製造原価 | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 数人の会社から使える原価計算システム「利益まっくす」 Wed, 15 Oct 2025 04:53:44 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.7.4 https://ilink-corp.co.jp/wpst/wp-content/uploads/2021/04/riekimax_logo.png 製造原価 | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 32 32 【製造業の値上げ交渉】22. 少し高くても受注2 指値とコストダウン https://ilink-corp.co.jp/13403.html https://ilink-corp.co.jp/13403.html#respond Sun, 08 Sep 2024 02:51:20 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=13403
このコラムの概要

製造業が顧客の指値に応じるには、まず正確な原価計算で対応可能か見極める必要があります。もし指値が原価を下回る場合は、諦めずに徹底したコストダウンを追求します。具体的な策としては、原材料の見直し、工程効率化、設備の稼働率向上などがあります。これらの努力を顧客に示し、信頼関係を築きながら、利益を確保できる最適な価格での受注を目指すことが重要です。

新規の引き合いがあった場合、取引先が発注金額を指定(指値)することがあります。

この場合、指値で受注しなければだめでしょうか。

なぜ取引先は指値をするのでしょうか?

それは開発段階から原価を管理する原価企画を行っているためです。
 

原価企画とは?

今はどのメーカーも競合との価格競争が厳しく、販売価格は高くできません。

そこで利益を出すには、原価を抑えなければなりません。

もし開発が終わって原価を集計し、原価が高すぎれば赤字で販売することになってしまいます。大抵は生産中にコストダウンを行い利益が出るようにします。

しかしあまりに原価が高ければ、生産開始前に再度設計をやり直したり、最悪販売中止になったりします(かつて企業で開発をしていた時、そういった経験をしました)。

そこで多くのメーカーで、図のように目標原価を開発段階で設定する原価企画を行います。

図 原価企画

製品企画の際に市場価格を決めて、それに対する原価、開発費の回収、利益と販売費などの数値計画を立てます。

この目標原価を展開して、購入部品費、社内での組立・加工費、工場経費に展開します。

複雑な製品では、これをさらにユニットごとに展開します。
 

図 目標価格の割り付けと目標価格のオーバー

図 目標価格の割り付けと目標価格のオーバー

もし各ユニットに展開した原価を集計し、目標価格を大幅にオーバーすれば設計の見直しをしなければなりません。

原価の7~8割は設計で決まってしまいます。高く設計してしまった製品を安くつくるのは困難なのです。
 

指値

ここで設定した原価から逆算して、各部品の目標価格を決めます。

これが指値です。

ではどうやって価格を決めるのでしょうか?

実績がある部品は過去の実績価格から決めます。

実績のない部品は、類似部品の過去の価格を参考に推測します。

実際は、製品の目標原価が厳しく、そのため指値も低くなります。

ではその価格で本当につくれるかというと、具体的な根拠はない場合が多いです。取引先でその部品の製造工程まで展開して、各工程の加工時間とアワーレートから指値を決めることは多くありません。

あるいは取引先でコストテーブルが整備されていれば、コストテーブルを元に指値を計算します。

このコストテーブルは、部品の大きさや表面積など、何らかのパラメーターから部品の原価を概算するものです。

しかし概算なのでコストテーブルの金額が実際の原価と合っているとは限りません。部品によっては計算と合わないものもあります。

指値は経営目標

つまり指値は、
「この金額でなければ目標価格で売れない、あるいは目標利益が得られない」
という目標値です。

図 目標価格から指値への展開

図 目標価格から指値への展開

残念ながら原価企画の段階で、近年の様々な費用まで配慮されることは多くありません。製造業では「原価は下げるもの」という考えがあるためです。

そのため新製品を従来の製品より安く販売する、あるいは従来の製品よりも利益を増やそうとすれば指値はどんどん低くなります。

それは現実の原価と乖離します。

本来は低価格で製造するには、低い原価でできるように設計から見直さなければならないのです。
 

安く調達するには、安くつくる必要

その点、安くつくることについて中国メーカーは優れています(品質の問題はありますが)。

かつて二輪市場が拡大していた中国市場で、ホンダは安価なコピーメーカーに手を焼きました。

そこでホンダは、コピーメーカーの1社 海南新大洲摩托車と提携するという奇策に出ました。

提携後、ホンダが海南新大洲摩托車で見たのは「彼らがホンダも考えられない方法で安くつくっていた」ことでした。中国国内でし烈な価格競争を行うコピーメーカーは、安くつくることに関して多くのノウハウがあったのです。

そこでホンダは、品質面で妥協できない部品のみホンダのサプライヤーの部品に変えさせ、それ以外はコピーメーカーの製品そのままでホンダブランドをつけることを認めました。

その結果、このコピーメーカー製ホンダの二輪車は他のコピーメーカーから市場を奪い取ることに成功しました。さらにこの海南新大洲摩托車のサプライチェーンを活用して、部品を安く調達し、タイやベトナムで安価な二輪車を生産し、市場シェアを拡大しました。タイやベトナムで売れているホンダの二輪車の価格は、日本の半分近い価格です(最近は円安で差は縮まりましたが)。

一方、量産メーカーは生産を開始したから、改善を行ってコストを下げていきます。


注) 生産現場の改善活動は、作業者の自主的な活動として、カイゼン(KAIZEN)と呼ばれるため、一般的な改良を意味する改善とは区別して、以降はカイゼンと記述します。

 

定期的に原価低減を要請する問題

生産開始後も定期的に発注価格マイナス〇%を要求されることもあります。

仕入先もこうした要求が定期的に来ることは分かっているため、生産する中でカイゼン点を探して、コストダウンします。

あるいは、メーカーの全社的なコスト低減活動の一環として、原価低減○%という目標が出されたり、一部の製品のみ市場での価格競争力が低いため、「価格協力」と称して一律○%の価格低下を求められたりします。
 

限られるカイゼンの効果

しかし現実にはカイゼンでできるコストダウンは限られます。

「カイゼンに終わりはない」

と、継続してカイゼンする姿勢は大切です。しかしこれまでもずっとつくってきた製品の原価は、頑張ってカイゼンしても下がる金額はわずかです。

ただし材質や加工方法まで変えれば、原価は大きく下がります。

例えば切削加工からプレスやダイキャストに変える、

金属から樹脂に変えて一体成型する、

このようなカイゼンをすれば原価は大きく下がります。しかしこのような変更は設計変更が必要なため、メーカーと協力して行う必要があり、仕入先だけでは困難です。

しかも定期的な価格引下げには、それ以上大幅な原価低減が必要なのです。
 

実はもっとコストダウンが必要

取引先から価格引き下げ5%の要請があった場合、すべての費用を5%引き下げる必要があります。

しかし原材料は頑張って交渉しても下がりません。そして部品には材料費が原価の50%を占めている場合もあります。

その結果、受注金額が5%低くなった場合、製造費用(製造時間)はもっと下げなければなりません。

例えば、架空のA社のある製品で受注価格が5%低くなった場合の加工時間の短縮を計算します。

この会社は
販管費が製造原価の20%ありました。

材料費 : 500円
製造費用 : 500円
製造原価=材料費+製造費用= 1,000円

受注金額は1,260円でした。

販管費は製造原価の20%なので
販管費=1000×0.2=200 円

その結果、利益は
利益=受注金額-製造原価-販管費

=1260-1000-200=60 円

利益60円は 原価+販管費 の5%でした。

5%価格引下げでも利益が出るようにするには

取引先から5%の価格引き下げの要請がありました。
受注価格=1260×(1-0.05)=1197円

材料費、販管費(比率)、目標利益はそのままとすれば
(販管費+製造原価)=1197-60=1137円

つまり1000円の製造原価を947.5円にしなければ、同じ利益が得られません。

この1,000円のうち材料費500円、材料費は下げられなければ、製造費用のコストダウン目標は

製造費用=製造原価-材料費=947.5-500=447.5円 (-10.5%)

製造費用を500円から447.5円(-10.5%)に引き下げなければなりません。

つまり5%の価格引き下げに対して、同じ利益にするためには10.5%の製造費用削減が必要です。

図 価格引き下げと原価低減

図 価格引き下げと原価低減

もし製造費用を10%下げる、つまり製造時間を10%短縮する具体的な方法がなければ、根拠のない一方的な価格引下げです。
 

低すぎる指値は買いたたきの可能性

このように適切な根拠のない一方的な価格引下げや指値は、下請法違反という見解を国は出しています。

そこでこのような価格引下げの要請があった場合、できる限り要請の文書を保管しておきます。この文書が下請法違反の証拠になります。
 

過剰品質になっていないか?

取引先の目指すのは目標価格の実現です。そのためには本当はつくり方を見直す必要があります。

そこで図面や仕様で過剰な品質になっているところがないか探します。そのようなところが見つかれば取引先と協議します。

「心配だから入れた公差」、「念のために入れた注記」があるかもしれません。その1文が仕入先の生産の効率を引下げ、原価を引き上げているかもしれません。
 

安くても品質リスクのある仕入先と取引しますか?

メーカーの最大の課題は、品質リスクです。市場クレームやリコールになれば多額の費用が発生します。そして市場クレームやリコールには仕入先の部品の品質不良が原因のものもあります。

こういった品質リスクを考えれば、いくら安くてもリスクのある仕入先に発注するでしょうか?

取引先のこのような状況も踏まえ、自社の適正価格を説明して理解を求めます。
 

低すぎる価格

中には高い値段を出せるのに、低い金額を出してしまう場合もあります。

私の経験ですが、ある製品の重要な基幹部品の見積を仕入先に依頼しました。

出てきた見積は、自分の想定よりもかなり低い金額でした。この部品は他ではつくれないため競合はなく、もっと高い金額で発注しました。残念なことに、この仕入先はその後、経営が大幅に悪化してしまいました。

本当にあの値段で利益が出ていたのか、高く売れるチャンスを生かす考えはなかったのか、やるせない気持ちになりました。
 

取引先が原価を誤解

取引先が低い価格を求める原因に仕入先の販管費と利益を誤解していることもあります。これについては○○を参照願います。

指値でどこも受けない

私の経験ですが、原価企画を行い、目標価格を設定して指値を決めても、どこも指値では受けなかったこともありました。

取引先が指値で発注できるかは、低い指値でも受注する仕入先があるかどうかです。

これは取引先のサプライチェーンの規模と仕入先によります。

仕入先に仕事が十分にあれば、低すぎる金額の案件を無理して受注する必要がありません。その結果、どこも指値で受けてくれないことが起きます。

もし金額が低すぎて断った案件が、しばらく経って再び「何とかできないか」と打診されれば、それはどこも指値で受けなかった案件です。その時は強気で指値よりも高い価格で交渉できます。

この記事を書いた人

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経営コラム 製造業の原価計算と見積 https://ilink-corp.co.jp/10604.html https://ilink-corp.co.jp/10604.html#respond Mon, 29 Jan 2024 08:34:44 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=10604 工場の管理者、原価管理、経理など実務に携わる方たちが感じる原価計算・見積の疑問について、実務者の視点でわかりやすく説明しました。

原価の基本的な考え方、アワーレート計算などをわかりやすく説明した【原価計算と見積の基礎】と、実際に発生する費用の集計や原価への組み込みを詳細に解説した【実務における原価の疑問】があります。

原価計算と見積の基礎

 

個々の製品の原価の計算方法、人と設備のアワーレートの計算方法、間接費や販管費の計算方法など基本的な計算をわかりやすく書きました。


【原価計算と見積の基礎】1. なぜ原価が必要なのか?

様々な費用が上昇する今日、原価が分からないと値上交渉ができません。他にも原価が分からないことで起きる問題は…


【原価計算と見積の基礎】2. 製造原価の計算方法(1)

製造原価を計算する費用は決算書の値を元にします。決算書には工場で発生する様々な費用が計上されています。例えば…


【原価計算と見積の基礎】3. 製造原価の計算方法(2)

個々の製品の見積に間接製造費用と販管費も入れる必要があります。間接製造費用は間接部門の労務費や工場の経費など…


【原価計算と見積の基礎】4. 人のアワーレートの計算方法

人のアワーレートは人の年間費用を実際に付加価値を生んでいる時間で割って計算します。一方各現場には賃金の異なる人がいるため…


【原価計算と見積の基礎】5. 設備のアワーレートの計算方法(1)

設備のアワーレートは設備の年間費用を実際に付加価値を生んでいる時間で割って計算します。この年間費用のうち設備の購入費用は…


【原価計算と見積の基礎】6. 設備のアワーレートの計算方法(2)

設備のアワーレートの具体的な計算を説明します。設備が年間で半分しか稼働しなければ…


【原価計算と見積の基礎】7. 間接費用の分配

人と設備以外の費用、間接製造費用と販管費の計算について説明します。工場には直接製品を製造する直接部門と…
 

以降、個々の製品の原価、工程別の原価については「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】にあります。
 

原価計算と見えない赤字

 


【原価計算と見積の基礎】8. 高い設備は原価が高いのか

設備の大きさ(価格)による原価の違い、設備によって現場を分けるかどうか、ラインの場合の設備の考え方などを説明しました。同じ設備でも大きさによって償却費やランニングコストが異なる場合は…


【原価計算と見積の基礎】9. 自動化とロボットの活用

無人加工と有人加工の違い、ロボットを導入した場合の原価を説明しました。有人加工は加工中、人と設備の費用が同時に発生しますが、無人加工の場合は…


【原価計算と見積の基礎】10. ロットの減少によるコストアップ

段取がある場合、製品1個の段取費用はロットが小さくなると大きくなります。具体的にどのくらい違うのか、機械加工A社樹脂成型加工B社の事例で…


【原価計算と見積の基礎】11. 段取時間の短縮

ロットが少なくなれば原価に占める段取費用が大きくなります。この段取時間を短縮すれば段取費用はどのくらい小さくなり原価はどうなるでしょうか?実は段取は2種類あり…


【原価計算と見積の基礎】12. 検査追加によるコストアップ

検査費用が最初から見積に入っていれば問題ありませんが、検査費用が見積に入っていない場合、検査を追加すれば原価は上がります。この検査には全数検査と抜取検査があり…
 

このコラムの続きは、書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」にあります。
 

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製造業が値上げ交渉で顧客から「販管費が高い」「利益が多すぎる」と指摘されるのは、情報の不透明さが原因です。この問題に対処するため、販管費の内訳を明確にし、その費用が製品の品質維持やサービス向上にどう貢献しているかを具体的に説明することが重要です。また、適正な利益は企業の持続的な成長に不可欠であることを丁寧に説明することで、顧客の誤解を解消し、適正な価格での交渉を成功に導くことができます。

 
取引先から見積書のアワーレートが高いと言われる原因について【【製造業の値上げ交渉13. なぜ取引先はアワーレートが高いというのだろうか?で述べました。

同様に取引先から見積書の「販管費(管理費)が高い」と言われることがあります。「管理費は5%」と取引先は言います。しかし販管費が5%では赤字になってしまいます。

どうすればいいのでしょうか?
 

販管費は管理費でない

 
このようなことはよく起きます。この販管費については誤解があります。

それは販管費は管理費ではないということです。これはどういうことでしょうか?
 

販管費とは?

 
販管費は、販売費及び一般管理費の略です。販管費は会社で発生する費用の中で、製造に直接関係しない費用です。これは販売費と一般管理に分けられます。

販売費 : 商品や製品を販売するための費用

一般管理費 : 会社全般の業務の管理活動にかかる費用

具体的には、

販売費は、営業の人件費や社用車の費用、顧客への発送運賃や広告宣伝費などです。

一般管理費は事務、経理などの人件費、役員報酬や旅費交通費などです。
 

工場には不可欠な費用

 
販管費は製造に直接関係しない費用ですが、販管費がなくて工場は運営できるでしょうか?

事務や経理の仕事の大半は工場で発生する費用の処理です。製造に直接関係しないといっても彼らがいなくては工場は成り立ちません。販管費と製造原価は、会計上の扱いが異なるため財務会計では分けて計上します。しかしどちらも製造には不可欠な費用です。

近年は事務や経理などが増えて、中小企業の販管費も増加しています。平成21年度発行「中小企業実態調査に基づく経営・原価指標」によれば中小企業 製造業の販管費の平均は18.1%です。

表1 中小企業の販管費と利益率    単位 : %

 製造業平均卸売業平均小売業平均
販管費18.114.229.7
利益率3.31.40.4

出典 平成21年度発行「中小企業実態調査に基づく経営・原価指標」


販管費か製造原価かは、会計事務所の裁量によって変わる

 
発生した費用を「製造原価に計上するのか」、「販管費に計上するのか」は、経理や会計事務所の判断でも変わります。販管費と思われるものが製造原価に計上されたり、製造原価と思われるものが販管費に計上されるのは珍しくありません。

図1 製造原価と販管費

管理費とは?

 
一方見積書では、販管費でなく「管理費」になっていることがあります。

管理費は、建設関係では工事管理費と呼ばれ、工事の進捗管理や資材、業者の手配などの費用です。一般的には商品やサービスの発注、納期管理、納品に関する費用です。商品やサービスの価格の一定割合を管理費として、商品やサービスの価格に上乗せします。

製造業も外注に依頼したものを顧客にそのまま販売する場合、仕入金額の〇%を管理費として見積に記載します。これは外注への発注、納期管理、検品などの費用です。これは商社でいえば口銭に相当します。
 

製造業の販管費は原価の一部

 
商社の場合、年間の口銭合計が販管費を上回れば、利益が出ます。口銭の比率が少ない儲からない商品でもたくさん売って売上合計が大きければ、口銭の合計も大きくなり利益が出ます。つまり薄利多売でも売上が大きければ利益が出るのです。

一方製造業の場合、生産量は設備や人員で決まってしまいます。生産量を急には増やせないため、受注が急に増えても対応できません。商社のように薄利多売でも売上を増やして利益を出すことはできません。そのため個々の受注で「販管費も含めて利益が出る」ようにしなければなりません。

そう考えると工場の販管費は商社の口銭とは違い、原価の一部です。この管理費と販管費の捉え方の違いが、取引先が低い管理費を求める原因のひとつです。

もうひとつ取引先が管理費を低く考える原因があります。
 

取引先は本当の原価をわかっていない可能性

 
それは取引先が本当の原価をわかっていない可能性があることです。

例えば取引先が自社の工場で製造した部品の原価を計算する際は、原価は工場の製造原価とその工場の販管費の合計です。
 

社内売買の価格と社外販売の価格

 
図2は、A事業部のA1工場で製造した部品を、B事業部のB1工場が使用した場合です。B事業部はこの部品をA事業部から購入します。その価格は、A1工場の製造原価とA1工場の販管費(又は管理費)の合計です。

図2 工場原価と本社費

しかしこの価格は社内売買の価格です。この部品を社外に販売する場合は、A1工場の原価に本社部門の費用を加えなければなりません。なぜなら本社はお金を稼いでいないため、本社の費用は各事業部が分担しなければならないからです。

この部品を社外に販売したことがなければ、A1工場の人は社外に販売する価格を知りません。そのため社内売買の価格を部品の価格だと思ってしまいます。しかし、この部品を外注に発注すれば、その見積には外注の販管費や利益が含まれます。これは自社でいえば本社負担費用も含んだ価格です。

他にも「利益が高い」と言われることもあります。
 

利益は儲けでない

 
利益率8%で見積をつくったところ、取引先に「利益が高すぎる!」と言われました。しかしこの会社は8%の利益が必要なのです。なぜ高すぎると言うのでしょうか?

実は利益は「儲け」でないのです。
 

利益の本当の姿

 
決算書の売上から製造原価と販管費を引いたものが営業利益です。
(正確には在庫の増減で変わりますが、説明を簡単にするためにこれは省略します。)

営業利益から、利息などの営業外費用を除き、法人税を支払った残りが税引き後の利益です。

一方、製造原価や販管費の中の減価償却費は、実際には現金の支出のない費用です。従ってその分お金が残ります。そこで税引き後の利益に減価償却費を加えた金額が会社に残るお金です。

これを図3に示します。

図3 営業利益と実際のお金の動き

この会社は

売上高2億円、営業利益は1,600万円、

売上高に対する利益率は8%、

利益は多く見えます。

営業利益から、借入金の利息100万円、法人税600万円を引いた税引後の利益は、900万円でした。

さらに減価償却費が500万円あるので、残るお金は1,400万円です。

この会社は借入金があり年間の返済額は1,000万円です。

その結果、毎期400万円のお金が残り、これが設備の更新の原資になります。

この400万円を毎年内部留保して、設備の更新時期が来ればこのお金を使います。あるいは借入して設備を更新する場合、この400万円が新たな借入金の返済原資になります。このように見ていくと、この会社の営業利益1,600万円は決して多くないことが分かります。

もし赤字受注が続き利益がなければ、設備の更新時期が来ても更新できません。近年、製造業の廃業の原因に、経営者の高齢化の他に、利益、内部留保が少なく設備の更新を断念することがあります。特に高額の設備を使用する場合、内部留保が少なく利益もなければ新たな借入もできません。このような理由から、利益が少ない、あるいは赤字であれば、利益が出る金額に値上げしなければなりません。

ところが値上げ交渉で「値上げ金額が高すぎる!」と言われることがあります。これはどうしたらよいでしょうか?

これについては【製造業の値上げ交渉】15. いくら値上げするのが適切だろうか?を参照願います。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

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経営コラム ものづくりの未来と経営

経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、技術革新や経営、社会の変革などのテーマを掘り下げ、ニュースからは見えない本質と変化を深堀したコラムです。「未来戦略ワークショップ」のテキストから作成しています。過去のコラムについてはこちらをご参照ください。
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【原価と見積の疑問】2.直接原価計算の方が良いと言われたが? https://ilink-corp.co.jp/9601.html https://ilink-corp.co.jp/9601.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:39:43 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9601  
【原価と見積の疑問】1.間接費用の分配とは?では間接製造費用の分配について述べました。

一方売上が不足する場合、在庫を増やせば利益を増やせます。なぜ在庫を増やせば利益が増えるのでしょうか。
 

全部原価計算での利益

 
財務会計の原価計算が全部原価計算だからです。全部原価計算では在庫を製造した費用は、その期の原価になりません。

全部原価計算では利益は以下の式で計算します。

売上原価=期首在庫+製造原価-期末在庫

営業利益=売上-売上原価-販管費

従って期末在庫が増えれば売上原価は少なくなります。売上原価が少なくなれば利益が増えます。

具体的な数字で見てみます。表1は、ある企業の1か月の売上と利益です。
          
        表1 全部原価計算の利益 単位 : 万円                   

売上 5,000
期首在庫 0
当期製造原価 4,000
期末在庫 0
当期売上原価 4,000
売上総利益 1,000
販管費 600
利益 400

その月の売上5,000万円、製造原価4,000万円、販管費600万円、利益は400万円でした。翌月、売上が半分の2,500万円になりました。

表2に示すように材料費、外注費など変動費は減少しました。しかし固定費は変わらないため、製造原価は3,000万円でした。その結果1,100万円の赤字でした。

そこで工場の稼働は維持して前月と同量を生産しました。売れなかった半分は在庫とします。これを表3に示します。

           表2 売上が半分になった場合 単位 : 万円

売上 2,500
期首在庫 0
当期製造原価 3,000
期末在庫 0
当期売上原価 3,000
売上総利益 ▲500
販管費 600
利益 ▲1,100

 

           表3 在庫を増やした場合 単位 : 万円

売上 2,500
期首在庫 0
当期製造原価 4,000
期末在庫 2,000
当期売上原価 2,000
売上総利益 500
販管費 600
利益 ▲100

製造原価は4,000万円ですが、在庫の生産分2,000万円はその月の売上原価になりません。そのため売上原価は2,000万円になり、赤字は100万円に減少しました。

全部原価計算で利益を管理するとこうしたことが起きます。利益を出すように現場に圧力をかけると現場は在庫を増やしてしまいます。

だから全部原価計算でなく直接原価計算の方がよいといわれています。これはどういうことでしょうか。
 

直接原価計算での利益

 

変動費のみで原価を計算するのが直接原価計算です。直接原価計算では利益は以下の式で計算します。

変動売上原価=期首在庫+変動原価(変動費のみ)-期末在庫

営業利益=売上-変動売上原価-固定原価(固定費)

ここで一般的な変動費と固定費を図1に示します。

図1 製造原価と販管費の変動費と固定費

製造原価の変動費は主に材料費と外注加工費です。他にも、製造経費の一部に変動費がありますが金額はそれほど大きくありません。

販管費の変動費は製品を運ぶ運賃や消耗品などです。本コラムは簡単にするために、変動費は材料費と外注費、固定費は労務費、製造経費、販管費とします。

表2の売上が半分になった例を、直接原価計算と全部原価計算で比較したものを表4に示します。

       表4a 売上が半分になった場合(全部原価計算) 単位 : 万円

売上 2,500
期首在庫 0
当期製造原価 3,000
期末在庫 0
当期売上原価 3,000
売上総利益 ▲500
販管費 600
利益 ▲1,100

       表4b 売上が半分になった場合(直接原価計算) 単位 : 万円

売上 2,500
期首在庫 0
変動原価 1,100
期末在庫 0
当期変動売上原価 1,100
限界利益 1,400
固定原価 2,500
利益 ▲1,100

この場合、在庫が増えていないため、全部原価計算と直接原価計算の赤字1,100万円は変わりません。在庫を増やした場合を表5に示します。

       表5a 在庫を増やした場合(全部原価計算) 単位 : 万円

売上 2,500
期首在庫 0
当期製造原価 4,000
期末在庫 2,000
当期売上原価 2,000
売上総利益 500
販管費 600
利益 ▲100

       表5b 在庫を増やした場合(直接原価計算) 単位 : 万円

売上 2,500
期首在庫 0
変動原価 2,200
期末在庫 1,100
当期変動売上原価 1,100
限界利益 1,400
固定原価 2,500
利益 ▲1,100

全部原価計算では在庫が増えたため100万円の赤字になりました。

直接原価計算では在庫を増やしても原価(変動売上原価)は変わらず、1,100万円の赤字も変わりません。

このように、全部原価計算では在庫を増やせば利益は増えます。実際に決算を良くするために期末に在庫を増やすことがあります。しかし、売上が下がっているのに在庫を増やせば、売れない在庫が増えてしまいます。売れない在庫は資金繰りを悪化させます。だから直接原価計算がよいと言われます。

ただし、証券市場、金融機関、税務署など外部に出す財務諸表は全部原価計算で計算しなければなりません。直接原価計算が使えるのは内部管理(管理会計)のみです。

では工場管理のための原価計算は直接原価計算にすべきでしょうか。これは在庫を利益と結びつけることで起きる問題です。

在庫量は利益と関係なく、「需要に応じ、欠品を出さず短納期を実現するための最小限」にすべきです。在庫が多ければ

  1. 資金繰りが悪化
  2. 在庫管理にコストがかかる
  3. 在庫が陳腐化して売れなくなる
  4. 設計変更があると修正しなければならない

こうした見えないコストや廃棄ロスが発生します。

一方、原価の視点では「在庫も生産すれば工場の稼働率は上がり原価は下がる」、つまり在庫も生産すれば原価は下がります。そこで管理者は

  • 最大在庫量を守り、現場がヒマでもそれ以上は生産させない
  • 最大在庫量を守った上で、工場の稼働が最大になるようにする
  • 受注不足の場合は、受注を増やすように努力する
  • 工場の成果は、利益(売上原価)でなく生産高(製造原価)で評価

このようにします。「売れない在庫をつくらない」のは大原則です。その上で、管理者は受注を増やして工場の稼働が最大になるように努めます。

他にも直接原価計算はメリットがあります。それは全部原価計算には固定費の分配の問題があるからです。
 

固定費を分配しない直接原価計算

 

全部原価計算は変動費と固定費を合わせて原価を計算します。この固定費には間接部門の人件費や工場の経費があります。これらを各現場に分配してアワーレートを計算します。

しかし、固定費の中で間接部門の費用や製造経費はどの現場にどのくらいかかったのか正確にはわかりません。

また固定費の分配ルールは「これが正しい」というものがありません。しかも固定費の分配の仕方によって原価は変わります。

一方、変動費のみで原価を計算する直接原価計算は固定費の分配はありません。従って固定費を分配しない直接原価計算の方がよいといわれています。

図2に全部原価計算と直接原価計算の原価の構成を示します。

図2 全部原価計算と直接原価計算

この直接原価計算は以下の場合には使いやすい方法です。

  • 原価に占める変動費の割合が高い
  • 売価が市場価格で決まるため、緻密な原価計算を必要としない

例えば、自動車メーカーは製造原価の約80%が外部からの購入部品(変動費)です。こういった製品であれば、変動費のみの直接原価計算でも問題ありません(実際の自動車メーカーは製造費用も原価に入れていますが。)

一方、直接原価計算を価格決定に使用すると、適正な価格がわかりにくいという問題があります。
 

価格決定の問題 見込み生産と受注生産の違い

 

見込み生産と受注生産で価格決定の考え方は異なります。
 

見込み生産と受注生産の違い

 

【見込み生産】
図3に示すように、自社商品を市場に販売する場合、どの商品をどのくらい生産するかは自分達で決めます。一方価格は市場の需要と市場への供給で決まります。原価が高いからと高い価格をつけても、競合が安ければ売れません。

その反面、価格を下げれば、利益は減りますが販売量は増えます。その結果、利益の合計は増えることもあります。

【受注生産】
顧客や取引先からの受注に応じて生産します。受注量は顧客の計画で決まります。価格を下げたからといって受注量は大きく増えません。

図3 見込み生産と受注生産の違い

見込み生産の場合、個々の製品の利益の多寡よりも「受注量×利益」が最大化するように価格を決めます。

受注生産の場合、原価を適切に計算し、高く受注するように顧客と交渉します。

ただし、受注がとても少なく固定費の回収が不足する場合は、価格を下げてでも受注を増やします。ではいくらまで下げてもよいでしょうか。
 

粗利と営業利益

 

いくらまで下げれば利益があるのか、これは製造業と小売業で異なります。

小売業の場合、販売価格から(仕入)原価を引いたものが売上総利益(粗利益)です。

製品1個の粗利益は

粗利益=販売価格-仕入原価

ここで

変動費 : 仕入原価
固定費 : 販管費

とすると

限界利益=売上-変動費 

限界利益=粗利益 (図4)。

図4 小売業の変動費と固定費の例

図4では

売価 : 1,000円
仕入原価 : 760円
粗利 : 240円
販管費 : 190円
利益 : 50円

毎月の粗利益の合計が販管費を上回れば利益はプラス、下回れば赤字です。粗利益率が高い商品でも販売量が少なければ粗利益の合計は多くありません。

逆に、粗利益率は低くても販売量が多ければ粗利益の合計は多くなります。利益を増やすには、毎月の粗利益の合計を大きくします。

製造業では仕入原価でなく製造原価です。製造原価には、変動費と固定費があります。

製造原価=変動費(材料費・外注費)+固定費(製造費用)

粗利益=受注金額-製造原価

限界利益=受注金額-変動費

従って限界利益≠粗利益です。これを図5に示します。

図5 製造業の変動費と固定費の例

製造業は製造原価の中にも固定費があります。そのため、粗利益でなく限界利益の合計を管理します。限界利益の合計が固定費を上回れば利益はプラス、下回れば赤字です。

一方、生産量は工場の設備と人員で決まります。受注が多くても急には生産量を増やせません。小売業のように価格を下げて大量に販売するのは困難です。1つ1つの受注で確実に利益を確保しなければなりません。
 

直接原価計算で売価を決めるリスク

 

直接原価計算の問題は、受注価格と利益の関係が見えにくいことです。先の製品の見積を全部原価計算と直接原価計算で比較したものを図6に示します。

図6 直接原価計算と全部原価計算の見積

a. 全部原価計算では

製造原価 : 760円
販管費 : 190円
目標利益 : 50円
見積金額 : 1,000円

です。50円値引きすれば利益はゼロです。

b. 直接原価計算では
変動費 : 380円
目標限界利益 : 620円
見積金額 : 1,000円

です。実際は販管費の一部にも変動費がありますが、計算を簡単にするためすべて固定費とします。

例えば、920円で受注した場合、限界利益は540円です。利益はまだあるように思えますが実際は、920円は販管費込み原価950円に対し30円マイナスの赤字です。しかし直接原価計算ではわかりません。

受注生産では1件1件の受注で確実に利益が出るようにしなければ利益が確保できません。そこで全部原価計算で製造原価と販管費を明確にします。
 

一方、生産開始に先立って金型や治具などが必要なことがあります。これらは生産に先立って発生するためイニシャル費と呼ばれます。

金型や治具の費用をイニシャル費として一括で支払わず、製造する製品価格に上乗せして払う場合があります。これがイニシャル費の回収です。

このイニシャル費の回収については【原価と見積の疑問】3.イニシャル費の回収はどうすればいいのか?を参照願います。

経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

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【原価計算と見積の基礎】7.間接費用の分配 https://ilink-corp.co.jp/9566.html https://ilink-corp.co.jp/9566.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:20:53 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9566
このコラムの概要

製品の正確な原価計算と見積もりには、間接費(家賃、光熱費など)の適切な分配が不可欠です。これらの費用を各製品に配賦する際、売上高や作業時間など、企業の状況に合った基準を選択することが重要です。これにより、製品ごとの収益性が明確になり、価格設定や経営戦略の精度が高まります。不適切な配賦は原価を歪め、企業の利益を損なう可能性があります。

 
6.設備のアワーレートの計算方法(2)ではアワーレート(設備)の計算について説明しました。ここでは人と設備以外の費用、間接製造費用と販管費の計算について説明します。
 

意外と大きい間接部門の費用

間接製造費用とは

 工場には直接製品を製造する直接部門と、製品を直接製造しない間接部門があります。間接部門には生産管理、資材調達、物流、品質管理などがあります。間接部門の費用は間接製造費用です。

また直接部門にも部長や課長など管理に専任し直接製造しない人たちもいます。現場の中にも生産準備など補助的な作業を行い、どれだけ作業すれば、どれだけ生産できるのか明確でない作業者もいます。彼らの費用も間接製造費用です。

A社の部門構成を図1に示します。

図1 A社の部門構成

A社の直接製造部門

  • マシニングセンタ1(小型)
  • マシニングセンタ2(大型)
  • NC旋盤
  • ワイヤーカット放電加工機
  • 組立
  • 出荷検査
  • 設計

A社は設計費用も見積に入れているため、設計も直接製造部門です。間接部門は

  • 生産管理
  • 資材発注
  • 品質管理
  • 受入検査

です。また製造課の課長やマシニングセンタの現場のパート社員は間接作業者です。 

設計や検査は直接部門か?間接部門か?

 加工、組立の現場は直接製造部門です。では検査や設計は直接部門と間接部門のどちらでしょうか?
これは、設計費用や検査費用が見積に含まれるかどうかによります。(図2)

図2 設計費用の考え方

【設計費用】
設計費用は、以下の2種類があります。

  1. 自社製品として設計し、製造・販売する製品の設計費用
  2. 顧客の要求に基づいて設計・製作する製品の設計費用

1.の設計費用は開発費で、製造原価の間接製造費用です。あるいは設計費用が研究開発費の場合、販管費のこともあります。

2.の場合、設計費用が見積に含まれるかどうかで、設計費用が直接製造費用か、間接製造費用か変わります。

設計費用が見積に含まれる場合、設計費用は直接製造費用です。この場合、製品毎に設計時間を集計し、設計時間から設計費用を計算し、原価に加えます。そうしないとその製品が儲かったかどうかがわかりません。

設計費用が見積に含まれない場合、設計費用は間接製造費用です。この場合、他の間接部門の費用と同じように各現場に分配します。

【検査費用】
検査費用も同様です。検査費用が見積に含まれる場合、検査もお金を稼いでいます。その場合、検査は直接部門です。検査費用は直接製造費用です。
一方、検査費用が見積に含まれなければ、検査は間接部門です。検査費用は間接製造費用です。

受入検査は見積に含まれないため、受入検査は間接部門で、受入検査の費用は間接製造費用です。
 

これも大きい「工場の経費」

 
もうひとつの間接製造費用は工場の経費です。図3に代表的な工場の経費を示します。

図3 製造経費

図3のうち消耗品・消耗工具費の一部は本来は材料費です。もし消耗品、消耗工具の中で、特定の製品で消費量が多いものがあれば、その費用は直接製造費用として、その製品の製造原価に入れます。

例えば、ある製品は特殊な刃物を使用して加工します。その刃物は高価で消費量も多いため、その刃物代のみ直接製造費用としてその製品の見積に入れます。 

間接製造費用の原価への組込み1 (簡便な方法)

 間接製造費用を原価に組み込む際、2つの方法があります。

ひとつは個々の製品の直接製造費用に一定の比率(間接費レート)をかけて間接製造費用を計算する方法です。この場合、間接費レートは第2章 式2-6より

間接費レート= 先期の間接製造費用 先期の直接製造費用

A社の場合

先期の間接製造費用合計 : 4,680万円
先期の直接製造費用合計 : 1億1,820万円

間接費レート= 4,680 1億1,820 =0.396≒0.40

間接費レートは40%でした。従って

製造費用=直接製造費用×(1+間接費レート)
    =直接製造費用×(1+0.4)
    =直接製造費用×1.4

直接製造費用を1.4倍すれば、製造費用になります。 

間接製造費用の原価への組込み2 (現場の分配)

 間接製造費用を部門別に計算し各現場に分配する場合、本コラムでは以下のように行います。

  • 間接部門の費用は労務費のみとする。
  • 製造経費は間接部門には分配せず、各現場に直接分配する。

この間接部門の費用と製造経費を、各現場の直接時間、もしくは直接製造費用のいずれかに比例して分配します。

  • 直接製造費用に比例して分配
  • 直接製造時間に比例して分配 (人・設備)

設備の直接製造時間に比例して分配する場合、設備がない現場は人の時間を使用します。人の直接製造時間に比例して分配する場合、無人で加工する設備の現場は設備の時間を使用します。(図4)

ただし、特定の現場で多く消費している費用があれば、その現場固有の費用とします。

図4 間接製造費用の分配

直接製造費用に比例して分配

 直接製造費用に比例して分配する場合、各現場の直接製造費用を計算し、直接製造費用の大きい現場には、間接製造費用を多く分配します。直接製造費用が大きい現場は生み出す付加価値が高くたくさん稼ぐはずです。たくさん稼ぐ現場には、間接製造費用をたくさん負担してもらうという考え方です。 

直接製造時間に比例して分配

 直接製造時間に比例して分配する場合、各現場の直接製造時間を合計し、現場毎の直接製造時間の比率を計算します。直接製造時間の大きい現場に間接製造費用を多く分配します。直接製造時間が大きい現場は工場の資源(リソース)を多く使用し、生み出す付加価値も高いと考えます。その分間接製造費用をたくさん負担してもらう考えです。 

アワーレート間の計算

 どちらの分配ルールを採用するかで現場毎のアワーレートは変わります。しかしどちらが正解ということはないので、自社に合った方法を選択します。

アワーレート間(人)、アワーレート間(設備)は

アワーレート間(人)= 人の年間費用合計+間接製造費用分配 直接作業者の稼働時間合計

アワーレート間(設備)= 設備の年間費用合計+間接製造費用分配 直接設備の稼働時間合計

人の年間費用合計は、その現場の直接作業者と間接作業者の人件費の合計です。従って

アワーレート間(人)= 直接作業者人件費合計+間接作業者人件費合計+ 間接製造費用分配 直接作業者の稼働時間合計

また設備の年間費用合計は、その現場の直接製造設備の費用と間接製造設備の費用の合計です。従って

 

アワーレート間(設備)= 直接製造設備の年間費用合計+間接製造設備費用合計+間接製造費用分配 直接設備の稼働時間合計

A社マシニングセンタ1(小型)の現場の計算例

 A社マシニングセンタ1(小型)の現場の例を図5に示します。

図5 間接製造費用を含んだアワーレート(人)

A社は直接製造費用に比例して間接製造費用を分配しました。その結果、マシニングセンタ1(小型)の人の現場の間接製造費用の分配は580万円でした。

アワーレート間(人)= 直接作業者の人件費合計++間接作業者人件費合計+間接製造費用分配 直接作業者の稼働時間合計
= (1,672×10^4+115.2+580×10^4) 7,040
=3,363≒3,360円/時間

マシニングセンタ1(小型)の現場は

アワーレート(人) : 2,540円/時間
アワーレート間(人) : 3,360円/時間

この現場の間接製造費用を含んだアワーレート(設備)を図6に示します。

図6 間接製造費用を含んだアワーレート(設備)

マシニングセンタ1(小型)の設備の現場の間接製造費用分配は580万円でした。

アワーレート間(設備)= 直接製造設備費用合計++間接製造設備費用合計+間接製造費用分配 直接作製造設備の稼働時間合計
= (140+18.4)×4×10^4+0+580×10^4) 2,200×0.8×4
=1,724≒1,720円/時間

マシニングセンタ1(小型)の現場
アワーレート(設備) : 900円/時間
アワーレート間(設備) : 1,720円/時間 

「原価計算と見積の基礎」の他のコラムは以下から参照いただけます
本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。

「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】

経営コラム「原価計算と見積の基礎」を書籍化しました。
中小企業が自ら原価を計算する時の手引書として、専門的な言葉を使わず分かりやすく書いた本です。
【基礎編】アワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本
【実践編】モデルを使ってロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失

弊社執筆の原価計算に関する著作は以下からご参照いただけます

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中小企業が簡単に使える低価格の原価計算システムです。
利益まっくすの詳細は以下からお願いします。詳しい資料を無料でお送りします。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

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https://ilink-corp.co.jp/9566.html/feed 0
【原価計算と見積の基礎】3.製造原価の計算方法(2) https://ilink-corp.co.jp/9558.html https://ilink-corp.co.jp/9558.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:17:24 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9558
このコラムの概要

中小製造業における間接製造費用の分配とアワーレート計算について解説します。まず、間接費を直接製造費用に比例して現場ごとに配賦し、労務費や設備費、光熱費などを含んだアワーレートを算出します。このアワーレートに製造時間を掛けることで、正確な製造原価を把握できます。この方法は、合理的かつ実務的に原価計算を行うための重要なプロセスです。

 
【原価計算と見積の基礎】2.製造原価の計算方法(1)では工場で発生する必要と製造原価の構成について説明しました。

ここでは間接製造費用と販管費、見積金額の計算について説明します。

間接製造費用も原価の一部です。そこでこれらの費用も製品の原価に組み込みます。

では、どうやって間接製造費用を原価に組み込むのでしょうか。
 

間接製造費用の分配1 製品に直接分配

 
最も簡単な方法は直接製造費用に何らかのルールで分配〈注1〉する方法です。

〈注1〉
本コラムでは、間接製造費用を割り振ることを「分配」と呼びます。会計では割り振ることを「配賦」と呼びます。この配賦も「割り当てる」という意味です。
会計では「配賦」のほかに「賦課」という言葉もあり、以下のように使い分けています。

配賦:製造原価を計算する際に、間接費を何らかの基準(配賦基準)を用いて振り分けること

賦課:製造原価を計算する際に、「何に」「どれだけ」使ったのかがわかる直接費を振り分けること

「直接費は賦課して、間接費は配賦する」という表現します。しかし、本コラムでは難しい会計用語を用いず、一般的な「分配」を使用します。

原価計算の本には、分配基準の例として以下のものがあります。

  • 直接材料費
  • 直接労務費
  • 直接製造費用
  • 直接活動時間
  • 機械稼働時間
  • 生産量
  • 売上高

これらの分配基準は一長一短があります。

例えば「直接材料費に比例して分配する方法」は、製品によって材料費の比率が異なると間接製造費用が変わってしまいます。

そこで本コラムはこのような問題の比較的少ない「直接製造費用に比例する方法」を使用します。直接製造費用に対する間接製造費用の比率を、本コラムは「間接費レート」と呼びます。

間接費レートは、決算書の直接製造費用合計と間接製造費用合計から計算します。

間接製造費用は、直接製造費用に間接費レートをかけて計算します。

間接製造費用=直接製造費用×間接費レート

製造費用は、直接製造費用と間接製造費用の合計です。

製造費用=直接製造費用+間接製造費用
    =直接製造費用×(1+間接費レート)

この方法は、どの製品も直接製造費用に比例して間接製造費用を計算します。

しかし現場によっては間接製造費用がたくさん発生した現場とそうでない現場があります。その場合、次の方法で間接製造費用を各現場に分配して原価を計算します。
 

間接製造費用の分配2 各現場に分配

 
間接製造費用を部門別に計算し、各現場に分配する方法です。

例えばA社では、資材発注部門は、原材料を使う加工や組立の現場には関係しますが、検査や設計には関係しません。
そこで資材発注部門の費用は、加工と組立の現場に分配します。

このようにして各現場の直接製造費用と間接製造費用を計算し、その合計からアワーレートを計算します。これを図1に示します。

図1 間接製造費用の分配

 

財務会計の計算方法

 
財務会計では、この部門別の費用の計算は以下のように行います。

  1. 水道光熱費、消耗品費、修繕費などを各現場と間接部門に分配する
  2. 共用部の減価償却費、保険料、賃借料など共用部の費用を何らかの
    分配基準で各現場と間接部門に分配する(分配基準の例 人数、床専有面積、光熱費など)
  3. 間接部門の費用を各現場に分配

実際は、消耗品費や水道光熱費などは、各現場や間接部門がどれだけ使っているのか正確にはわかりません。またこれらの費用を各現場や部門に分配しても金額は低いので、そこに労力をかけてもメリットは多くありません。
 

直接時間、又は直接製造費用に比例して分配

 
そこで本コラムは、間接製造費用(製造経費と間接部門費用)は各現場の「直接時間」、または「直接製造費用」に比例して分配します。

例えば、A社の資材発注の費用は、加工と組立の各現場それぞれの直接製造費用に比例して分配します。ただし特定の現場が多く消費している費用があれば、その現場の費用を増やします。
 

間接製造費用を含んだアワーレート

 
こうして計算した間接製造費用と直接製造費用を現場毎に合計し、稼働時間で割ってアワーレートを計算します。

なお本コラムは、直接製造費用から計算したアワーレートと、直接製造費用と間接製造費用の合計から計算したアワーレートを区別するために、これをアワーレート間(人)、アワーレート間(設備)と表記します。


アワーレート間(人)の計算方法は、【原価計算と見積の基礎】4.人のアワーレートの計算方法

アワーレート間(設備)の計算方法は、【原価計算と見積の基礎】5.設備のアワーレートの計算方法(1)

6.設備のアワーレートの計算方法(2)

で説明します。
 

製造費用の計算式

 

間接製造費用を含んだ製造費用は以下の式で計算されます。

製造費用(人)=アワーレート間(人)×製造時間(人)

製造費用(設備)=アワーレート間(設備)×製造時間(設備) 

製造費用(人+設備)=製造費用(人)+製造費用(設備)

本コラムでは、製造費用は製造費用(人+設備)を指します。もし人と設備が同じ時間製造すれば、製造費用は以下の式になります。

製造費用=(アワーレート間(人)+アワーレート間(設備))×製造時間
    =(アワーレート間(人+設備))×製造時間 

ここでアワーレート(人+設備)は、アワーレート間(人)とアワーレート間(設備)を合計したものです。
 

A社のアワーレート間

 

この方法で計算したA社のアワーレート間(人)、アワーレート間(設備)を表1の右側に示します。

表1 アワーレート間(人)、アワーレート間(設備) 単位 : 円/時間

 アワーレートアワーレート間
設備設備
マシニングセンタ1(小型)2,3809003,3601,720
マシニングセンタ2(大型)2,3801,8003,4202,850
NC旋盤2,3807003,1501,470
ワイヤーカット2,2504002,400※550(890)
出荷検査1,7202,350
組立1,5301,920
設計2,7503,220

※ ワイヤーカットは段取のアワーレート、( )内は加工のアワーレート


マシニングセンタ1(小型)の現場のアワーレート間(人)は、

(直接製造費用のみの)アワーレート(人) : 2,380円/時間

(間接製造費用を含めた)アワーレート間(人) : 3,360円/時間

間接製造費用を含めると980円/時間増加しました。

アワーレート間(設備)は、

(直接製造費用のみの)アワーレート(設備) : 900円/時間

(間接製造費用を含めた)アワーレート間(設備) : 1,720円/時間

間接製造費用を含めると820円/時間増加しました。
 

製造原価の計算

 

複数の工程で製造する場合は、各工程の製造費用を合計します。
 

A1製品の製造原価

 

図2に複数の工程で製造したA社 A2製品の例を示します。

図2 複数工程での原価

3工程の製造費用の合計は1,060円でした。製造原価は製造費用に材料費と外注費を加えたものです。

製造原価=材料費+外注費+製造費用 

図2は、材料費450円、外注費50円なので、

製造原価=450+50+1,060
    =1,560円

製造原価は1,560円でした。
 

見積金額の計算

 
販管費は製造原価に一定の比率(販管費レート)をかけて計算します。

販管費=製造原価×販管費レート 

製造原価に販管費を加えたものを本コラムでは「販管費込み原価」と呼びます。(会計では「総原価」と呼びます。)

販管費込み原価=製造原価+販管費

見積金額は、販管費込み原価に目標利益を加えたものです。

目標利益は、販管費込み原価に「販管費込み原価利益率」をかけて計算します。

目標利益=販管費込み原価×販管費込み原価利益率

見積金額=販管費込み原価+目標利益 

販管費込み原価利益率の計算については、【原価計算と見積の基礎】8.販管費と利益の計算で説明します。
 

販管費、目標利益、見積金額

 

A社 A1製品 (マシニングセンタ1(小型)で製造)の原価、販管費、目標利益を図3に示します。

図3 見積金額

A社は、販管費レート25%、販管費込み原価利益率は8.7%でした。

販管費=製造原価×販管費レート
   =760×0.25=190円

販管費込み原価=製造原価+販管費
       =760+190=950円

目標利益=販管費込み原価×販管費込み原価利益率
    =950×0.087=83≒80円

見積金額=販管費込み原価+目標利益
    =950+80=1,030円

見積金額は1,030円でした。

アワーレートはどうやって計算するのでしょうか。

アワーレート(人)の計算方法は【原価計算と見積の基礎】4.人のアワーレートの計算方法で説明します。

「原価計算と見積の基礎」の他のコラムは以下から参照いただけます
本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。

「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】

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https://ilink-corp.co.jp/9558.html/feed 0
【原価計算と見積の基礎】2.製造原価の計算方法(1) https://ilink-corp.co.jp/9552.html https://ilink-corp.co.jp/9552.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:12:04 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9552
このコラムの概要

本記事では、中小製造業が押さえておくべき「製造原価の計算方法」について、実務に即した形で解説しています。製造原価は、材料費や外注費、労務費、設備費、間接費などで構成され、それぞれの費用の算出方法や考え方が丁寧に説明されています。さらに、これらの原価に販管費や目標利益を加えることで見積価格が決まるという、見積作成までの一連の流れも紹介。記事では、複雑になりがちな原価計算をシンプルに整理し、実際の業務で活用しやすい形で理解できるよう工夫されています。原価の「見える化」によって、根拠ある見積や価格設定を実現するための第一歩となる内容です。

 
【原価計算と見積の基礎】1.なぜ原価が必要なのか? では、工場が儲かっているかどうかの「ものさし」として、原価の必要性を説明しました。ここでは原価計算の方法について説明します。

製造業では、会社に入ってくるお金は製品の売上です。会社の費用はこの売上から賄われます。この費用が増えれば利益が減少します。

つまり会社の費用が増加することは、原価が増えることです。

言い換えれば「会社で発生する費用はすべて原価」です。つまり「ボールペン1本買っても原価は増える」のです。

この費用にはどのようなものがあるのでしょうか?
 

発生する費用はすべて決算書に書かれている

 
会社に入ってくるお金(売上)と出るお金(費用)、そして残るお金(利益)は、決算書に記載されています。

この決算書には図1に示す損益計算書、製造原価報告書があります。

図1 決算書の構成

この決算書の費用について、以下に説明します。
 

材料費

 
材料費は、製造原価報告書の材料費に計上されます。材料費は図2に示すようなものがあります。

図2 材料費


 
〈原材料〉

原材料には、原料と材料があります。

原料:製造工程で性質が変わるものです。

例えば、樹脂原料は粒上のペレットですが、成型機を通すことで
樹脂製品に変わります。

材料:製造工程で基本的に性質が変わらないものです。

鋼材は、加工機で切削することで形は変わりますが、
鋼材の性質は変わりません。

   ただし熱処理をすれば硬さは変わります。しかし硬さ以外は原型も性質もとどめているので、材料のままと考えます。

〈部品〉
購入した状態のまま使用するものです。

部品には、製造先によって購入品(メーカー)、外注品(外注)、内製品(社内)の3種類があります。

部品の中には、ボルトやピンのように使用量が多く、ひとつの製品に何個使用したのか管理していないものがあります。

その場合、材料費でなく工場消耗品(製造経費)とすることもあります。

〈工場消耗品〉
補修用材料、洗浄剤、オイル、燃料、包装資材など、生産活動に伴って消費されるものです。

多くは製品1個にどのくらい使用されているのかわかりません。あるものが原材料か、工場消耗品なのかは、企業によって変わります。

例えば、組立工場では塗料は消耗品ですが、塗装工場では、塗料は原価に占める割合が高いため原材料です。

〈消耗工具器具備品〉
スパナなどの工具や切削・研削工具などの刃物、測定工具など、資産にならない少額の工具や備品です。

機械加工工場は、切削・研削工具の消耗が激しく、これらは材料費とすることもあります。
また特定の製品で激しく消耗する工具は、その製品固有の材料費にすることもあります。

製品1個の材料費は以下の式で計算します。

材料費=単価×使用量
 

外注費

 
メッキ、塗装、焼入れなど製造工程の一部を社外に委託した費用です。大抵の場合、製品1個の外注費は明確です。

一方、外注先に支払う費用がすべて外注費とは限りません。中には、材料費や労務費もあります。これを図3に示します。

図3 外注先に支払う費用とその区分

外注に支払う費用には以下のものがあります。

〈材料費〉
外注先が仕入れた材料、部品を購入。
外注先が購入した材料を外注先が加工し完成部品として納入。

これらは会計上は材料費ですが、外注費に仕分けされることもあります。

〈外注費〉
外注先に材料(又は半加工品)を支給して、製造の一部を委託し、完成品、又は半加工品として納入。

〈労務費〉
外注先の社員が自社に来て、自社の工場内で製造の一部を請け負えば、これは派遣社員と同様に労務費です。

組立工程の一部を外注先に委託した場合、外注先の社内で行えば外注費ですが、外注先の社員が自社に来て作業すれば労務費です。

外注先に支払った費用でも、このように内容によっては材料費・外注費・労務費です。

しかし全部外注費として決算書に計上されていることもあります。財務会計上は問題ありませんが、原価計算では内容に応じて分ける必要があります。

また受注が増えたため、一部の製品の製造を外注に委託することがあります。その結果、同一製品で内製と外注の2つの原価ができます。この場合、元々内製の製品であれば内製の原価とします。

外注に出して原価が上がった場合は、「実績原価が上がった」と考えます。
 

労務費

 
製造原価報告書の労務費は、製造部門や間接部門など工場で働いている人たちの人件費です。
製品1個つくるのにかかった労務費は、作業者の1時間当たりの費用(アワーレート(人))に〈注1〉製造時間をかけて計算します。

労務費=アワーレート(人)×製造時間

A社の現場〈注2〉には図4に示す人たちがいました。

図4 製造現場の人たち


〈注1〉アワーレートは、チャージ、賃率、ローディングなどと呼ばれることもあります。意味は同じなので本コラムではアワーレートとします。アワーレートの時間単位は、1時間(円/時間)の他、1分(円/分)、1秒(円/秒)があります。

〈注2〉本コラムではアワーレートを計算する組織の単位を「現場」と呼びます。同じ部署でも設備の種類が異なりアワーレートも異なれば別の現場とします。
例えば、製造1課にマシニングセンタとNC旋盤があれば、現場1はマシニングセンタ、現場2はNC旋盤とします。

自社が雇用:
正社員、パート社員、実習生他にシニア社員を定年後、嘱託やアルバイトとして雇用する場合もあります。社長など役員が現場で作業していれば、役員報酬(販管費)の一部も原価計算では労務費です。

他社が雇用:
派遣社員や社内外注・請負これらが製造原価の労務費です。一方、図5に示す
派遣社員や社内外注の費用は、外注費や製造経費に計上されていることもあります。

図5 労務費以外に計上される人の費用

自社で雇用する人の費用の内訳:
正社員、パート社員、実習生、嘱託・アルバイトなど、自社が直接雇用する人の費用には以下のものがあります。

  • 賃金・給与
  • 退職金 (又は退職引当金)
  • 賞与 (又は賞与引当金)
  • その他手当
  • 法定福利費
  • 福利厚生費
  • 雑給

法定福利費や福利厚生費は、製造原価と販管費を分けずに、すべて販管費に計上されていることもあります。
また実習生に関する費用は労務費でなく製造経費の場合もあります。

派遣社員、社内外注など他社が雇用する費用:
派遣社員の費用は、企業によって労務費、外注費、製造経費など計上の仕方が異なります。また社内外注や請負は、外注費に計上されることがあります。

その場合、外注先が社内外注と加工外注の両方を行っていれば、加工外注の費用と社内外注の費用が一緒になっています。
原価計算では、外注費と労務費に分けます。

このように原価計算では人の費用は、決算書の費目を確認して適切に分類します。
 

製造経費

 
工場で発生する費用の内、材料費、労務費、外注費以外は、製造経費です。
ただし、総務、経理や営業など、製造に直接関係しない費用は販管費です。

製造経費には図6に示すようなものがあります。

図6 製造経費


 

販管費

 
販管費(販売費及び一般管理費)は、会社で発生する費用のうち製造に直接関係しない費用です。

これは図7に示すものがあります。

製造に直接関係しない費用とは何でしょうか。これは以下の2つです。

販売費 商品や製品を販売するための費用「販売費」
一般管理費 会社全般の業務の管理活動にかかる費用「一般管理費」

図7 販管費

工場では日々これらの費用が発生します。

原価を計算するためには、これらの費用を元に製品1個あたりの原価を計算しなければなりません。

この原価の構成はどうなっているのでしょうか。
 

製造原価の計算

 

製造原価の構成

 
図8にA社 A1製品の製造原価を示します。

図8 A1製品の製造原価の構成

A1製品は、材料費330円、外注費50円、製造費用380円でした。
製造原価は、材料費、外注費、製造費用の合計760円でした。

製造費用380円の内訳は、直接製造費用(人)、直接製造費用(設備)、間接製造費用です。

【直接製造費用】
製品を製造するのに直接携わった人や設備の費用で、その中で製品1個製造するのにどのくらい発生したのか、はっきりとわかる費用です。
これには人と設備の費用があります。

直接製造費用(人) : 人が直接関与して製造した費用
直接製造費用(設備) : 設備が直接関与して製造した費用

【間接製造費用】
物流や資材受入など製造に間接的に関わった人の費用です。加えて工場で発生する様々な費用(製造経費)も間接製造費用です。

また製造に直接かかわった費用でも、製品1個にどのくらいかかったのか正確にわからなければ、間接製造費用とします。
 

直接製造費用(人)とアワーレート(人)

 
直接製造費用(人)は、以下の式で計算します。

直接製造費用(人)=製造時間(人)×アワーレート(人)

製造時間(人) : 製品1個を製造するのにかかった人の時間
アワーレート(人) : 作業者1人が1時間作業した時に発生する費用

アワーレート(人)の計算は【原価計算と見積の基礎】4.人のアワーレートの計算方法で説明します。
 

設備の直接製造費用とアワーレート

 
直接製造費用(設備)は、製造にかかった設備の費用です。

直接製造費用(設備)=製造時間(設備)×アワーレート(設備)

製造時間 (設備) : 製品1個を製造するのにかかった設備の時間
アワーレート(設備) : 設備1台が1時間稼働した時に発生する費用

アワーレート(設備)の計算は【原価計算と見積の基礎】5.設備のアワーレートの計算方法(1)【原価計算と見積の基礎】6.設備のアワーレートの計算方法(2)で説明します。

例として、A社の現場毎のアワーレート(人)、アワーレート(設備)を表1に示します。

表1 A社の現場毎のアワーレート  単位:円/時間

 アワーレート(人)アワーレート(設備)
マシニングセンタ1(小型)2,380900
マシニングセンタ2(大型)2,3801,800
NC旋盤2,380700
ワイヤーカット2,250400
出荷検査1,720
組立1,530
設計2,750

現場によって、人件費や設備の費用が異なります。そのため、アワーレート(人)、アワーレート(設備)も現場によって異なります。
 

多品種少量生産では段取時間も見積に入れる

 
段取とは、品種の切替のことです。〈注3〉
 


〈注3〉段取は、大きく分けて以下の2種類があり内容は異なります。

(1) (すでに実績のある製品の) 品種の切替
(2) (過去に実績のない製品の) 生産準備

(1)の段取は、金型、材料、刃物、加工治具の交換、加工プログラムの切替、テスト加工と品質確認などを行います。

(2)の段取は、(1)に加え加工プログラムの作成やテスト加工、プログラムの修正などを行います。

プレス加工、樹脂成形加工のような量産工場は、段取は(1)を指します。段取の手順は決まっていて、できる限り早く行います。

一方、多品種少量生産や単品生産の工場は、段取は(2)のこともあります。

初めて製造する場合、プログラムや加工条件が適切でなければ不良品をつくってしまいます。従ってスピードだけでなく、的確な作業が求められます。

 

製品1個当たりの段取時間は

従って、ロット数が多ければ1個当たりの段取時間は短くなります。段取も含めた製造時間は、1個当たりの段取時間と1個の加工時間の合計です。

 

間接製造費用の分配

 
 

付加価値について

 
製造業は、材料を仕入れて製品に加工する事業です。

例えばA社は材料を330円で仕入れ外注に50円払って加工してもらいました。それを社内でA1製品に加工して1,000円で顧客に納入しました。(図9)

この時、工場が生み出した付加価値は、製品の価格1,000円から社外に払った費用(材料費と外注費の合計)380円を引いた620円です。

付加価値=売上-社外に払った費用

図9 付加価値


 

直接作業者と間接作業者

 
この付加価値を生む人が直接作業者です。
工場にはこの直接作業者以外に、ものを運んだり、生産管理といった付加価値を直接生まない人もます。その人たちを本コラムでは間接作業者と呼びます。

間接作業者の費用は間接製造費用です。
 

直接製造設備と補助的に使用する設備

 
多くの設備は「削る、穴を開ける」などの付加価値を生みます。こういった設備は直接製造設備です。

また設備には常時生産に使用され付加価値を生む設備以外に、たまにしか使われない設備もあります。

例えば、製品のひずみ取りに使用する油圧プレスは、製品にひずみが出た時だけ使用されます。製造工程が安定してひずみが出なければ使いません。

本コラムでは、このような設備を「補助的に使用する設備」と呼びます。

補助的に使用する設備は、どの製品にどのくらい使われたのか正確にわかりません。そのため、このような設備の費用は間接製造費用です。

言い換えると付加価値を生まない人や設備は「稼いでいない」人や設備です。しかし稼いでいない人や設備も良い製品をつくるには必要です。ただし、稼いでいない人や設備が増えれば、原価が高くなります。
 

具体的な間接製造費用

 
この間接製造費用を図10に示します。

図10 間接製造費用

【人の費用 (労務費) 】

  • 現場で生産準備や後処理など補助作業を行う作業者
  • 現場の管理者
  • 倉庫や工場内の物流(フォークリフトの運転)を行う作業者
  • 生産管理、品質管理など間接部門

 

【人以外の費用 (製造経費) 】

  • 現場にある直接製造設備以外の設備(補助的に使われる設備)
  • 測定機、フォークリフトなど間接部門の設備
  • クレーン、空調機など工場の共用設備
  • 工場の光熱費、借地代、税金などの費用

 
これらの間接製造費用も原価の一部です。そこでこれらの費用も製品の原価に組み込みます。

では、どうやって間接製造費用を原価に組み込むのでしょうか。

これは【原価計算と見積の基礎】3.製造原価の計算方法(2)で説明します。

「原価計算と見積の基礎」の他のコラムは以下から参照いただけます
本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。

「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

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経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

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https://ilink-corp.co.jp/9552.html/feed 0
経営コラム 製造業の値上げ交渉 https://ilink-corp.co.jp/9372.html https://ilink-corp.co.jp/9372.html#respond Mon, 08 Jan 2024 03:49:09 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9372 様々な費用が上昇する今日、中小企業にとって値上げ交渉は喫緊の課題です。

本コラムは、製造業、特に下請け企業が取引先と値上げ交渉する際に役立つ情報です。

主に私自身がメーカーの設計として協力会社と価格交渉した時の経験や発注する立場の考え方、また現在弊社の原価計算システムをご活用いただいているクライアント中小企業の値上げ交渉の事例などを参考にしました。

本コラムが皆様の値上げ交渉のお役に立てば幸いです。

値上げ金額はいくらだろうか?

値上げ交渉では、適切な値上げ金額を示す必要があります。

では、この製品はいくら値上げが必要でしょうか?

以下のコラムでは、原価と値上げ金額の計算方法、そして具体的な金額の例を示します。(タイトルをクリックすると表題のコラムに移動します。)


【製造業の値上げ交渉】1. 個々の製品の原価はいくらなのだろうか?

製造原価は、製造原価=材料費+外注費+製造費用、ここで製造費用は…


【製造業の値上げ交渉】2. 我が社の人と設備のアワーレートはいくらなのだろうか?

人と設備のアワーレートの計算方法は…


【製造業の値上げ交渉】3. 間接費用や販管費も原価に含まれるのだろうか?

間接費用や販管費も原価の一部です。それぞれの製品で間接費用や販管費がいくらなのかは…


【製造業の値上げ交渉】4. 人件費が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?

年々上昇する人件費、その結果、直接製造費用の他、間接製造費用、販管費も上昇…

【製造業の値上げ交渉】5. 電気代が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?
高騰する電気代、影響は設備が直接消費する金額に加えて、全体の経費も引上げ…


【製造業の値上げ交渉】6. 値上金額は見積書にどのように入れればいいのだろうか?

具体的な値上金額と見積書への記入方法は…


【製造業の値上げ交渉】7. この製品、いくらが正しいのだろうか?

今出した見積、顧客から高いと言われたがこの金額でないと利益が出ない。適正価格とはいくら…


【製造業の値上げ交渉】8. 取引先から検査追加の要望があった。いくら高くなるのだろうか?

図面や仕様にない検査や工程が後から追加された場合は…


【製造業の値上げ交渉】9. 運賃が上昇すれば、いくら高くなるのだろうか?

運賃や梱包資材、梱包費用が原価と比べてある程度の金額がある場合は…

どのように交渉すればいいのだろうか?

必要な値上げ金額が分かりました。では、値上げ交渉はどのように行えばいいのでしょうか?

値上げ交渉で取引先は何を考えているのでしょうか?なぜ取引先はこの金額でできるはずだと言うのでしょうか?

値上げ交渉における取引先の主張と誤解、交渉をスムーズに進めるポイントなどを説明します。(タイトルをクリックすると表題のコラムに移動します。)

【製造業の値上げ交渉】10. 値上げ交渉は初めて、どう進めていけばよいのだろうか?

具体的な交渉の手順は…


【製造業の値上げ交渉】11. なぜ社員に任せたら値上げ交渉が進まないのだろうか?

値上交渉の手順を理解して、社員に値上交渉を指示しましたが…


【製造業の値上げ交渉】12. 取引先から値上の根拠を求められた。どうすればいいのだろうか?

値上交渉で顧客から値上げの根拠を求められる場合は…


【製造業の値上げ交渉】13. なぜ取引先はアワーレートが高いというのだろうか?

これは顧客とアワーレートの考え方が違うためです。その原因は…


【製造業の値上げ交渉】14. なぜ取引先は販管費が高い、利益が多いと言うのだろうか?

アワーレートの他にも販管費や利益が高すぎると言われることがあります。その理由は…


【製造業の値上げ交渉】15. いくら値上げするのが適切だろうか?

適正価格が判明してもいきなりその金額まで値上げを要求すると…


【製造業の値上げ交渉】16. 15年前の製品、赤字がひどくやめたい

中には15年前に受注した製品が値段が変わってないため、大きな赤字になっているものもあります。これは…


【製造業の値上げ交渉】17. 値上げするなら転注すると言うが、転注するのだろうか?

値上交渉で顧客から「値上げするなら他に出す」と言われることがあります。本当に転注するのでしょうか。これはどうすれば…


【製造業の値上げ交渉】18. なぜ取引先の担当者は値上げに応じてくれないのだろうか?

それには二つの理由が考えられます。ひとつは…


【製造業の値上げ交渉】19. 下請法や国のガイドラインを値上げ交渉に活かす方法

国の支援策とはどのようなもので、どう活用すればよいのか?…

製造原価の計算の基礎と原価の活用については「経営コラム 製造業の原価計算と見積」を参照願います。

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このコラムの概要

製造業の値上げ交渉成功は、個々の製品原価の正確な把握にかかっています。多くの企業が原価計算システムを導入していない、または活用しきれていないため、どんぶり勘定で見積もり、値引き要求に適切な判断ができず、赤字受注につながるリスクがあります。収益確保と持続的な経営のためには、原価計算システムの導入と原価改善コンサルティングの活用が不可欠です。正確な原価情報を武器に交渉に臨むことが、利益を確保するための重要な一歩となります。

 
値上げ交渉では、まず値上げ金額を計算しなければなりません。それには製品の原価が必要です。

では個々の製品の原価はどうやって計算するのでしょうか。
 

製造原価の構成はどうなっているのだろうか?

 
本コラムは、製造原価を計算する各費用は、決算書の費目で考えます。

製造原価は以下の式で計算します。

製造原価=材料費+外注費+製造費用 

製造費用は以下の式で計算します。

製造費用=直接製造費用(労務費+設備費)+間接製造費用

これを図1に示します。


図1 製造原価の構成

この中で材料費、外注費は、社外に支払う費用です。これは生産量に比例して増えるため「変動費」です。

材料費

 
図2に示すように鋼材、樹脂原料などの原材料の費用です。

モーター、センサー、ボルト、ナットなどの購入品も材料費です。

材料費の種類
図2 材料費の種類

一方、ボルト、ナットやピンなどのうち、「どの製品にどれだけ使用したのか」使用量を管理せず、消耗品として購入するものがあります。この場合、材料費ででなく消耗品(製造経費)として計上されます。そのため製造経費(間接製造費用)とします。

材料費は、使用量に単価をかけて計算します。

材料費=単価×使用量
 

外注費

 
熱処理など自社ではできない工程や、生産能力の不足により社外に製造を委託する場合など、製造工程の一部を社外に委託した費用です。

これらの変動費に対し、固定費もあります。これは生産量にかかわらず一定量発生する費用です。主な固定費は以下の製造費用です。
 

製造費用

 
製造費用は、人の費用と設備の費用があります。

製造費用=製造費用(人)+製造費用(設備)

人の製造費用

人の製造費用「製造費用(人) 」は、人の1時間当たりの費用「アワーレート(人) 」〈注〉に人の製造時間をかけて計算します。

製造費用(人)=アワーレート(人)×製造時間(人)


〈注〉
アワーレートは、チャージ、賃率、ローディングなどと呼ばれることもあります。意味は同じなので本書ではアワーレートとします。アワーレートの単位時間は、1時間(円/時間)の他、1分(円/分)、1秒(円/秒)の場合もあります。

製造時間(人)は、1個当たりの段取時間と加工時間の合計です。

1個当たりの段取時間は、1回の段取時間をロット数で割って計算します。
製造時間(人)の計算

なぜ製造時間の計算に段取時間を入れるのでしょうか。

理由は、多品種少量生産では、ロットの大きさによって原価が大きく変わるためです。ロットが大きくなれば、1個当たりの段取費用は少なくなります。そこで製造時間の計算に段取時間を入れて、ロットの大きさが変わった場合も適切に原価に反映されるようにします。

大量生産で段取の頻度が少なく、段取費用が原価にそれほど影響しない場合は、段取時間を省いてもかまいません。

設備の製造費用

設備の場合も同様です。

設備の製造費用「製造費用(設備) 」は「アワーレート(設備)」に設備の製造時間をかけて計算します。

製造費用(設備)=アワーレート(設備)×製造時間(設備) 

製造時間(設備)は人と同様に段取時間と加工時間から計算します。

製造時間(設備)の計算

今回の例は、人が設備を常時操作して生産します。そのため人と設備の製造時間は同じ時間になります。従って以下のようにアワーレートは人と設備の合計になります。

製造費用(人+設備)= アワーレート(人)×製造時間(人)+アワーレート(設備)×製造時間(設備)

製造時間(人)=製造時間(設備) のため

製造費用(人+設備)= アワーレート(人)×製造時間+アワーレート(設備)×製造時間
         = (アワーレート(人)+アワーレート(設備)) × 製造時間

アワーレート(人+設備)=アワーレート(人)+アワーレート(設備) とすれば

製造費用(人+設備)= アワーレート(人+設備)×製造時間
 

間接製造費用とはどのような費用か?

 
原価には、直接費と間接費があります。

直接費は図2に示す材料費、外注費と、製品を製造する人と設備の費用です。この人と設備の費用を本コラムでは直接製造費用と呼びます。

間接製造費用は間接費とも呼ばれ、現場の管理者や間接部門など製造に直接携わっていない人の費用と、工場の経費(製造経費)です。

直接製造費用と間接製造費用
図3 直接製造費用と間接製造費用

間接製造費用はどの製品にどのくらいかかったのかはっきりわからないため、各現場に分配してアワーレートの計算に入れます。
(この計算方法は 「製造業の値上げ交渉3 間接費用や販管費も原価に含まれるのだろうか?」で説明します。)

本コラムでは、間接製造費用を含んだアワーレートを直接製造費用のアワーレートと区別するため、「アワーレート間」と呼びます。

このアワーレート間はどうやって計算するのでしょうか?
 

費用は決算書から考える

 
それぞれの製品で製造費用がどのくらいかかったのか、正確には分かりません。しかし会社全体で1年間発生した費用は分かります。

なぜなら、「会社に入ってくるお金(売上)、出るお金(費用)、残るお金(利益)」の1年間の合計は、図4に示すように決算書に記載されているからです。

決算書は図4に示す損益計算書、製造原価報告書があります。
(他に貸借対照表もありますが、原価計算では使いません。)

この図4は架空の企業A社の損益計算書、製造原価報告書です。本コラムはこのA社の具体的な数値で説明します。

決算書の構成
図4 決算書の構成

A社の現場の構成を図5に示します。
A社の現場の構成
図5 A社の現場の構成
 

具体的な原価計算

 
ここまで説明した原価計算の具体的な値をA社 A1製品を例に説明します。
 

A1製品の費用、時間

 
A1製品の材料費、外注費は

材料費 : 330円
外注費 : 50円

製造工程は
製造工程 : NC旋盤

段取時間、加工時間は
段取時間 : 0.5時間
加工時間 : 0.07時間

ロット数 : 100個

従って製造時間は

製造時間 : 0.075時間

NC旋盤のアワーレート間は以下の値でした。

(アワーレートの計算は
「製造業の値上げ交渉2 我が社の人と設備のアワーレートはいくらなのだろうか?」
「製造業の値上げ交渉3 間接費用や販管費も原価に含まれるのだろうか?」
で説明します。)

アワーレート間(人) : 3,150円/時間
アワーレート間(設備) : 1,470円/時間

NC旋盤の現場は、人と設備が同じ時間作業するため、

アワーレート間(人+設備)=アワーレート間(人)+アワーレート間(設備)
            =3,150+1,470=4,620円/時間

製造費用=アワーレート間(人+設備)×製造時間
    =4,620×0.075≒346円

製造原価=材料費+外注費+製造費用
   =330+50+346=726円

製造費用は346円、製造原価は726円でした。

このアワーレートはどうやって計算するのでしょうか?

これについては 【製造業の値上げ交渉】2.アワーレートはどうやって計算すればいいのだろうか?を参照願います。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

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  (淀屋橋駅(御堂筋線) 徒歩1分) 

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