595.html https://ilink-corp.co.jp/9595.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:36:51 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9595
【コラムの概要】

自社設計・製造の製品では、設計ミスや予期せぬ問題によるやり直しが発生し、原価が当初の見積もりをオーバーして赤字になるリスクがあります。これを避けるため、過去の失敗事例から適切な失敗費用を見積もりに上乗せすることが必要です。また、難易度の高い案件で発生した超過費用は、企業の技術力向上のための「開発費」と捉えことも重要です。

光熱費や運賃などの費用の上昇によるコストアップや利益の影響について、○○で述べました。

一方、自社で設計・製造する場合、設計ミス(失敗)のためやり直しをすることがあります。
これにより原価はどれだけ上昇するのでしょうか。

この失敗の原価について、以下の4点を述べます。

  1. 設計費用の考え方
  2. 失敗コスト
  3. 見積精度を高める取り組み
  4. 失敗を開発費と考える場合

1. 設計費用の考え方

例えば、生産設備や搬送設備を設計・製作する受注生産型の企業は、顧客の要望に基づいて毎回設備(製品)を設計・製造します。初めて設計する製品では、設計ミスや想定外の問題が起きます。設計のやり直しや部品の再作成が発生し、原価は予定より増えます。
そして、見積の時点では利益があったのに、結果的に赤字になってしまいます。

これはどうしたらよいでしょうか?

設計ミスや予期せぬ問題がどれくらい起きるかは、製品の技術的な難易度や複雑さに関係します。そこで、案件毎に材料費、設計費、製造費用の見積金額と実績金額を記録し、どの案件でどのくらいの差異が生じたのか調べます。

例えば、設備メーカーのD社 D1製品の見積は図のようなものでした。

図 設計のあるD1製品の見積
図 設計のあるD1製品の見積

実際は、材料費、設計費用、製造費用が見積よりも増えて0.8万円の赤字でした。こうしたことが毎回起こるのであれば、その分見積を高くします。

図 D1製品の実績原価
図 D1製品の実績原価

 2. 失敗費用

初めて設計する製品はどうしても設計ミス(失敗)が起きます。そこで失敗をある程度予測して見積を高くします。そうしないと失敗で赤字になってしまいます。ただし、あまり高くすると価格競争力をなくして失注します。そこで、過去の失敗とオーバーした金額を調べて、適切な金額を上乗せします。

図では、見積に対し

製品D1 : 130%
製品D2 : 100%
製品D3 : 140%
製品D4 : 110%

平均で120%でした。
利益を確保するためには、現状の見積に対してプラス20%にします。

図 見積に対する実績のばらつき
図 見積に対する実績のばらつき

こう書くと「設計ミスがあることがおかしい! 設計が頑張ってミスをなくすべきだ!」と言われてしまいます。設計ミスややり直しを減らす努力は当然必要です。しかし新規設計する以上、ミスややり直しが発生するのは事実です。それを認めてそれでも利益が出る金額にしないと利益が出ません。〈注〉これはミスを起こす設計者からは言いにくいため管理者が決めます。

〈注2〉筆者がかつて設備メーカーに高額な専用設備を発注した時の経験です。仕様打合せ、相見積の末、ある設備メーカーに発注しました。しかし、発注側は一切仕様を変えていないのに、問題が多発し納期も大幅に遅れました。おそらく設備メーカーは赤字だったと思います。これはすべて設備メーカーの問題でした。こういった特殊な製品は、起こりうる問題の予測も含めて、見積能力がとても重要だと感じました。

3. 見積精度を高める取り組み

設計がある製品は見積の精度が重要です。いくら見積価格で受注できても、失敗が多ければ赤字になってしまいます。特に設計やプログラミングなどクリエイティブな仕事は工数の見積が難しく、また設計者やプログラマは、楽観的に考えて工数を少なく見積る傾向があります。(多くの設計者やプログラマが納期を守れないことも、楽観的に考えることの現れです。)
つまり

  • 見積精度を高めるために、過去の設計や製造費用の実績を集計し、見積との乖離を調査
  • 実績を元に設計や製造費用の見積の仕方を改善する(フィードバックする)仕組みをつくる
  • 過去の見積と実績の乖離から、見積に下駄をはかせる量を決める

等が必要です。
それでも顧客の要求が非常に高く、未経験の技術要素があれば失敗は起きます。これはどう考えればいいのでしょうか。

 4. 失敗を開発費と考える

他社と差別化し技術力を高めるには

  • 自ら開発テーマを定めて研究開発する
  • 顧客から難易度の高い案件を受注する

2つの方法があります。
マンパワーに限りがある中小企業は、専任の開発チームをつくる余裕がありません。また開発チームをつくっても生産が優先されて開発が進まないこともあります。

その場合、現在より少し技術レベルの高い案件を受注します。そこで起きる失敗や問題を解決すれば自社の技術力を高めることができます。受注すれば納期までに必ず完成しなければならず、メンバーは必死になって取り組みます。

この時、やり直しのために見積をオーバーした金額は「開発費」の意味があります。顧客からお金をもらって研究開発をしたと考えれば、この赤字は技術を手に入れるための費用です。

しかし、経営者から案件ごとの赤字を厳しく責められると、現場はリスクの少ない無難な案件しか受注しなくなります。技術は向上せず、気がついたら他社もできる無難な案件しか受注できなくなってしまいます。

ただし難易度が高いといっても、

  • 技術的なレベルアップが必要なもの
  • 顧客が現実を無視した実現困難なことを要求している

この見極めは重要です。前者はレベルアップになりますが、後者は実現困難なことをひたすら努力させられるだけで、レベルアップにならないからです。

「原価計算と見積の基礎」の他のコラムは以下から参照いただけます
本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。

「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】

経営コラム「原価計算と見積の基礎」を書籍化しました。
中小企業が自ら原価を計算する時の手引書として、専門的な言葉を使わず分かりやすく書いた本です。
【基礎編】アワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本
【実践編】モデルを使ってロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失

弊社執筆の原価計算に関する著作は以下からご参照いただけます

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経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

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https://ilink-corp.co.jp/9595.html/feed 0
【原価計算と見積の基礎】18.経費の増加によるコストアップ https://ilink-corp.co.jp/9593.html https://ilink-corp.co.jp/9593.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:35:39 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9593
【コラムの概要】

電気代などの光熱費上昇は、間接製造費用としてアワーレートを上昇させ、製品原価を引き上げます。また、運賃の上昇も原価上昇の要因となり、どちらも値上げなしでは企業の利益を大幅に減少させます。企業はこれらの費用増加分を正確に計算し、顧客に値上げを求める必要があります。

○○では不良の増加による原価の上昇について述べました。

一方近年では様々な費用が上昇しています。例えば

  • 原材料価格
  • 電気、ガスなどエネルギー費用
  • 原材料以外の材料、例えば、オイルやグリス、ボルト・ナット、梱包用の包材や段ボール
  • 設備の運転や保全に必要なオイルやクーラント、ウェスなどの消耗品
  • 刃物などの消耗工具
  • 運賃など輸送費
  • 人件費

では、これにより原価はどれだけ上がっているのでしょうか。ここでは

  1. 光熱費の上昇と原価
  2. 運賃の上昇

について述べます。

1. 光熱費の上昇と原価

電気、ガス、水道などの光熱費は、製造原価報告書に記載されています。この製造経費は、間接製造費用として各現場に分配し、アワーレートに組み込まれます。
電気代が上昇すれば、間接製造費用が増えてアワーレートは上昇します。ランニングコストに電気代が入っていれば、設備の費用も増えます。アワーレート(設備)も上昇します。

機械加工A社 マシニングセンタ1(小型)の現場のアワーレートは、

  • アワーレート間(設備)  :  1,720円/時間
  • アワーレート間(設備)  : 3,360円/時間

でした。このアワーレート間(設備) 1,720円/時間の内訳を図に示します。

図 マシニングセンタ1(小型)の現場 アワーレート間(設備)
図 マシニングセンタ1(小型)の現場 アワーレート間(設備)
  • 直接製造費用 : アワーレート用償却費 140万円 電気代18.4万円
  • 間接製造費用 : 間接製造費用分配 155万円

アワーレートは、直接製造費用と間接製造費用の合計を、設備の稼働時間で割って計算します。この間接製造費用の分配145万円には、工場の共用部分の電気代が含まれています。
同様にアワーレート間(人) 3,360円/時間の内訳を図に示します。

図 マシニングセンタの現場 アワーレート間(人)
図 マシニングセンタの現場 アワーレート間(人)
  • 直接製造費用 : 現場全体の年間労務費の平均 447万円
  • 間接製造費用 : 間接費分配 145万円

設備と同様に、直接製造費用と間接製造費用の合計を、作業者の稼働時間で割って計算します。この間接製造費用分配145万円の中にも、工場の共用部分の電気代が含まれています。

電気代が30%上がった場合、設備の電気代と間接製造費用分配に含まれる共用部分の電気代が上昇します。これを図に示します。

図 電気代30%上昇した場合のアワーレート間(設備)
図 電気代30%上昇した場合のアワーレート間(設備)
図 電気代30%上昇した場合のアワーレート間(人)
図 電気代30%上昇した場合のアワーレート間(人)

アワーレート間(設備)

電気代が30%上昇した結果、
直接製造費用 : アワーレート用償却費 140 万円 
電気代 18.4 → 23.9 万円
間接製造費用 : 間接製造費用分配 145 → 150 万円

アワーレート間(設備) : 1,720 → 1,790 円/時間 (+70円)

アワーレートは、70円/時間上昇しました。

アワーレート間(人)

間接製造費用 : 年間労務費の平均 447 万円/人
間接製造費用 : 間接製造費用分配 145 → 150 万円

アワーレート間(人) : 3,360 → 3,400 円/時間 (+40円)

アワーレートは、40円/時間上昇しました。

アワーレート間(人)とアワーレート間(設備)の合計は

5,080 → 5,190 円/時間 (+110円)

130円/時間増加しました。これによる、A1製品の原価の上昇を図に示します。

図 A1製品の原価、利益の変化
図 A1製品の原価、利益の変化

電気代が30%上昇した結果、

製造費用 : 10円増加
販管費込み原価 : 10円増加

その結果、50円の利益が40円に減少しました。以前と同じ利益にするには10円の値上げが必要です。

そこで値上を顧客にお願いすると「10円ぐらい企業努力で何とかしてくれませんか」と言われるかもしれません。しかし、電気代が30%上昇すれば、A社は年間390万円も費用が増加しています。この10円を値上げしなければ、年間で390万円もの利益を失うことになるのです。

運賃の上昇

運賃には2種類あります。

  1. 製品を顧客に運ぶ費用 (販管費に計上)
  2. 材料の運搬や工場間の移動の運賃 (製造原価に計上)

2. は内部費用で、間接製造費用です。対して1. は顧客の納品場所、納品方法により変わります。特に大きな製品や単価の低い製品は、原価に占める運賃の割合は高くなります。

燃料費や人件費の上昇により、運賃も年々上昇しています。これを価格に転嫁しなければ赤字になってしまいます。そこで製品1個の運賃を以下のようにして計算します。

製品1個の運賃

トラック1台の費用と1台に積める量から計算します。A社 A1製品の場合を図に示します。

図  A1製品の運賃計算
図  A1製品の運賃計算

トラックのチャーター代 : 5万円
1車の積載量 : 2,500個

1個の運賃 = チャーター代 積載量 = 50,000 2,500 = 20 円

1個の運賃は20円でした。
トラックのチャーター費用が1.5倍に上昇すると、

運賃 = 20 × 1.5 = 30 円

見積を10円上げる必要があります。
A社の年間の輸送費が2,000万円であれば、50%の運賃の上昇は1,000万円の増加です。10円値上げしなければ利益が1,000万円減少します。

しかし運賃を見積の販管費に入れてしまうと、値上げ交渉が難しくなります。そこで運賃は販管費と別にします。その場合、その分販管費を低くします。

例 A社
販管費 : 7,700万円
部品の輸送費の年間合計 : 2,000万円
運賃を除外した販管費 : 5,700万円

図 販管費から運賃の除外
図 販管費から運賃の除外

図では、運賃2,000万円を販管費から除外し、販管費は5,700万円、販管費レートは25%→18%になりました。

輸送条件が異なる場合

運賃の計算で困るのは、同じ製品でも輸送条件が異なる場合です。

例えば
条件1 混載便とチャーター便
条件2 顧客までの距離(H工場20km、K工場200km)

毎回異なった運賃を顧客に請求するが難しい場合、それぞれの比率から平均運賃を計算します。まず過去の実績から比率を調べます。

【納品場所】
H工場まで50km 60%
K工場まで300km 40%

【チャーター、混載比率】
チャーター便 80%
混載便    20%

この比率から全体の比率を計算したものを表に示します。

輸送方法比率全体比率
H工場60%チャーター便80 %48 %
混載便20 %12 %
K工場40%チャーター便80 %32 %
混載便20 %8 %

チャーター便のH工場とK工場の運賃を図に示します。

図 チャーター便でのH工場とK工場の運賃
図 チャーター便でのH工場とK工場の運

混載便でのA工場とB工場の運賃を図に示します。

図 混載便でのH工場とK工場の運賃
図 混載便でのH工場とK工場の運賃

集計結果を表に示します。

運賃全体比率運賃×比率
H工場チャーター便48 %2048 %9.6
混載便12 %5012 %6
K工場チャーター便32 %4032 %12.8
混載便8 %1008 %8
合計(平均運賃)36.4

平均運賃は36.4円、これを見積に入れます。

このように光熱費や運賃などの費用の上昇は原価や利益に大きく影響することが分かりました。
他にも設計ミスや加工ミスで失敗しても損失が生じます。特に専用設備など毎回設計する製品ではこうしたミスは避けられません。

では設計ミスや加工ミスは原価や利益はどれだけ変化するのでしょうか?

設計ミスや加工ミスによるコストアップについては○○を参照願います。

「原価計算と見積の基礎」の他のコラムは以下から参照いただけます
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「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

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【実践編】モデルを使ってロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失

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【原価計算と見積の基礎】17.不良損失によるコストアップ https://ilink-corp.co.jp/9590.html https://ilink-corp.co.jp/9590.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:33:11 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9590
【コラムの概要】

不良品の発生は、廃棄・修正・再作成の費用として原価を上昇させます。不良の原因は、製造のばらつき、作業ミス、あいまいな合否基準など多岐にわたります。損失額は、修正や再作成の費用で計算され、特に大量生産では利益を大幅に圧迫するため、損失金額を現場に示し、迅速な原因究明と対策を講じることが重要です。

材料価格の変動による原価の影響は○○に、
材料歩留や材料ロス率、スクラップ価格の変動による原価の影響は○○
で述べました。

ここでは不良による原価の影響について述べます。
不良品を廃棄したり修正すれば原価は上昇します。

本来は「不良は放置せず、不良対策が終わるまで生産は止めるべき」ですが、現実には顧客の納期もあり、十分な対策ができないまま生産を続ける場合もあります。

この不良は原価にどれくらい影響するのでしょうか?

不良の原因

不良とは何でしょうか。

不良は「規格を外れた製品」のことです。
ではなぜ規格を外れるのでしょうか。
代表的な原因を示します。

製品のばらつき

大量生産では、製品の品質(特性値)はばらつき(誤差)があります。誤差の分布は、一般的には釣り鐘型の分布(正規分布)になります。

図 正規分布
図 正規分布

分布のすそ野はなだらかに広がっていて、生産量が多ければ公差を外れた(すそ野の端)ものが増えます。大量生産では不良は避けられないのです。

ばらつきが大きくなる原因は

  • 設備の能力不足
  • 作業者のスキル不足のため、製造条件の調整が不十分
  • 工程能力以上の品質の製品を製造
  • 設計上の製品の品質が不足し、要求品質を安定して達成できない
  • 設備の劣化や作業者のスキル不足で工程能力が低下

など様々です。

作業者のミス

設備に問題がなくても、作業者が操作をミスしてしまうこともあります。人は100%ミスなく作業するのは困難です。ミスが起きにくい、あるいはミスをしても不良が出ないやり方を工夫します。

あいまいな合否基準

合否基準があいまいだと、発注側、受注側の解釈の相違により、良品・不良品の判定結果が変わります。傷や汚れ、色合いなどは定量的な判定が難しく、五感による官能検査が行われます。官能検査は検査員の主観で良品・不良品の判定が変わります。しかも顧客(買う側)の立場が強く、つくる側が良品だと思っても顧客から不良品とされてしまうこともあります。

では、この時の損失金額はどのように考えればよいのでしょうか。

これは不良品をどう処置するかで変わります。

不良損失の考え方

不良品の処置には

  • 不良品をそのまま使う
  • 修正して使用する
  • 再作成する

3つがあります。
この修正や再作成にかかった費用が不良損失の金額です。図にこういった不良品の処置の種類を示します。

図 不良品の対処の種類
図 不良品の対処の種類
不良品がそのまま使える場合

機能に影響のない不良、軽微な不良のため、そのまま納入する場合です。あるいは納期が迫っているため、不良品が使えるのでそのまま納入する場合です。
その際、顧客は文書「特別採用申請書 (特採) 」の提出を求めます。この文書の作成や顧客との打合せにかかった時間(コスト)も損失金額です。

不良品を修正して使える場合

不良品を修正する際、新たに製造指図書を発行する会社と発行しない会社があります。前者の場合、新たに発行した製造指図書に修正にかかった工数を記録し、その工数から損失金額を計算します。
製造指図書を発行しない場合、修正工数を修正前の製造指図書か、日報に記録します。

不良品が使えない場合

不良品が使えない場合

  • 不良品の数の分、納入数を減らす
  • 不良品の分、別途作成する

この2つがあります。

  • 納入数を減らす場合、廃棄した分の原価が損失金額です。
  • 再作成する場合、再作成費用が損失金額です。

不良品を廃棄する場合、材料が再利用できる場合と再利用できない場合があります。
樹脂成形は不良品を粉砕して再利用できます(ただし品質の厳しい製品は再利用できません)。 その場合、損失金額は製造費用のみです。材料費は損失に含まれません。

大量生産での不良損失の金額

大量生産は不良はゼロではありません。大量生産では不良の損失コストを原価に組み込んでおきます。

樹脂成形B社

樹脂成形B社 B1製品は、図に示すように不良率が0.5%でした。

図 樹脂成形品B1製品の不良損失1
図 樹脂成形品B1製品の不良損失1

不良品50個(不良率0.5%)はすべて廃棄し、損失分を補填するため50個多く生産しました。
製造原価 : 29.1円

損失金額= 29.1 × 50 = 1,455 円

1個当たりの損失金額 = 損失金額 ロット数 = 1,455 10,000 = 0.15 ≒ 0.2 円

不良発生前に3.3円あった利益は0.2円 (6%) 減少しました。もし常に0.5%不良が発生するならば、損失金額を最初から見積に入れておきます。
一方、1個当たり0.2円の損失は現場も軽視しがちです。しかし、気づかない間に不良率が増加すれば、損失金額はもっと増えます。

不良率が10倍の5%に上昇した場合を図に示します。

図 樹脂成形品B1製品の不良損失2
図 樹脂成形品B1製品の不良損失2

不良数は500個、その分500個多く生産しました。

損失金額 = 29.1 × 500 = 14,550 円

1個当たりの損失金額 = 損失金額 ロット数 = 14,550 10,000 = 1.45 ≒ 1.5 円

3.3円あった利益は1.5円 (55%) 減少し、半分以下になってしまいました。
しかし「不良率が5%!」と現場に注意を促しても、慢性的に不良が発生していれば、現場に危機感が生まれません。そこで不良率でなく、損失金額を現場に示します。利益が大幅に減少している(場合によっては赤字になっている)ことを現場に伝えて、粘り強く対策を行います。

一方、樹脂成形の場合、不良品を粉砕して再び成形できることがあります。樹脂成形品は原価に占める材料費が高いので、材料が再利用できれば損失金額は小さくなります。図に材料が再利用できる場合の損失金額を示します。

図 樹脂成形品B1製品の不良損失3
図 樹脂成形品B1製品の不良損失3

不良数は500個、損失は加工費用のみです。1個当たり損失金額は14.1円です。これは不良を廃棄した場合の37%でした。

損失金額 = 14.1 × 500 = 7,050 円

1個当たりの損失金額 = 損失金額 ロット数 = 7,050 10,000 = 0.71 ≒ 0.7 円

廃棄した場合の1.5円と比べ損失金額は0.7円に減少しました。それでも1個当たり0.7円の損失が発生しています。しかも500個余分に生産しなければならず、時間当たりの出来高が低下します。

しかし、材料が再利用できるため、現場は不良に無関心になっていることがあります。しかし不良は工場の出来高を減らし生産性を低下させています。

評価よりも対策

不良の損失を減らすためには「その期やその月の損失金額がいくらか」よりも、不良が発生した時点で「正確な状況の把握とスピーディーな対策」が重要です。その上で製品毎、ロット毎の不良率や損失金額を監視します。不良率が悪化するようであれば直ちに手を打ちます。

不良の原因には様々なものがあります。発生するタイミングも様々です。その都度原因を突き止めて対策しなければなりません。また不良には自社だけでなく、顧客に協力してもらわないと解決できないものもあります。

  1. 製造プロセスが不安定
    寸法など特性値が安定しない。ばらつきが大きい。温度などの環境の変化、作業者の違いなどで変化が大きい。
  2. 製品の設計品質が不安定
    そもそも図面の公差が工程に対し厳しい。形状、材質に問題があり必要な形状や精度を実現するのが容易でない。
  3. 製造工程、検査工程のミス
    作業者の作業ミスや機械の設定ミス、検査の見逃しなどヒューマンエラー
  4. 顧客と品質の考え方に相違がある
    傷や色むら、バリ、製品の振動や異音など官能検査の部分で顧客と合否判断が違う

このような問題(不良)は、製造の担当者だけでは解決できません。特に(4)などは上司や顧客も巻き込んで取り組む必要があります。

このように不良の増加は原価に大きく影響することが分かりました。

他にも光熱費や運賃などの費用が上昇すれば利益は減少します。

では光熱費や運賃などの費用が上昇が多発した場合、原価や利益はどれだけ変化するのでしょうか?

経費の増加によるコストアップについては○○を参照願います。

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本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。

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【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

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【基礎編】アワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本
【実践編】モデルを使ってロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失

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【原価計算と見積の基礎】16.歩留とスクラップ費用の影響 https://ilink-corp.co.jp/9587.html https://ilink-corp.co.jp/9587.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:32:39 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9587
【コラムの概要】

材料費は、加工ロス(切削の取り代や端材、成形時の付着など)を考慮し、材料歩留(投入量に対する完成品の割合)を用いて計算されます。歩留改善は原価低減に直結し、発生したスクラップを売却できる場合はその金額を材料費から差し引くことで、より正確な原価が計算できると具体例と共に説明しています。

材料価格の変動と原価について○○で説明しました。

ここでは材料歩留と材料ロス率、スクラップ価格の変動による原価の影響について述べます。

材料歩留と材料ロス率

購入した材料は100%製品にならず材料のロスが発生することがあります。
その場合の材料費は以下の式で計算します。

材料費 = 材料単価 × 使用量 ×(1 + 材料ロス率)

材料ロスの原因

切削加工など除去加工
  • 必要な寸法精度に仕上げるための取り代
  • 定寸材から切り出す場合、切断代と端材
板金プレス加工など成型加工
  • 板材から切り出した端材
樹脂成形など粉体・液体材料
  • 設備や容器に付着して製品にならない材料
  • ランナーなど金型の経路で固まった材料

などがあります。
これを材料歩留〈注2〉といいます。材料費を正しく計算するには、材料歩留を計算します。材料歩留を改善すれば、原価は下がります。

〈注2〉
歩留とは、インプットに対するアウトプットの比率です。歩留には
材料歩留 : 投入した原材料に対する完成品の割合
製品歩留 : 生産数における良品の割合
などがあります。これらを単に歩留と呼ぶこともあります。本コラムは、混同を避けるため、製品歩留、材料歩留と明記します。

切粉や端材を回収業者が買ってくれる場合、その分材料費が下がります。スクラップがお金になる場合、材料費の計算にスクラップ費用も入れます。
これは以下の式で計算します。

材料重量 = 製品重量 + スクラップ重量

材料歩留 = 製品重量 材料重量

材料費 = (材料単価 × 材料重量) - (スクラップ単価 × スクラップ重量)

切削加工の材料歩留の計算例

切削加工では、材料寸法は完成寸法に取り代をプラスします。図では、完成寸法に対し片側で3mmの取り代としました。その結果、
材料寸法 : 106mm
製品重量 : 7.8kg
材料重量 : 9.3 kg

図 切削材料の材料歩留の例
図 切削材料の材料歩留の例

材料歩留 = 製品重量 材料重量 = 7.8 9.3 = 0.84 ≒ 84 %

材料単価 : 300 円/kg

材料費 = 9.3 × 300 = 2,790 円

棒状・板状の材料を定寸材から切断する場合、端材が生じます。端材の分、材料歩留は悪化します。
図では、素材はφ50×1,000mmの定寸材で長さ29mmで切断します。切断のロスを1mmとしました。

図 定寸材から切り出して使用する場合
図 定寸材から切り出して使用する場合

その結果、定寸材から33個取れました。定寸材の価格を取り数33で割ると、材料費は139円でした。

1個の材料重量 : 0.44kg
定寸材のkg単価 : 300円/kg
定寸材の重量 : 15.3kg
定寸材の価格 : 4,590円

材料歩留 = 製品重量 材料重量 = 0.44×3 15.3 = 0.95 ≒ 95 %

プレス加工の材料保留の計算例

図は、プレス加工や板金加工などで四角の板材から丸く切り出す例です。

図 プレス加工(一列配置)の場合の材料歩留
図 プレス加工(一列配置)の場合の材料歩留

製品重量 : 0.098kg
材料重量 : 0.14 kg
材料単価 : 120 円/kg
材料費 : 16.8円

材料歩留 = 製品重量 材料重量 = 0.098 0.14 = 0.7 ≒ 70 %

製品が円形の場合、図のように三列を千鳥に配置すれば、製品の面積の比率が上がり、材料歩留は向上します。

図 三列を千鳥に配置した場合
図 三列を千鳥に配置した場合

1列配置の場合、材料費は16.8円、材料歩留は70%です。しかし3列配置の場合、材料費は14.6円、材料歩留は80%になります。

材料費低減率 = 改善前材料費-改善後材料費 改善前材料費 = 16.8-14.6 16.8 = 0.13 ≒ 13 %

材料費は13%低減できました。プレス加工は、原価に占める材料費の比率が高く、材料歩留を改善すれば原価は大きく下がります。

「原価計算と見積の基礎」の他のコラムは以下から参照いただけます
本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。

「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】

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【実践編】モデルを使ってロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失

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経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

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https://ilink-corp.co.jp/9587.html/feed 0
【原価計算と見えない赤字】15.材料価格の変動によるコストアップ https://ilink-corp.co.jp/9584.html https://ilink-corp.co.jp/9584.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:32:01 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9584
【コラムの概要】

製造原価に大きく影響する材料費について解説。材料の種類や購入に伴う副費を説明し、変動する材料費への対応として、原価の上昇分を値上げ交渉する方法と課題を述べている。

 
検査追加によるコストアップについて【原価計算と見積の基礎】14.検査追加によるコストアップで述べました。

材料価格が上昇した場合、原価はどう変わるでしょうか?

材料費の割合が高い製品は、材料価格が変動すれば原価が大きく変わります。そこで材料価格の変動を原価に細かく反映させます。

それに対し、材料費の割合が低い製品は、材料価格の変動を原価に細かく反映してもメリットは多くありません。

材料費について

  1. 材料費の種類
  2. 材料価格の変動と値上げ交渉

の3点を述べます。
 

1. 材料費の種類

 
材料には図1に示す様々なものがあります。

図1 材料の種類


原材料には、固体、粉体や液体、植物や動物など有機物があります。

固体 : 金属材料(棒やブロック形状、板材)など
    粉体や液体 : 樹脂(ペレット)、化学製品、食品など
有機物 : 野菜も果物や食肉など農産物、水産物など
部品 : メーカーの完成品やボルト、ナットなどの資材

原料と材料の違いは、製造工程で物理的・化学的変化があるかどうかです。

原料 : 物理的・化学的な変化がある
材料 : 物理的・化学的な変化がない

です。部品とは、自社の製造工程では加工せずに、そのまま組み立てるものです。

原材料は、固体、粉体・液体、有機物により材料歩留やロス率の考え方が異なります。

また材料費は直接材料費と間接材料費があります。

直接材料費(主に材料費) : 主要材料、購入部品
間接材料費(製造経費) : 補助材料、工場消耗品、消耗工具器具備品

これを図2に示します。

図2 材料費の種類


直接材料費
【原材料、部品】

  • 主要材料・購入部品
  • 部品表に使用量が記載され、製品毎に原価が明確

補助材料費
【補助材料費】例 ボルト・ナット、電線、溶接スタッドなど

  • まとめて購入され、間接製造費用として計上
  • 部品表に使用量が記載され、製品毎に原価が明確(受払記録がある)

【工場消耗品費】例 油・塗料、結束バンド、ボルト・ナット

  • まとめて購入され、間接製造費用として計上
  • 部品表に使用量が記載されず、製品毎に原価があいまい(受払記録がない)

この分け方は企業によっても違います。例えば塗料は、設備メーカーでは原価に占める割合が低く工場消耗品です。

しかし、塗装工場では塗料は原材料(主材料)です。使用量を製品毎に管理して原価に組み込みます。ボルト・ナットも企業により補助材料費だったり、工場消耗品だったりします。

【消耗工具器具備品費】例 刃物、砥石など

  • まとめて購入され、間接製造費用として計上
  • 製品による消耗度合いが不明

切削工具の中で特定の製品で消耗が大きいものは、その製品の原価に入れます。

材料の費用は材料費だけではありません。他にも材料の購入に伴って発生する費用があります。これは材料副費と呼ばれます。(図3)

図3 材料の購入に伴って発生する費用

材料副費には

  • 材料の発注・受入・検収に伴って発生する費用
  • 材料の購入に伴って発生する費用(保険・税金など)
  • 材料の輸送・保管に伴って発生する費用

があります。海外から材料を直接購入する場合は、関税や手数料も発生します。
材料副費の例を以下に示します。( )内は経理での仕訳科目の例です。

【外部で発生する費用】

    • 運送費・荷役費 (荷造運賃)

海外から購入する場合、以下の費用も発生します。

  • 輸出入運賃   (荷造運賃・輸出入運賃)
  • 関税        (輸出入税金)
  • 買取手数料・保険料 (輸出入雑費)

一方、材料の発注や受入には下記のような社内の費用も発生します。
【内部で発生する費用】

  • 検収・整理のための人件費 (労務費)
  • 保管のために倉庫を借りている (保管料)
  • 注文・支払事務の人件費  (労務費・販管費)

材料副費は、材料費、労務費、製造経費、販管費などに計上されます。

材料副費は材料の購入に伴って発生しますが、材料の購入と発生時期がずれ、複数の材料をまとめて計上されるため、どの費用がどの材料に対応するのかわかりません。また運送費や保管料は販管費になっていることもあります。

従って、材料副費も含めた材料費を正確に計算するのは困難です。そこで材料副費は間接製造費用として現場に分配します。

ただし材料を国内と海外のどちらから調達すべきか判断する場合は、材料価格だけでなく、材料副費も含めて判断しなければなりません。

単価は海外の方が安くても、まとめ買いが必要だったり保管費用や倉庫へ運ぶ運賃が必要だったりして、海外の方が高くなっているかもしれません。
 

2. 材料価格の変動と値上げ交渉

 原価に占める材料費の比率が高い製品の場合、材料価格が変動すれば原価は大きく変わります。そこで原価の上昇分を値上げ交渉します。

悩ましいのは、材料費が頻繁に変動する時です。市場価格が頻繁に上がったり下がったりする材料もあります。

顧客が毎月材料費を改訂してくれればいいのですがそうはいきません。図6は材料費が徐々に上昇する例です。

図6 値上げが続く材料費の価格交渉

材料費の上昇が続くため、4月に顧客と値上げ交渉を行いました。

交渉には時間がかかり、発注単価が変わったのは半年後の10月でした。その間も材料価格は上昇し続け、10月の価格は4月より15円高くなっていました。

値上げ交渉しないよりはましなのですが、結局元の利益になりませんでした(実際には発注価格が改訂されるまで、もっとかかった例もあります)。

それならば将来の材料費の上昇も見込んで値上げしたいところですが、これは難しいです。


 

経営コラム【原価計算と見積の基礎】の一覧はこちらを参照願います。

製造業の値上計算と価格交渉については「経営コラム 製造業の値上交渉」を参照願います。
 

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【基礎編】

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  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

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【原価計算と見積の基礎】14.検査追加によるコストアップ https://ilink-corp.co.jp/9581.html https://ilink-corp.co.jp/9581.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:31:19 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9581
このコラムの概要

製品の検査強化は品質向上に不可欠ですが、コスト増大も招きます。人件費や設備費に加え、検査時間の増加は生産効率を下げ、製品原価を引き上げます。しかし、不良品流出による損失やブランドイメージの低下を防ぐメリットもあります。コスト増大だけを問題視するのではなく、不良品発生による損失と比較検討し、品質とコストの最適なバランスを見極めることが重要です。

 
段取時間の短縮と外段取化について【原価計算と見積の基礎】13.段取時間の短縮で述べました。検査が追加された場合は原価はどうなるでしょうか?

検査費用が最初から見積に入っていれば問題はありません。しかし、見積にない検査をすれば原価は増えています。
あるいは、当初は無検査や抜取検査でした。しかし不良が流出したため全数検査を追加した場合です。全数検査の分、原価が増えています。

この検査の損失について

  1. 検査の種類
  2. 検査費用の違い

を述べます。

1. 検査の種類

検査の種類は大きく分けると

① 全数検査
② 抜取検査
③ 無検査

の3つです。


図1 抜取検査と全数検査

全数検査

 製品をすべて検査する方法です。確実ですが、その分コストがかかります。プレス加工など加工時間が短い製品は、生産時間よりも検査時間の方が長く原価は大きく上昇します。

一方、全数検査でも検査漏れは起きます。全数検査をしても100%良品とは限りません。例えば、人が目視で検査する目視検査では、見逃しがどうしても起きてしまいます。

抜取検査

一定量のサンプルを抜き取って検査する方法です。抜き取ったサンプルの結果を統計的手法を用いて判定します。

図2の検査は、1,000個から10個を抜き取り「不合格品が1個以内なら合格」でした。不合格品が2個あれば、そのロットは不合格です。その場合、このロットは全数検査をします。

この抜取検査の方法はJIS(JIS Z 9002~9004、Z9015)に詳しく記載されています。実際はJISに規定された方法でなく「1,000個生産したから5個抜き取って検査」と抜取り数を適当に決めていることもあります。

製品の強度や溶接・半田付けなど接合部の強度は、破壊しなければ測定できません。従って検査したものは使えません。硬さ測定も製品にくぼみをつけるため、検査したものは使えません。こうした製品は抜取検査しかできません。

抜取検査の課題は、

  • 不良品が流出することがある
  • 誤判定がある

この2点です。これはサンプルからロット全体を(統計的手法で)推定するためです。つまり100%良品を保証することは抜取検査ではできないのです。

その一方、強度測定のように抜取検査でしかできない検査があります。今日、品質に対する要求は厳しく、顧客は「100%良品」を求めます。しかし抜取検査は100%良品を保証できません。だからといって全数検査をしても100%良品とは限りません。

100%良品を保証するには、以下の2点が重要です。

  • ポカヨケのような不良品をつくらない仕組みをつくって、100%良品ができるようにする
  • ばらつきを抑えて不良の発生確率を低くする。

では、この抜取検査の費用はいくらでしょうか。

抜取検査の場合、1個当たりの検査費用は、検査費用に抜取りの比率をかけて計算します。

無検査

検査しないことです。

  • 規格から外れても、後工程や客先で発見できる
  • 規格から外れても、その影響は限られるので検査費用をかけるまでもない
  • 規格に対し、製品の品質が十分に高い

このような場合、無検査で製造します。

3種類のどの検査方法を採用するかは、製品の特長や品質に対する考え方によって異なります。

2.検査費用の違い

 見積に全数検査が入っていないのに、全数検査を追加すれば原価は増えます。赤字になることもあります。何とか全数検査をやめたいところです。

そこで顧客に全数検査の廃止を理解してもらうために、コストダウンを訴えます。では、検査をやめるといくらコストダウンになるのでしょうか?

無検査、抜取検査、全数検査でどれだけ原価が変わるのか、具体的な数値で確認します。
 

機械加工A社 A1製品の場合

機械加工A社 A1製品の原価を無検査、抜取検査、全数検査で比較します。検査は各寸法をノギス、マイクロメーターで行いました。

検査時間 : 3分(0.05時間)
検査のアワーレート : 2,350円/時間

検査費用を以下に示します。

【全数検査】
検査費用=検査のアワーレート×検査時間
=2,350×0.05
=117.5 ≒ 120 円 

全数検査追加による原価の上昇は120円でした。

【抜取検査】
抜取検査の数 : 100個中5個抜取

A1製品の抜取検査、全数検査の製造費用と利益を図2に示します。

図2  A1製品 検査追加による製造費用と利益

検査費用       利益
無検査 : 0円   無検査 : 50円
抜取検査 : 6円   抜取検査 : 44円
全数検査 : 120円   全数検査 : ▲100円
抜取検査追加では、利益は6円減少し、全数検査では、利益は100円の赤字でした。

検査費用が見積に入っていない場合、全数検査を追加すれば原価は大幅に増加します。

抜取検査は1個あたりの検査費用が5/100に減少します。そのため検査費用は6円、抜取検査の影響は多くありません。そのため抜取検査の費用を原価と考えない企業もあります。

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  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

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